現状の音MAD合作のやり方の限界
【はじめに】
音MADではニコニコメドレー形式の音MADを作る音MAD合作という作品があります。音MAD合作には仲のいい人同士で集まって好きなように作る小さなものから各素材ジャンルを代表したり生誕祭などに行われる祭典のような大規模なものまであります。一般的には投稿者による各素材での大規模なお祝いやお祭りのイメージの方が強いと思います。
さて、最近超クオリティの音MAD合作が次々と出てきては自分自身もこのレベルについていくのは無理だよと毎度病んでいます。また、音MAD合作主催や運営をいくつかやりましたが何の見返りもなくやりがいだけで無償で参加者にものすごい時間をかけてやっていただいてるというのはありがたいと同時に毎度出せるものが何もなくて申し訳なさと心苦しさを感じています。自分自身作者になって3年目でまだまだ新参者ではあるのですが自分の合作経験による現状の音MAD合作の問題点をいくらか挙げてその改善案などを考えてみました、あくまで参考程度に様々な音MAD合作に役立ててもらえればと思います。
綺麗ごと抜きに多少の炎上は覚悟して書く内容もあります、人によっては不快になってしまう内容もあるので、あくまで音MAD合作に興味がある人が読んでいただければと思います。
【1】現状の各合作形式による限界
音MADの大規模合作における形式をオムニバス式とメドレー式の2つに区分して、さらにメドレー式の中でもさらに種類を分けて考えて主なメリットデメリットをそれぞれ挙げてみます。現状の音MAD合作がどれほど大変なことをやっているかがわかると思います。
オムニバス方式
各々で好きなように1つの作品を作って持ち込み、それをまとめて一つの動画に収める合同誌のような方式。音MADに限らず様々なMADで行われているため音MAD以外のものも含めて考えてみます。
メリット
・企画難易度が低く手軽
・ある程度量さえ確保できれば未提出者がいても投稿可能
・まとめ時の負担が少ない
・参加者の負担も少ない
・動画ジャンルに縛られず参加しやすく敷居が低い、人が集まりやすい
デメリット
・手軽さゆえに供給過多になりがち
・全体の品質管理が難しい
・全体で無駄に長くなりがち
メドレー式
メリット
・全体の長さをコントロールしやすい
・1パートが短くクオリティの集中化ができる
デメリット
・パートを選ぶ必要性があるため好きなパートでやれない人が出てくる
・選んだパートは完遂する責任が生じる。
①原曲メドレー式、曲縛り方式
曲縛り方式というのは同曲を繰り返して素材は別のものにするというものです。有名どころだとデレマスマイムマイムがこれに当たると考えてもらえればイメージしやすいと思います。
・メドレー形式の中でもまだ労力と技術を比較的要さない
・埋まらないパートを必ず埋める必要がなく、カットしても違和感がない
②既存のニコニコメドレーを使ったメドレー式
昔はニコニコ動画流星群などつい最近の例だとotoMAD-synthesis.midで作られたものが多くあります。
・メドレーを1から用意する必要がない
・メドレー自体を選ぶので完全に好きな選曲ができるわけではない
・基本的には空きパートを必ず埋めなければならない
・繋ぎの部分など高度な連携が求められる
③オリジナルメドレー
メドレーも合作のために自作書きおろしのものです
・メドレーも1から作るのでクオリティが高くみられる
・完全に好きな選曲ができる
・メドレーが作れる人が必要
・基本的には空きパートを必ず埋めなければならない
・繋ぎの部分などメドレー陣も巻き込んで高度な連携が求められる
・あまりにもコストや企画難易度が高い
これらを見てもらえば分かるとおり、現在主流の大規模な音MADメドレー合作というのは数ある創作動画ジャンルの中でもアホみたいに難易度と敷居が高すぎるからこそ何かしらの様々な問題が起こりやすいのではないかということです。
とはいえ別に難易度や敷居が高いものであること自体がよくないことだとは思っていません、やはり難易度は高くてもメドレーの方がクオリティは高く見えると思いますし、労力とクオリティは基本的にトレードオフなので仕方ないです。
一番の問題はこのアホみたいな難易度の高さに慣れていない人や初心者にもこれを強要させてしまう状況になっていることこそが様々な問題を引き起こす要因だと思ってます。
・・・と問題点は挙げましたが具体的にどうすればいいのかわからないのでよければ皆さん考えてください(丸投げ)いやほんと初心者にとって合作の練習ってどうやってすればいいんだ・・・。
ちなみに私は難易度の高さに慣れていない人や初心者には技術よりもおもしろさがモノを言うネタパートにさりげなく誘導したりして合作全体のクオリティコントロールをしていましたが参加者の意思や気持ちを尊重してないと言われたら何も言えません。そういうネタに振り切ったパートがない合作ではこの手は使えませんので数多くの問題を出してしまったりもしてます・・・。
【2】現状の公募でやる限界と招待制の限界
最近は公募もしているものというのは少なくなってきました。そもそも音MADの合作はなぜ招待制で行われるものが多いのでしょうか?
そんなの「クオリティ高い人達だけで作りたいからでしょ」って新人の作者は思ってるかもしれません。まぁ正しいです、間違ってはいませんがそれだけでは理由として足りてません。
招待制でやるメリットを一言で言えば”リスクを減らす”です。
クオリティ面でのリスクだけではなく、締め切り面でのリスク、コミュニケーションや人間関係面でのリスクなどこれらのリスクがない人でメンバーを構成しないと合作運営にあまりにも負担がかかってしまうからです。
合作運営としてはクオリティも締め切りも人間関係も「信頼できる人」を多めにしてメンバーを構成したいわけであるのです。
公募のデメリットは初対面の人など簡単に失踪できてしまう人が集まりやすい傾向にあるということです。そのため失踪者がたくさん出ても問題ない合作方式でないと危険なのです。空いているパートを埋めなければならないメドレー式では厳しいのです。
現状での対策としては公募するなら何名までと予め決めておき、早めにに公募を締め切り、招待制に移行する。または合作制作終盤に足りない分だけ公募で埋めるといったように、リスクを減らすくらいだと思います。
しかし、もうひとつのデメリットとしてあるのが公募だと技術的な部分やクオリティ面のコントロールが難しいことです。参加のために実力制限をかけたり、個人作を見て「申し訳ないのですがあなたは腕が足りないのでここは任せられないのでこっちでお願いします」なんて本人に言えば無用なトラブルを起こすかもしれません・・・。こればかりは人次第としか言えないがため初対面でここのパートは任せられないからこっちやってなんて言うのはトラブルになる覚悟をしなくてはならないです。
自分が公募もした合作では例え初心者でも合作に参加したいと来たならば参加させて「では自分と一緒にこのパートをやりませんか?」といった感じになるべく簡単なパートに誘導しながらクオリティを引き上げつつやった某合作はありますが、もし「なんですきにやらせてくれないの?」と言われてしまえばトラブルに発展してたと思います・・・。
一方、招待オンリーでやるにもデメリットはあります。もうとにかく人を集めるのが大変です、断られる度に胃が痛くなります。私はとある合作でサムネ担当の絵師を探して参加してもらえるように交渉する役目を担うも8回くらい断られ精神が疲れ果てて病んだ経験があります。そんな中で引き受けてくださった方には感謝で頭が上がりません。
ただでさえMAD動画というダーク♂親不孝に巻き込んでいるというのに出せるものが何もなくて今でも勝手に自分の中で罪悪感を持ち続けています。
そのうえもうひとつ大きな問題があります。とにかく人材不足なわけですから現状では水面下で動いている合作企画自体が多すぎて飽和状態なため他の合作と人材争奪戦に陥っているのではないでしょうか。これ、現在の音MAD界隈の合作において本当にまずいと思ってます、招待制は公にされてませんので他にどんな合作企画が動いているのかわからず、他の合作企画のスケジュールとかぶって作者の奪い合いになってしまっているのです。他の合作のスケジュールがわかれば他と被らないスケジュールを組んで企画することができるので参加者の奪い合いになることを改善できるはずです。
まあスケジュールが途中で延期されている合作ばかりなんですけどね。
【3】現状の音MAD合作のメンバー編成について
皆さんはなぜ音MAD合作に参加しているのですか?
参加するには理由があるはずです、やりたいことや何かしらの利になることがなければ参加しないと思ってます。
とりあえず自分の感覚で書くしかないわけではありますが合作のメリットを考えてみましょう。大きく分けて4つのメリットがあり、そこから繋がって様々なメリットが生まれると考えました。
多分、他にもこういうのあるよねってのはあると思うのでこの辺は色々意見や感想をもらいたいところです。
さて、一番の本題です。
現状の化け物じみたクオリティの合作のほとんどが主催や参加メンバーの人望ありきでしか成り立たない状態なのではないでしょうか。音MAD合作は金銭のやり取りや報酬は一切ありませんので、この人のお願いならば引き受けますだとか好きな参加者がいるからめちゃくちゃがんばるというようにモチベの源の中でも「人」の要素があまりにもでかくなってしまったと思っています。
何が起こっているかというのを自分を例にあげて説明します。
自分はアイマス作者であります。もちろん素材的にも動画的にも知識量は他の素材よりアイマスの方が詳しいでしょう。ではアイマスの合作やアイマスの曲のパートでしか参加しないスタンスを取っているかというとそうではありません、他の合作に呼ばれれば参加しています、それがアイマスとは全く関係ないパートだとしてもです。この人のお願いならば断われないといったものやメンバーが豪華だったり好きな作者がいるものならば例え知らない曲や興味ない素材であったとしても「人」をモチベに自ら勉強しまくってでもやれてしまうのです。好きな作者が好きなものだから自分も好きになって向こうからの好感度を上げたい、こういう人は多いと思いますし無意識にそのようになってる部分はあるはずです。つまり、クオリティが高いものを作れて締め切りを守ってくれる人を別のジャンルの作者であったとしても引っ張ってきて染め上げてしまえるのが「人望」というおそろしいものなのです。
人望がある主催によって様々な素材ジャンルにいる強い作者にお願いすれば例え最初は興味がない素材や曲であったとしてもとても好きな素材にさせてしまうことができるのでそうやって強い人をかき集めて化け物じみたクオリティの合作が出来上ってるものも多いのではないでしょうか。自分自身としてはこの人望ありきの流れが悪いことだとは思ってません。
しかし、こういう視点もあるのではないでしょうかというのを挙げます。
何が言いたいかと言うと音MAD合作ってチーム競技スポーツのレギュラー争いみたいな面を持ってるんです。
「チームとしては勝って欲しい、だけど自分だって試合に出たいよ・・・」みたいな複雑な気持ちになる人が出てしまってるのが音MAD合作で起きてしまっています。
パートに限りがある、人が多すぎて主催の指示できる範疇を超えてしまう、作風のバランスを取るため、新人ベテランのバランス、失踪するリスクがありそうな人は少数に抑える、知名度が高い人も用意したい、色んな理由はありますが確実に参加メンバーの中でもそれぞれ○○枠というものは存在するのではと思いますし、その枠の奪い合いを見えない形でしているはずです。それも素材の垣根を越えて強い作者らと枠の奪い合いになることもあるでしょう。
よく新人作者でめちゃくちゃクオリティ高いものを作れる自信があるのに合作に呼ばれてなくてへこんでいる人がいますがぶっちゃけた話、合作は人脈ゲーです。その人脈を得るために必要な要素の一例としてクオリティが高いものを作れたり色んな合作に参加して実績があるだとかなわけで。
とまぁそんなこんなでレギュラー争いに負ける人がいることを問題だとみなして考えるにしても解決策なんてないですし頑張れ!頑張れ!としか言えないと思っています・・・。これは招待オンリーでやっている合作ではもうどうしようもないことなんです。これでメンバー編成をした人が毎回非難されてしまっていてはメンバー編成をした人が酷だと思ってしまいます・・・。
【4】現状のモチベ上げのやり方の限界
合作のメリットは上に書きました。そしてそれはモチベに関わることでもあります。モチベの上げさせ方ってとても難しいですしノウハウがまったく見当たらないので困ってます。
やりがい以外の合作のメリットも作ってしまう
私は今まで合作を運営するにあたって絵師を呼んだことが何回かあります。しかし、上にも書いた通り某合作ではなぜ声をかけていった絵師が普段描いてるジャンルのファンアートの二次創作動画合作であるにも関わらず8回も断られたり無視されたのでしょうか。こういうことだと思います。
いくら私たちの技術が優れていようがどれだけ再生数やコメントがもらえていようがMAD動画を理解してない人からしたら何の価値もない!!!!
強い言葉で言い過ぎました。主語もでかくしてしまいました。
当たり前と言えば当たり前の話ではあるのですがMAD文化を理解してもらえない人から見れば私らの作品に価値なんてありません。そんな価値のない合作にわざわざ無償で参加する理由がありませんので断られて当然ですね。
確かに画力が高い絵師に絞って声をかけていたという事実はあります、しかし私らだって良いものを作っているという自覚があるんですから上手い絵師に声をかけて何の問題ですか?という強気な心構えでやってました。
無償依頼言語道断ときっぱり言われたケースもあったので晒されなくてよかった~っと最近は明るく考えるようにもしてます。
しかし同じく向こうの畑の二次創作合作である合同誌はどうなっているかというと参加者に前金を払って集めてるものがたくさんあります。それがモチベになっているのも事実です。なので私らも絵師文化に配慮するというように考えるならば合作に絵師を呼ぶにあたって金銭面で価値を用意する場合を一度考えてみてもらいたいのです。
以下がまず思いついた問題点です。
①.ファンアートとしてやってるのに金払って呼んでやってもらうのはファンアートと言えるのか?
②.不公平感が生まれる
③.誰が出すのかまたはどこから捻出するのか
④.いくらが妥当か
①.一つ目のファンアートの是非です、金払ってファンになってもらってファンアートを作らせるのっておかしくないですか?それはコンテンツのファンじゃなくてお金のファンですよね?という感じです。
参加を呼び掛けるにも普段から合作題材のコンテンツの絵を描いてtwitterにあげていた人でないと変に思われてしまうのではないかといったところでしょうか。普段からごちうさの絵をtwitterに描いてあげてる人をきらら合作に参加してもらうにあたって金銭を出すくらいが自分の感覚としてファンアートと言える限界じゃないかと思ってます。まあでもぶっちゃけ表立って金払って呼んだなんて言って無用なトラブルをわざわざ呼び込む必要はありませんし、結局は合作参加者などの気持ちの問題となってしまうのですが・・・。
②.二つ目が不公平感が生まれることです、当たり前ですが他の作者はやりがいだけでやってるわけですから筋が通りません。主催が個人的に接待したとかならばまだしもクラファンやカンパなどで有志で募って集めたとかなら不公平感が生まれます。法被企画やフラスタ企画では有志で集めて絵師に頼むというのが定例となっていますが一緒に時間をかけて作るというのが合作であるため大規模であればあるほど不公平感に耐えられない人が出てきてしまう確率は高くなり、問題が起こってしまいます。
③.三つ目が誰が出すのかまたはどこから捻出するのかです。金額にもよりますが主催が出す風潮となればただでさえ主催をやりたがる人は少ないのにもっと敷居が上がってしまいます。有志で募るってのも難しいですし制作メンバー以外に協賛者を探して集めるってのも近い前例がなく、成功した姿が思い浮かびにくいと思いました。現在ではガイドラインが出てきて権利面をクリアでき、収益化できる素材ジャンルもあるにはありますが参加者に権利面まで意識してもらうってのは負担がでかすぎます。
4.四つ目がいくらが妥当かというものです。skbが3000円からなので向こうの文化に配慮するならば少なくとも3000円以上となります。人気な合同誌とかだと前金で5桁だとか聞いたことはあります。
実際には前金でやるのではなく企画が成功した時には気持ちとして払うってのが向こうに伝われば参加してもらえると思います。あくまでやりがい以外にもメリットがありそうだと思わさせること自体がモチベを上げさせたり参加してもらえる要因になるからです。ずるいかもしれませんが営業ってそんなもんです。
・・・これだけ言っておきながらですが何よりも金銭面以外でも他にちゃんと価値が作れる合作ならばこんなことせずとも人を呼べるはずなのでそこもちゃんと考えるべきだと思います。
【5】合作企画によって得られるものに何を価値を見出すかは人それぞれ
参加者一人一人にとって参加してよかったと思えるものにしましょうってことですがあまりにも人によって何に価値を置いているかバラバラに細分化されすぎていて参加者全員を満足させてまとめあげるのは大規模であればあるほど難しいです。音MAD合作は部活動の延長だと言われていますがまさにそう思います。どれだけ招待制で選りすぐりのメンバーを集めているつもりだったとしてもふたを開けてみれば、甲子園目指したいガチ勢もいれば1回戦負けでもいいので思い出作りをしたいって人もいてモチベはバラバラなんです。そんな中でパート分けやリテイク指示やディレクションを飲んでもらえるかと言う感じでのクオリティコントロールなどは結局「人」次第なんです・・・。
やりたいパートをやらせた方がいいのか、またはやってもらいたいパートをさせるべきなのかどこまで自由にやらせれば禍根を残さず最大パフォーマンスを発揮できるかというのは人によりけりとしか言えません。人気パートになりそうなのは遠慮してしまってよくわからないパートチョイスをしてる人もたまに見かけます。もちろんやりたいパートがやれないとやだという人だって多いと思います。これはもうその人と一緒に合作した経験などから判断するしかないんだと思います・・・。
正直なところすべての参加者にやってよかったと満足してもらえるようにするなんて不可能だと思ってます。合作主催って嫌われる覚悟でやらないと成り立たないものだと思っています。この辺が大規模合作だと過去の合作をそのまんまシリーズ化するものばかりになっている原因にもなっています。
【最後に】
以上が現状の音MAD合作のシステムの限界から出てくる問題点です。
ああだこうだ書きましたが現状でも音MAD合作はお化けのクオリティのものがどんどん完成して投稿されているので別に解決しなくてもいいとは思ってます。こういうのは解決しようとしたら別の問題が出てきたとかもよくある話ですし。水面下では途中で頓挫したり犠牲となった合作が転がっているのかもしれませんが。
オリジナルメドレーの大規模な音MAD合作は考えられる限り最高難易度の二次創作物です。これ以上難しい二次創作があるのならば教えてほしいです。こんなものをさも当たり前かのように大量に毎年作っている音MAD作者たちはもはや狂人の集まりです。狂人同士仲良くやっていけたらと思っています。
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