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社会学を研究すること

普段はひとりで研究していますが、夏休み期間に入り時間的に余裕ができたこともあり、研究関心が近い他大学の先生の研究室のゼミに参加させてもらいました。

もともと私は他の人の研究報告を聞くのが大好きだし、息子たちと同年代の、社会学についていろいろな知識や教養のある若者とディスカッションできて非常に楽しかったです。

しかも、私がこれまで仕事や子育てのなかで関わってきたことがほぼそのままテーマになっているのも興味深かったです。

社会学について勉強を始めて約1年半、専門的な知識はそれほどないけれど、自分の経験や同じような境遇の人たちとのかかわりの中で見聞きした者として気づいたことをお伝えしました。

そんな風にディスカッションしてみて、ふと気づいたことがあります。

それは、
「世間ズレ」していたら真によい社会学の研究はできないのではないか
ということ。

社会学は
特定のカテゴリに分類される人々にとって、社会がどのように見えているか
すべての人が暮らしやすい社会にするには、どうすればよいか
といったことを関心の中心に据える学問分野だと思っています。

そのような研究をする人たちもまた、社会の構成員なわけで。

研究する人自身が、人としてごく当たり前の経験のひとつひとつを大切にした方がいいんじゃないかなあと思うのです。
日々の生活(家事、育児、お金のまわし方)に追われる とか
他人とのつきあい方に悩んだり、振り回される とか。

私は、これまでの人生の中で、息子の不登校やら問題行動、両親の介護、離婚や退職など、「波乱万丈」をフルコースみたいに体験してしまいました。
そんな私から見ると、上で書いたような「一般社会とのつながり」(と仮に呼んでおきます)がどこか欠落していると感じる研究は、いくら研究そのものの専門性や完成度が高くても、おもしろいとか魅力的だと感じられないのです。

大学の先生って、「センセイ」っていうカタカナ表記もあるように、「大学教員」という肩書をステータスだと思っているフシがある、もっと厳しいことを言えば、一般の人たちから「大学の研究者って、世間を知らないよねえ」とある種の蔑みを込めて言われたとしても、その言葉自体も「ステータス」だと受け容れてしまっていないかな、と思うのです。
「大学教員(研究者)≒世間知らず」という「烙印」を、自分からすすんで世間の人たちから押してもらっているのかもしれないなって。

学問分野で差別するようで申し訳ないのですが、たとえば数学だとか哲学だったら、「烙印」が好意的なイメージに転換されると解釈できるのかもしれないけれど、
特定のカテゴリに分類される人々にとって、社会がどのように見えているか
すべての人が暮らしやすい社会にするには、どうすればよいか
といったことを関心の中心に据える学問分野(社会学)を研究する人たちは、ありていの言葉を使えば、「地に足をつけて生きて」いないと、真に意味のある研究ができないんじゃないかと思うのです。

そのように考えていったら、たとえば
博士論文の構想がなかなか定まらない
研究が進まない
一生懸命書いた論文があっさり不採択になる
など、研究する人間からすると不利なこと、辛いことも、
実はそれほど重要なことじゃないような気もしてきました。

もちろん、研究を進めて論文を1本でも多く書いた方がいいし、一生懸命書いたからには論文は採択してほしいし、できれば博士論文は仕上げたいけれど、
社会の中の一員として絶対に外してはいけないことが何なのか、アンテナの感度をきちんと整えて自分の頭で考えてその都度適切な行動に移せることの方がよっぽど大事だし、そういうことをまともにできない人が「社会学を研究しています」なんて偉そうにひけらかすべきじゃないんじゃないかなって思うのです。

社会学を研究する人間は、学術的・専門的な知識や素養も必要だけど、それよりもまず、
自分が社会を構成する一人なんだ、と自覚すること
「社会とのつながり」という意識のもとに自分の研究を具体的に肉づけすること
が大事なんじゃないだろうか。

研究者の卵みたいな人たちとさんざん話をさせてもらって、改めて思いました。

私は博士論文はできれば仕上げたいと思っているけれど、大学の常勤教員になることは年齢から考えて実現不可能だと思っているし、何よりも、大学教員って、院生がイメージしているほど魅力的な仕事ではないのかもしれないと思うようになりました。
そこで、研究とは全く別で、新しいことを始めようかなと企んでいます。
うまくいくかは分からないけど、これまでさんざん辛いことや嫌な目に遭ってきたので、少々のことでは動じなくなっています😀

息子と同年代の人たちと研究についてこれほど突っ込んだ話ができたのも、50の手前で大学院に進学したからこそ。
新しいことを始めるのはエネルギーが要るけど、もう少しだけあれこれ試行錯誤をしてみたいと思っています。


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