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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【20】82年正月映画「セクシーぷりん 癖になりそう」「天使のはらわた 赤い淫画」「未亡人下宿 初開き初入れ」

1981年の映画通いも12月26日が最後になる。この年に映画館で観た映画244本。東京の大学に入っていたらもっと見ていただろうとは思うが、もはやこの先、学生時代は映画館通いが続くわけで、今に至るまでよく飽きないと思う。好きなんですな。

そして、この日は池袋北口にっかつに にっかつの正月番組を観に行く。正月らしいのは、畑中葉子を主演に迎えたというところと、未亡人下宿があることでわかるが、「天使のはらわた」は正月映画には重いが私的にはこれを一番期待して観に行ったのだと思う。泉じゅんが主人公、名美を演じるというのにはそそられるものがあった。

「セクシーぷりん 癖になりそう」(加藤彰監督)

畑中葉子主演のロマンポルノは、これが4作目で最終作。まあ、それなりに、にっかつさんは稼げたのだろう。ただ、作品としては全てにイマイチな感じだった。この作品も畑中が泥棒だった映画というのは覚えているが、今ひとつ印象に薄い。相手役が林ゆたかで、共演が横山エミーというところは、正月映画らしい華やかさは感じる。原作は半村良だから、セクシー泥棒話だったのだろうが、畑中の最初の2作に比べたら語られない映画である。ラストは正月シーンだった記憶がある。

「天使のはらわた 赤い淫画」(池田敏春監督)

今は亡き、池田敏春監督のロマンポルノとしては、代表作だろう。とはいえ、石井隆脚本の世界色が強い作品だ。ここでの主人公名美は、ビニ本モデルを強要され、それが世の中に広まり仕事を追われ、男たちに振り回される。そして最後にしたたかな女になっているようなストーリー?主人公を演じるのは泉じゅん。相手役は阿部雅彦。共演女優人も、伊藤京子、栗田ようこ、山科ゆりと、美女揃い。そういう意味では、正月映画らしさはある。こたつの中の赤いオナニーシーンが有名だが、その赤いイメージが記憶の残り香のように脳裏に焼き付いている。そして、泉じゅんは「愛獣シリーズ」と共に、この作品でロマンポルノの歴史の中にある女優となったということだろう。「天使のはらわたシリーズ」は再度、映画館でじっくり観てみたい作品群ではある。いや、久しぶりにドラマチックな雨に打たれたいだけかもしれない…。

「未亡人下宿 初開き初入れ」(山本晋也監督)

正月と盆に作られ続けた、このシリーズ。ここで、主演が久保新二からシティーボーイズに変わる。当時の山本監督はテレビの仕事が忙しくなっていて、映画の仕事はレベルが落ちていった時期。そして、当時、まだまだ無名に近かった大竹まことをはじめとする彼らにはこの役目はなかなか重かった感じがする。久保新二のアナーキーな姿を踏襲することは不可能だった。とてもこじんまりとした未亡人下宿だった記憶がある。そして、下宿のママさんも橘雪子からすばる卿子という女優に変更。全てが予想と違っていた作品だった気がする。たこ八郎のお巡りさんだけが同じだったと思う。ロマンポルノやピンク映画よりもビニ本、裏本に注目が集まり、その先にビデオの時代になる手前の話だ。そして、監督、山本晋也はアナーキーなピンク映画を撮るよりは、テレビの深夜帯が主戦場になっていったという時代である。

40年前の年末、ロマンポルノを観ていた時代。それは現在では決して経験できない異次元のお話ではある。そして、多分、ロマンポルノを最高数見ている1982年に入っていく。

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