「君が世界のはじまり」大阪のにおいの中で立ち位置にもがく高校生。太陽が眩しい映画。
最近、大活躍の松本穂香だが、歳を確認したら23歳。普通に高校生がまだ演じられるのはすごい。いろんな役をやっていく中で、見事に映画の中で主役面が決まるようになってきた。安心して見ていられる女優さんになったということだ。
ふくだももこの原作で脚本は「リンダリンダリンダ」の向井康介が担当、それをふくだももこが監督するという仕組み。原作を読んでいないで言えば、うまくいった感じである。
ファーストシーンから、少し赤い空が印象的だ。夕景だったり、朝焼けだったり。ラストの日の出のキスは美しい。かなり、そういうところこだわって撮っている丁寧な感じが映画を締まりの良いものにしている。内容よりもそういう点に安心して見ていられる映画だった。
大阪の話は、私的にはニュアンスがわかりにくいところが多い。どの家庭でも、お好み焼きを焼きながらのご飯。天かすがないという問題が起こる。そんなすごく満腹感のある食卓に、家族が揃っていなくてスカスカの家庭があちこちに…。まあ、そういうものが揃っているのは松本演じる縁の家だけなのだが、そういうカタワな感覚も、ギャグにしてしまう風土なのか、東京のひとが見てると、どこでバランスがとられているのかわからない部分もある。普通に会話の中に朝鮮か中国かと出てくる。そして、タバコを吸う昔気質の高校生。空気感は井筒和幸監督「ガキ帝国」のころとあまり変わらない感じ。これPG12でいいのか?(この年齢規制もよくわからんが、東京と大阪の舞台の差で映倫の規制範囲が違うとかいうことでもないし…)
とにかくも、ラストの方の深夜のショッピングモールで騒ぎ。歌を高らかに歌うところで、いろいろ吐き出して気持ち良くなる映画である。彼らのモヤモヤが消えたわけではないが、高校生が、日々、大人になっていく感じがここによく出ていた。だからこそ、朝、そこを出る時に「俺たちガキじゃん」というセリフがすごく効いている。
そのメインのところが、主人公、縁の世界の新たな始まりである、そこに幼なじみの愛すべき琴子はいない。これも絶妙な感じがした。だからこそ、最後の校庭のシーンが生きてくる。
しかし、何故に今更、ブルー・ハーツかと問うのは愚問か?監督も脚本家もそれが好きだからということに尽きるのだろう。実際、今の学生たちにブルーハーツは受け入れられるか?と考えれば、思春期のありがちな風景がパワフルな曲にノッテくるのだから、有りなのだろうね?そういえば、こないだ見た「アルプススタンドのはしのほう」でも、TRAIN-TRAINがエースの好きな曲として流れていましたね。まあ、私も嫌いではないので良いですが。考えれば、時を超えてロックし続けるブルーハーツすげぇ!
人それぞれ、世界の始まりの出会いというのはあるわけです。それは偏差値とは関係ない印象が作る賜物であるわけで、初恋と同時に、そういう影響力をうける出会いって大切ですよね。それが縁というもの?と考えれば、主人公の名前の意味合いもよくわかるわけです。
ふくだももこ監督、昨年の「おいしい家族」とはまた違ったテイストのものを、違う料理として出してきて、なかなかおいしかったです。松本穂香様、瞳がとても美しかったです。「人にやさしく」ですよね。
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