映画「映像研には手を出すな!」映像研まつりの最後は実写映画!ラストは思った通りのシーンだった。
この映画も、コロナ禍で5月公開予定が今に!それでも、映画館はそこそこ入っていた。1月からNHKでアニメが放送されて、春にはドラマがオンエア!それによって、原作も目にする人が多かったはず。日本中の多くの人が「映像研に手を出した」1年の締めくくりの実写映画であった。私のような、クリエイターと称する一味の皆さんには、もう麻薬的な作品である。みんな、主人公の面倒臭さに共感させられる。面倒くさいものほど作りたいと思う性がよく描けている原作である。
で、中身は、ドラマで描かれた、映像研が承認されたあと、文化祭の発表会までの流れ。芝浜高校では、部活の統廃合をやっている最中!文化祭をなんとか乗り越えないと、「アニメ研」と一緒にされるという、この実写のオリジナルな流れである。それはそれでいいが、結果的には、映画としての予想以上の爆発力はなかった。ラストシーンも、この画だろうと、多くのファンが予想したと思われる通りだった。それはそれで好きですが…。
映画の承前として、部活統合の話のなかに、ドラマのダイジェストが入って紹介されている。ここで、多くの人がネットに書いてあるように、黒澤明監督「羅生門」のパロディをやっているのだが、若いものにはわからんだろう!もっと良いネタはなかったのか?そして、ダイジェストが中途半端で、もう、知らない人はどうでもいいという流れで、部活統廃合の話から、ロボット研の話で良かったのでは?ここで30分近く使っているので、最後の方が駆け足になっている。
そして、何故か、最初のシーンに出てくるのは気象研究部の浜辺美波。彼女の落としたものが何かは最後の方でわかるのだが、ちょっと話をまとめる道具としては無理がある。そして、浜辺と3人の接点がないのだから、これはなくてもいい。「浜辺のネームバリューが欲しかった」という感じは、金森的な考え方でしかない。
そして、ロボットアニメを作る本編は、まず、導入部のロボット研のロボットへのこだわりを述べる所が、とことん長い。観ている方は、ちょっと疲れる。まあ、面倒くささの表現としてはよくわかるが…。
百目鬼氏登場で、音が前に出る部分は、映画館で観ることで結構、圧倒される。浅草氏と一緒に作り上げる、映像の音響を聴かせるシーンは、この映画の最大の見所である。こういうシーンが、アニメ的な部分でも欲しかった。今回の映画では、アニメにおけるいらない能書きはほとんどないのが残念!
ドラマからの実写オリジナルの、変な部活の人たちが活躍する流れも、ここでは、最初に紹介される「物真似部」だけであり、もう一つスパイス不足である。
ラスト、アニメを徹夜で完成させるシーンは、なかなか派手で、観客も「そういうこと!」と唸る設定ではあったが、やはり芝浜祭がちょっと物足りなかった。もっと、アニメにあったように芝浜祭の学校全体のモブシーンをこれでもかというくらいに、カオスに描いて欲しかった。予算不足が見えてくる!
役者としては、乃木坂3人は、もう予想以上の出来で、原作とは違う面倒臭い人を熱演してました。あとはソワンデ役のグレイス・エマですね。徐々に映像研に心がひかれ、最後は助けるという役を印象的に演じていました。百目鬼役の桜田ひよりもなかなかの怪演!みなさん、楽しくこの映像撮っている感じが良かったです。
この話の最も面白いところは、浅草みどりの妄想が、どんどん膨らんで暴走し、現実にクロスオーバーしてくるスピード感だ。その辺りが、最後の映画になって、ちょっと緩んでしまった感じには見えた。とはいえ、ファンとしてみれば、十分2時間弱楽しめたけどね。
監督、英勉作品を今年見るのは3本目。そう考えても「前田建設ファンタジー営業部」「ぐらんぶる」に比べて、スピード感が足りない感じ。これは、映画単体でのまとめでないということもあるだろう。だが、この題材を英監督に演出させるのは正解であるとは思っている。もし、映画として続編があるなら、傑作を作って欲しいと願う限りであります。
まずは、今年この不穏な世界の中で、「映像研には手を出すな!」関係者の皆様、ありがとうございました。また、面倒臭いもの、よろしくお願いします。