「あの頃、文芸坐で」【35】今村昌平フェアに通った時①「盗まれた欲情」「豚と軍艦」他
この年の3月14日に、今村昌平監督の「ええじゃないか」が封切られた。それを前に今村作品を2日替わり上映。7個のプログラムのうち、5回通っている。大学が春休みだったということはあったが、こういう観方をしたのは初めてのことだった。今村昌平監督の日活時代の映画は、実にバイタリティに溢れている。それは今に至って見直しても同じである。魅力ある映画群である。
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コラムは、映画「ローズ」について。ベッド・ミドラー演じるジャニスジョップリンは、その魅力を私に強く訴えかけてきた。ラストテーマは、様々な人に歌い継がれるが、この映画を観て聴くその曲は本当に素敵である。最近は、あまり観られる機会もないが、ジャニス・ジョップリンは永遠に熱いままである。
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プログラム、文芸坐の方は、前回、お話したのと同じなので割愛。文芸地下は今平フェアの後、「幸福号出帆」「四季・奈津子」につづき「Keiko」「天使を誘惑」と、女性主人公の映画の流れ。この4本とも、後日、ここで鑑賞しているので、詳細は後日に回す。
オールナイト「日本映画監督大事典」新藤兼人監督の2回目のプログラムは、ほぼ、現在は観る機会のないものばかりですね。私もこれらは鑑賞した記憶がない。名前が大きく残ってもそういうフィルムが多々あるのが日本映画なんですよね。デジタル時代、過去の全ての映画が簡単に鑑賞できる時代は来るのでしょうか?
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そして、今村昌平フェアである。はっきり言って、映画館で今村映画を観たのは以前、この連載で書いた「果てしなき欲望」と「”エロ事師たちより”人類学入門」が最初だった。その二本の記憶につられて、このプログラムに通おうと思ったのだと思う。まずは、フェアの3日分について
「盗まれた欲情」
今村昌平監督デビュー作。今東光の原作の映画化。芝居小屋での色恋とドタバタ劇。後から考えれば、今村らしいデビュー作である。芝居小屋でコーラと称するハッカ水に実母散を入れた飲み物を売っているというのが、脳裏にこびりついている。長門裕之主演。初期の今村作品には彼がとても印象的に出てくるものが多い
「復讐するは我にあり」
1979年度のキネ旬ベストワン作品。佐木隆三原作の小説の映画化。個人的には、あまり好きな作品ではない。良い人を装って詐欺をし殺人をする話。今村が好きそうな題材だが、作品のまとまりが初期の日活作品と比べると散漫に見えた第一印象。その後観ていないから、今見たらまた違う印象があるかもしれない。ただ、緒形拳の演技は必見だとは思う。
「果しなき欲望」
先にも一度書いたが、文芸地下で2度目の鑑賞。戦時中に隠した薬を掘り出す穴掘り映画。人間の欲望を描き尽くした感のあるデビュー三作目。最後まで渡辺美佐子の欲望が強いのは、今村の女性感なのかもしれない。女のバイタリティみたいなもの描くの好きですよね。
「豚と軍艦」
横須賀を舞台に戦後の進駐軍が大手を降って歩く街での長門裕之演じる主人公の顛末記。長門主演の今村作品の代表作と言って良いだろう。そして、長門の恋人役の吉村実子の演技が実に印象的な映画。そしてガンに苦しむ丹波哲郎は必見。上の写真にある、豚が逃げ出すシーンはもう、今村が巨匠として映画が撮れるようになった証の気がする。私も、好きな映画だ。
「神々の深き欲望」
今村、初のカラー作品。自分のプロダクションで作った映画だが、当時の映画状況もあり、負債を抱えて、しばらく映画が撮れなくなった一作。(この作品の後に撮った長編映画が「復讐するは我にあり」だから、約10年のブランクがある。)私的には南の島の太陽が照り返す風景と、北村和男の顔、そして沖山秀子だけを覚えている。内容があまり残っていないのだ。もう一度、見直したい一本。1968年度キネ旬ベストワン。
「"エロ事師たちより”人類学入門」
この作品、先にも書いたが、野坂昭如原作の、エロ映画撮影上映舞台を描いた作品。多分この時に小沢昭一氏の舞台挨拶を見た気がする(その前の小沢昭一特集の時かもしれない)。そこで、この映画の舞台を今村が、「家の前に墓場があって、裏が川の床屋を探してこい」とスタッフに言ったという話を聴いた。墓場と川を満たす物件があったが床屋ではなかった(当たり前だ)。そこで、今村は別で営業していた床屋を連れてきて半年ほど?営業させてから、撮影に入ったという。黒澤明の美術のこだわりとはまた違ったこだわり。多分、臭いという奴が欲しかったのでしょうね。そう考えれば、彼の映画には臭いがある。SEXシーンにも匂いを持ち込む。そこに人間の本能みたいなものを見ていたのでしょうね。そういう点で今村はオンリーワンなところがある監督です。あとは、学生服の近藤正臣に観客が湧いていたのを覚えている。
と、今日はここまで、多分当時、春休みでなんらかのバイトをやっていて、その帰りに映画館に通っていて、結構、疲労した中で観ていた記憶があるが、それは、今村昌平の映画を観る正しい方法だった気もする。次回に続く!
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