「魔女がいっぱい」ロバート・ゼメキス監督のこういうファンタジーは、安心して楽しめる
観終わった後、ロバート・ゼメキス監督が今何歳なのか?ということが気になった。調べると今年68歳。私が思ったより若かった。デビュー作「抱きしめたい」が20歳の時、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」が27歳の時の作品だ。初めから持っている、天性の楽しい映画作りの勘みたいなものは、今も衰えてはいない感じだ。この新作も、話自体は小ぶりな感じだが、その小さなファンタジー世界の中で、十分に楽しませてくれた。ストレートな娯楽映画は、とても心地よい。
ただ、ネタバレと言われる部分が多いと思ったが、予告編をみたら全部曝け出しているので、気にしないで書きます。(観ていない人はこれ以降、読まない方が楽しめます)
映画は子供達に向けた映画上映会みたいなところから始まる。そこで「魔女は子供が嫌いだ」という話から始まる。そして、魔女がでてくるまでに、少し時間がかかる。この導入部は少し退屈。
でも、魔女が出てきて、主人公のおばあさんが、魔女に出会った話をしだすと、映画は動き出し、おばあさんと主人公がホテルに泊まりに行くと、そこに題名通りに「魔女がいっぱい」やってくる。
魔女は嫌いな子供たちをネズミにしてしまう計画を立てていた。それを聴いてしまった主人公は、捕まってネズミにされてしまう。そして、魔女にネズミにされた3人の子供とおばあさんの魔女退治の話になる。この辺りはわかりやすいが、早々に、ネズミになった子供たちは元に戻れないと宣告されてしまう。結構、そういうところが怖い!
そんな中、復讐は、魔女の薬を使って魔女たちをみんなネズミにしてしまうという計画。計画が実行に移されるまでなかなか面白い。魔女とはいえ、あまりオツムも良くないらしく、まんまとみんなネズミにされるさまは、なかなか痛快だ。大魔女が猫を飼っていたのは、そういう意味なのねというオチも単純だが面白かった。
大魔女役のアン・ハサウェイは、メイクが口裂け女だが、まあイカれたキャラを気楽に演じていて楽しい演技だった。そして、おばあさん役のオクタヴィア・スペンサーがこの映画の味になっている。あくまでもファンタジーの中で、二人とも楽しんでいる感じがとても良い。
子供たちはネズミのままに人生を楽しんで暮らす。そして、冒頭の映像を見せながら喋っていたのは、ネズミであった。そして、魔女をみんなこの世から退治するために子供たちを煽る。この辺りは現代社会に痛烈に意見しているのか?
結果的には、子供の相手は魔女だが、「鬼滅の刃」と似たような世界を感じてしまった。世の中を不穏にするのは、鬼だったり、魔女だったり、国によって違うのかもしれないが、それを倒して、明るい未来を作るのは子供たちだということも同じようなものである。
そして、このお話、魔術にかけられた少年たちは、ネズミから人間に戻ることはできない。でも、それもよしとする生き方なのだ。ことが終わって、おもちゃのジェットコースターで楽しむネズミたちの笑顔が印象的だ。ある意味、怖い童話なのだが、こういうラストは日本ではアニメでもなかなかできないでしょうな。
私的には、魔女が使う、ネズミになる薬を、日本の政治家が会食する場でばら撒きたいと思いました。みなさん、コロナにならなくていいから、ネズミになって欲しい。
ゼメキス監督作品としては、スタンダードな出来だが、洋画不足の心にはなかなか楽しい時間を過ごせました。