ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【12】泉じゅん特集「愛獣 襲る!」「感じるんです」「愛獣 悪の華」
新年初めてしたためるロマンポルノ回顧であります。時は、1981年9月5日。40年前のお話は続きます。ある意味、ロマンポルノを語ることは、当時の性風俗や、性に対する男の考え方を語ることになるかもしれません。しかし、この頃には女性の脚本家も多くここに登場してくるので、ある意味、時代がさまざまにハレーションを起こはじめていたような感じだったのかもしれません。とはいえ、18歳未満は観られない映画とはいえ、今では成立しないものが多いのは確か。本当に、最近は時代が変わったのを感じるようになりました。
そして、この日、3本立てを観に行ったのは「高田馬場東映パラス」。今も高田馬場の駅前に「稲門ビル」というのがあるのですが、その最上階に、東映の封切館として「高田馬場東映」があり、もう一館、ロマンポルノの2番舘というプログラムのこのスクリーンがあったのです。この日が初めての訪問と思いますが、この後、この小屋の名前はたびたび出てきます。ビルの中の映画館だったので、小綺麗だったのが通っていた理由だったりします。とはいえ、場内で喫煙する人は多かったし、スポーツ新聞などのゴミが多く散らかっていたのは他のロマンポルノ上映館と何ら変わらなかった様相。まあ、ロマンポルノの映画館は、営業マンのオアシスみたいなものだったのですね。昨今は、ドトールコーヒーなどで老人が昼下がりに寝ているのをよく見かけますけど、ロマンポルノ上映館にはそういう方々も多いおられました。色々と、社会のためになっていたのが、ロマンポルノなのです。
で、この日は、泉じゅんの三本立てを観に行ったのであります。ずーっと観たかった、彼女のデビュー作「感じるんです」も見ることができ満足でした。ロマンポルノ史上の美女の投票をしたら、確実に上位に来るはずの泉じゅん。最初がこのロマンポルノでなかったら、普通の女優としてそれなりの役は得ていたと思いますが、主演作品が多く残っているのは「ロマンポルノ」という場で演技していたからですよね。当時は映画の主役というのがすごく意味を持っていた。そういうのが、当時の女優さんの誇りだったのは確かです。
「愛獣 襲る!」(黒沢直輔監督)
この映画で、黒沢直輔という監督を好きになった一作。前に書いたデビュー作「ズームイン暴行団地」もそうだが、鈴木清順ばりの光と影、色彩を意識したカットが目立った。そして、この脚本、横浜のスターダストが舞台。そして、復讐劇。まさに日活アクション的なハードボイルドでもある。とはいえ、SEXをしっかり描く話はストイックでも何でもないが…。ただ、泉じゅんの激しく人を恨む目が印象的だった。そして、銃を構える手、そして美しい裸体が、全て絡み合った一作だった。男優陣も小林稔侍、益富信孝、内藤剛志となかなか豪華。私にロマンポルノベストテンを選べというなら、必ず入れたい一本。そして、彼女の愛獣シリーズの中ではこれがおすすめです・
「感じるんです」(白鳥信一監督)
泉じゅんのデビュー作である。最近では、AVデビューの娘に「こんな娘が!?」と驚くことは珍しくないが、当時の、泉じゅんのロマンポルノデビューはかなり驚きだったのを覚えている。とはいえ、デビュー作が白鳥信一監督作品とは、かわいそうだった気もする。当時はまだ、ニューウェーブの新人監督時代に入ってなかったから、若い娘にライトなコメディでデビューさせようということだったのだろう。でも、この作品、泉大八原作の「ジュンちゃん」が原作。そう聞いてわかった人もいるでしょうが、泉じゅんという芸名はこの原作からきているのだ。とすると、この原作にあった娘を探していて彼女にたどり着いたということもあるのかもしれない。
話は、高校生が処女を捨てる話である。至って単純で、彼女の裸体以外は見るところはない感じの作品だが、この作品に限っては、20才の泉じゅんのピチピチ感が観られることだけに意味があり、それが、40年後の今残っているということは大事なことである。
「愛獣 悪の華」(加藤彰監督)
ここで、二度目の鑑賞。二度目も面白かったという記憶がある。とにかく、「愛獣 襲る!」を観たこともあって、この時は、早く次が観たいという感じだったのだろうと思う。
とにかくも、泉じゅんは、当時青春の中での気になる女優さんの一人でした。今は結城貢氏と幸せに暮らしているはずですが、どうなのでしょうか?