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「哀愁しんでれら」おとぎ話的展開は面白いのだが、結末が消化不良の感じ

「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM」で2016年にグランプリを獲得したオリジナル脚本で商業映画監督デビューの渡部亮平監督作品。脚本が認められたものなので、飽きずに引き込まれる展開。予告編を観たときは、もっと観客の予期せぬところにいくのかと予想していたが、ちょっと考察が難しいラストの風景。主人公3人の気持ちなど全くわからない。でも、そういうことが多い現代?ということなのか…。

最近の田中圭の演技は、安定していて問題ないのだが、どうも演技的にはフラットで、役を演じているというよりは、田中圭が動いている感じである。この映画はファンタジーなのだろうから、それでいいと思うのだが、少しいかれた部分があるという役にしては普通の人だった。いや、田中圭だった。

多分、自分の飼っていたウサギを剥製にしたとか、自分の裸を若い時から描き続けているというだけで、かなりの変態なわけで、ある意味、もっと二重人格的な人にしてもよかったのではないだろうか?結局は、娘のことで怒る部分以外は、まともな人だったので、そこは少し見る側からしたら物足りなかった。

対する土屋太鳳も、綺麗な女優さんなのだが、どうも今ひとつ彼女でなければいけない!とするオーラが足りないままに、ここまできている感じがする。今回は、田中とのベッドの中での濃厚なキスシーンなどもあるが、そのシーンでは結構な色香を感じたので、もう一歩大人の役をやらせてあげたら違う面も見えるのではないかと思った次第である。

とはいえ、娘役のCOCOとのチームワーク感は良いし、映画自体はよくまとまって飽きずに最後まで見られたが、私的には、これで終わり?という印象の中途半端さが、今、これを書いている時にもストレスになっている。

話としては、最初に土屋の家にさまざまな不幸が一緒にやってくるという展開。ここで、みんながあまり慌てふためいていないのは、ちょっと導入としては弱かった感じ。もっと、観ている側も傷ついたような疲労感を感じるようにしないと後のシンデレラストーリーが輝かないのでは?と思う。

そして、唐突な田中の登場は、まあ「白馬の王子様」なわけで、良いのだが、そこから家族みんなに親切にしていくところで、家族が何も疑わないのもおかしい。しかし、病院とつながっているからといって、父親に納棺師の仕事を世話するとはすごい発想だ。でも、石橋静河のお父さん、随分ブヨブヨのお父さんだったね。役作り?彼はあくまでもロッカーの石橋凌であっていただきたいものだよね。

そして、結婚して、色々あって子供が事件を起こし始めて、土屋がそれに翻弄されていくのだが、ここで起こる事件の数々の事実をほとんど何も回収していないんだよね。そして、ラストで、モヤモヤして私はそのまま放置された感じなのです。

そう、土屋が最初に買ってもらったドレスや靴もあまり意味をなしていない。脚本の発想は面白いのだが、何をしたいのか、どこにいきたいのかが、どうも伝わらないまま終わってしまった。監督的には混沌としたところで観客に考えろ!ということなのだろうか?

娘役のCOCOは、有名なインスタグラマーだそうだが、そういう子供たちがこれからいっぱい出てくるんだろうなと驚きとともに、見えない未来がまた見えなくなった。

しかし、どこに哀愁があるのだ?


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