「ライド・ライク・ア・ガール」ストレートな成功劇。映画と競馬が好きな人が幸せになれる作品。
競馬場を走る馬の姿が好きである。だから、競馬の映画は観に行きたい。オーストラリアのメルボルンカップで女性騎手として初めて優勝を果たしたミシェル・ペインの実話を元に作られた映画である。だからなのか、監督も女性のレイチェル・グリフィス。
ストレートに彼女のパーソナルを大事にしながらサクセスストーリーを映像として紡いでいる。最後のメルボルンカップのシーンは競馬の興奮や楽しさを目一杯に詰め込んで、ほぼリアルタイムで描ききる。彼女のゆかりの人々が応援するところとレースのカットバックもなかなかうまい!競馬ファンが興奮する作りになっている。
ミシェルは10人兄弟の家族に生まれ、彼女は下から二番目。幼い時に後で調教師になるダウン症の弟が産まれて、母はあの世に。そして、馬を育てる父のもとで、8人が騎手になるという競馬一家。姉が一人落馬でなくなったりもする。そんな中で、ミシェルは騎手としての階段を登ろうとするが、デビューから順調ではない。無理な減量のあとのレースに勝ちはするが落馬。瀕死の状態になる。そこからの復帰。馬との出会い。様々な思いがつながっていき、メルボルンカップへの騎乗を勝ち取る。
主人公は、とにかく、これ以上ないだろうというほど強気でアグレッシブだ。思いを果たすためにただ真っ直ぐなのは気持ち良い。周囲の家族は反対をしても、その頑固さが崩れないことを知っている。そんな彼女だからこそ、勝った時の家族や周囲の人々の喜びも半端ない。その空気が見事に出ているラストは競馬場で応援した後のように心地よかった。
そして、監督は「女性だから」というハンデを乗り越えたことを明確に伝え、彼女が世の中に伝えたことをわかりやすく映画として作り上げている。
作り上げられた映像は、競馬の迫力や魅力を存分に伝えてくれている。レース中の位置取り、馬場の選び方、競馬ファンも唸らせる細かい描写もあり、レースシーンは、実際の競馬場でそれを観ているようなライブ感プラスアルファな出来になっている。
競馬の世界は今、日本でも牝馬が強さを発揮して、女性騎手たちの活躍も多くなってきている。JRAで現在ただ一人の女性騎手、藤田菜七子ジョッキーも、GⅠレース騎乗まで後、一歩のところまできている。彼女がダービーや天皇賞や有馬記念を勝つ時に日本でも競馬の歴史が変わるということである。ファンはそれを一緒に夢見ている。そして、それはそんなに遠くない未来だと私は考えている。そんな思いも重ねて観られる映画だ。
時速60kmの速さで大きな防具もなく競われるワイルドなスポーツが競馬である。そのワイルドさと繊細さがしっかりと描かれた映画だったと思う。映画と競馬の好きな人には是非、映画館に足を運んでいただきたい。
また、何か混沌としてしまっている今の時代に疲れてしまったみなさん、ストレートに人間が限界を極めるサクセスストーリーはいかがですか?とても元気が出る一作です。
「大切なのは自分がつけるオッズだ」というセリフが出てくる。そう、人生のオッズは他人がつけるものではないと思うのだ。