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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【31】白鳥信一監督の予想通りの映画と、SM映画の非現実性と

1982年7月17日、高田馬場東映パラス「宇能鴻一郎の人妻いじめ」「奴隷契約書 鞭とハイヒール」「痴漢電車 いたずらな指」の3本立てを観る。

正直、これ、何を観たくて映画館に行ったかよく覚えていない。この頃は、ロマンポルノの新作を全て観てやろうくらいの勢いはあったのだろう。まあ、寺島まゆみと中原俊監督というのが観る要素としてあるわけだが、もはやこの頃の私は映画依存症であるのは確かなようだ。で、観た順に書いていく

「痴漢電車 いたずらな指」(渡辺護監督)
脚本、小水ガイラの痴漢電車もの。ネットで調べると、痴漢電車そっくりの風俗店を作る話らしい。まあ、いまだにAVでも痴漢電車物って作られてるから、ユーズはあるのでしょうね。私はあまりそこに興奮を覚えなかったから、痴漢の気持ちは今だに理解できない。主演は、にっかつ作品にも進出していく、美野真琴。ピンク映画に出ている上では美人であった。引き締まった身体は今も記憶に残る。

「宇能鴻一郎の人妻いじめ」(白鳥信一監督)
宇能鴻一郎の原作のロマンポルノが何本あるか知らないが、宇能さん、原作料だけでも随分稼いだのだろうなと思う。そして、このタイトルで客は入ったのだろう。そう、「あたし、◯◯しちゃったんです」という、あの台詞を聞きたいがばっかりに映画館に飛び込んだ人は多いと思う。そして、内容はただただくだらない、そしてオゲレツで、主人公は、カマトトのような状態から、性の奴隷になっていく感じがたまらないのか?よくわからないが、そんなのばっかりである。だが、この路線でも監督によって良し悪しがあり、白鳥信一監督作品だと、まず最低レベルにつまらなかった。映画としての監督の主張が見られず、ただただ、ストーリーをつないであるだけみたいな感じだった。例外はない。だいたいこの監督、日活アクションを見ると結構な量のチーフ助監督をやっているのだ。ロマンポルノで監督になれたみたいな人なのだが、彼が何をやりたかったのかはいまだ不明といった感じ。まあ、主演の寺島まゆみは、本当に隣にいる女の子という感じで屈託なくお芝居していたから、好きでしたけどね。で、この映画新婚の夫婦のところに下宿人が来て、浮気につながるという話。夫婦、お互い浮気しながら、最後は元の鞘に戻るという他愛ない話。全く、記憶には残っていない。

「奴隷契約書 鞭とハイヒール」(中原俊監督)
中原監督「犯され志願」に続く二作目。主演、松川ナミにとっても主演二作目の作品。とりあえず、二作目を撮って松川ナミは麻吹淳子に続くSM路線の主軸になる。それがあって、森田芳光監督の「メイン・テーマ」などにも顔を出すことになるのだ。身体は、そんなに豊満ではなくSMという感じではない人だが、そこに出ることで主役が張れたことで、今も名前が残っているのだ。それは、今のAVのSM を演じてるのか本気なのかわからないようなものとは全く違うものだった。話は、奴隷として調教された女を預かった夫婦がSM に目覚めるという話。中原作品として優れているという印象はないが、こういうものを撮ることで監督の手腕を磨いていたということだ。そして、SM映画というのは、こういうシンプルな事象で嘘話を作れるわけで、脚本家の養成にはいい題材だと思う。まあ、昨今の風潮では成立しにくいのだが、「ロマンポルノ50年」ということで新作を作るなら、SM大作的なもの作ってみてほしいなとも思うところはある。

つまらない映画の3本立てといいながら、これだけ文を書いてしまう私。まあ、郷愁に老けても仕方ないのですけどね。書き綴るうちに、いつの間にか40年前にタイムスリップした感じになるのですよ。

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