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ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【3】佳作との出会い、若い力の対等「ズームアップ・ビニール本の女」「快楽学園 禁じられた遊び」「女の細道 濡れた欲情」「女教師 汚れた放課後」

1981年4月6日、今はなき「上板東映」で4本立てを観る。上板東映は古い東映系列の映画館が名画座として生き残っていたもので、決してロマンポルノの専門館ではなかったが、面白い日本映画を見繕って上映してくれていた。自主映画なども積極的にかけ、「狂い咲きサンダーロード」や「竜二」などの制作にも関わっていた。ここで観る映画にハズレなしという感じの印象はあった。この日も、「女の細道 濡れた海峡」と「女教師 汚れた放課後」という、今に至っても傑作と思っている2本にここで会う。

この当時、ロマンポルノはまだ、助監督を募集し、新しい演出家を育てていた。その頃の精鋭が今の日本映画の基盤を作っていることは確かだ。この三年前、1978年6月、根岸吉太郎が「オリオンの殺意 情事の方程式」を発表してから、多くの新人監督たちが番組を任されるようになった。まだ、神代辰巳も田中登も作品を発表する中で、彼らは新しい映画をロマンポルノの映画館に放り込み、それが認められ出すのが、この1981年と言ってもいい。根岸吉太郎の最初の一般映画「遠雷」の公開がこの年の10月だからだ。

「ズームアップ・ビニール本の女」(菅野隆監督)

インターネットで女の裸やSEXシーンなど見放題と言っていい今日には考えられないほど、当時は性描写に関して当局はうるさかった。大島渚がフランスで撮った本番映画「愛のコリーダ」が公開されたのが1976年だから、これを観た5年前である。だからって、日本の猥褻に対する考え方は何も変わらなかった。裏の性風俗商売では「ビニール本」「裏本」と呼ばれるビニールに入った写真集が商売として好況を呈していた。ビニール本は、局部が透けて見えて把握できるもので、エロ本の進化系だが、この頃から少し可愛い娘が参加するようになってくる。それが、ロマンポルノのアイドル化や、後のAV制作の基準になって行ったことは確かだと思う。

映画と関係ない話になったが、流行り物の題名の映画がこれなのだ。そして、主演は早野久美子という女優。顔は覚えているが、あまり多く出ていた人ではない。麻吹淳子が出ていて、一人では弱いから、ツートップのSM映画となった感じなのだろう。あらすじを読み返すと、レイプされた女(麻吹)の復讐劇で、結果的に性にのめり込むように話が終わるというもの。監督、菅野隆はこれがデビュー作だったが、私に特に新しさを感じさせるものではなかった。

「快楽学園・禁じられた遊び」(神代辰巳監督)

荒井晴彦脚本の神代辰巳監督作品。ということで、キャストは主演の女高生こそ、太田あや子、北原理絵と当時の若手を使っているが、脇に宮下順子、山科ゆり、小川亜佐美、北見敏之、江角英明、高橋明、中島葵と、ロマンポルノのオールスターキャストの布陣。いわゆる神代映画とは少しちがった、はちゃめちゃな学園性奴隷ムービーという触感だったと思う。内容はよく覚えていないのだが、ロマンポルノが、内容はなんでも良くて、裸さえ出てくれば問題ないということの代表のような作品だ。神代監督のフィルモグラフィーを見ると、この後はいわゆる70分程度のロマンポルノは撮っていない。自分が世に出た舞台での最後の好き放題映画なのだと思う。そういう意味では、神代ファンは必見の1本。

「おんなの細道 濡れた海峡」(武田一成監督)

1980年に作られたロマンポルノの中で、評価の高かった1本。監督は、日活アクションの終焉時期から、にっかつで映画を撮り続けていた、武田一成。この作品の後、2、3本はなかなか、似たような触感の良きロマンポルノを撮っている。

田中小実昌原作で、田中陽造脚本といえば、雰囲気が見えてくる方も多いだろう。旅周りのストリッパーの山口美也子とできてしまった男(三上寛)が山口の夫に関係を許してもらいにいく話。男女の関係の儚さと面倒臭さ、そして人間の生と性がとても心の染みる映画だった。知識がないままに、ロマンポルノの映画館でこういう話を見せられると、とても得したような気になった思い出がある。三陸地方の寒い感じ、三上が弱い人間で「ポロポロだよ」とため息を吐く。そしてうらぶれた居酒屋の奥のSEXみたいな映画である。そこには、1980年代の時代遅れがある。傑作である。歳とってまた観たいロマンポルノの1本

「女教師 汚れた放課後」(根岸吉太郎監督)

これも、田中陽造の脚本。当時、田中陽造の脚本のものは、ある一定水準以上の感があり、見る前から楽しみだった気がする。そして、ロマンポルノのレイプの女王と呼ばれるようになる風祭ゆきの代表作、そして、根岸吉太郎が一気にブレイクしていくきっかけの作品と言っていいだろう。教育実習での風祭のレイプ体験が話のきっかけ。そして、風祭の教え子になる太田あや子がその犯人の娘という設定。そこから、教師と生徒の女の関係。そして、彼女の父は冤罪だったという流れから、最後は旅芝居と交流していくというオチは、田中陽造的ではある。だが、先に書いた「濡れた海峡」とは話の根底的なものは近い、やはり映画が若い感じがした。風祭も太田も、とてもヒロインとして輝いていた。そう、明らかにロマンポルノが変わっていくんだという息を感じる一作である。最初の方で、SEXの後、裸のままでメガネをかけて本か手紙かを読む風祭ゆきがとても色っぽかったのを覚えている。そして、監督の次作が私的には根岸吉太郎監督作品で最も好きな「狂った果実」になったわけで、そういう意味でも、記憶の残る一本だ。

とにかく、ロマンポルノは監督も女優も入れ替わり時期であったのが80年代初頭だったということ。そして、その環境は、当局がまだまだ猥褻というハードルをけして下げていたわけではないというのはとても大事なこと。


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