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「星屑の町」温もりを感じる風景。そして、夢見る力と歌謡曲

のん主演という事もあり、ちょっと楽しみにして観た。25年続けてきた舞台の映画化とはいうが、演劇をよく知らない私は、それを知る由もなく。昔の日本映画の2本立てプログラム時代の添え物的な題材だが、その頃のような制作時間の制限もないだろうし、出演者が慣れ親しんだ世界という事もあり、よく纏まっている映画だ。ラストの列車の中のシーンは、ニッコリできる作りである。ここのところの、なんか陰鬱な雰囲気を吹き飛ばすような空気感を持った軽い作品。そして、それを支えている昔の歌謡曲のパワーは偉大である。

大平サブロー、ラサール石井、小宮孝泰、渡辺哲、でんでん、有薗芳記、六人のハローナイツを演じる面々は、とにかく、個々に芸達者なだけに、観るものを飽きさせない。売れないムードコーラスグループを本当に匂いまでつけて演じ切っているので、観客は映画の中に素直に入っていける。

途中、のんをグループに入れるか、入れないかの六人のやりとりは、多分舞台テーストそのままなのだろう。その辺りは映画的な面白さに欠ける部分もあるが、まあ許せる範囲だろう。違った方向から言えば正攻法で正解というところだ。

そう、彼らのステージ、そして、のんちゃんのステージシーンが光っていれば、この映画は輝くのだ。のんに前座と称される戸田恵子のステージも流石である。彼女の「手紙」や「愛のくらし」が聴けるのは贅沢な感じもする。

そして、主演の、のん。この芸名はもう能年玲奈に戻して欲しいものだ。こうして文章にするときに名前が前に出てこない。それはともかく、舞台は「あまちゃん」と同じ岩手県、そして東北弁だし、最初は自転車に乗って出てくる。そう、まさに天野アキが帰ってきた感じだった。ちょっと猫背気味の姿勢の悪さも健在。だが、あれから7年、美しくなっただけで、瑞々しさは昔のまま、本当に、7年間、彼女をフルで使いこなせなかった日本の芸能界、映画界はクソだと思う。

ここでも、六人の曲者たちとうまく絡み合い、彼らの前でギターで歌う「新宿の女」がとにかく、印象的。藤圭子と同義でなく、のんが理解した「新宿の女」だからいいのだろう。ギターを弾く手も胴に入っている。全体的には、意外と出番が少ないのが残念だが、本当に日本の芸能界、面倒臭いけど、彼女をもっと使ってあげてください!

そして、その母親を演じる、相築あきこがなかなか母親として良い顔をしていた。最近は、脇役としてよく顔を出しているが、結構、きつい顔をしている役が多い印象だった。デビュー時のテレビの「桃尻娘」を演じていた頃から知っている私としては、今回の母親の優しい顔は嬉しい気持ちになった。

ハローナイツが歌う歌の中で、歌うか歌わないかを揉める「さよならの彼方へ」という歌がある。千家和也作詞、筒美京平作曲のこの歌、聴いて思い出した。まさに筒美京平の傑作の一つである。そう、昔の歌謡曲の凄さは、その時代に生きた思い出と何かシンクロしているのである。この歌がラジオから流れていた頃、私は受験生だった。だからかもしれないが、流れてきたときに涙腺が緩んだ。星屑のような歌たちは、みんな誰かを元気付けていたのだ。

そして、当時の芸能界のステージは確実に夢のステージでもあった。その残り香を25年間、舞台で息づかせてきたのがこの話なのだろう。そういう意味で、東北の皆さんを元気付ける事もあって作られた映画だと思うが、ちょうど上映している現在、日本が今まで経験したことのない状況に置かれているのも何かの縁であろう。

ちょっと疲れている、50代以上の方、ぜひ、映画館でこの映画見てください。ちょっと気持ちが昔に帰りますよ!そう、あなたが夢を追っていた頃に!

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