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「ベイビー・ブローカー」子供は未来のための宝物的なテーマ性はわかるが、あまりにも坦々過ぎて…。

昨今は、河瀨直美監督に対する風当たりが強いが、カンヌに愛されてる的なものでは、是枝裕和監督も同じだろう。この映画もカンヌで最優秀男優賞とエキュメニカル審査員賞の二冠を獲ったということである。作る映画のテーマ性もあるが、国際映画祭で皆が注目を集め、わかりやすい映画というところでは、彼がそれなりに賞を獲るのはわかる。演出的にも、河瀨監督の作品に対したら、空気感は好きである。独特の映像をつなぐ力は確かにある。だが、エンタメ性みたいなものに関してはいつももの足りなさを感じる。この映画も、脚本、監督、編集を自分でやっているが、そういう意味で、あまり変化球みたいな映画が降ってこない感じが残念な気もする。

そして、この映画、すべて韓国資本で撮られた、韓国映画である。だが、いわゆる韓流の映画という空気感ではなかった。韓国の優秀な俳優たちを使って作った日本映画という空気感だった。それを考えると、韓国で作る意味があったのかというものもあった。つまり、そういう作品に対して、あまり新しいことを仕込んでやろうという感じではないのですよね。そんへんは、巨匠という位置にいるのに、もの足りないところと言っていい。そう考えると、河瀨監督に代わって五輪の映画を撮ったとしても、凡庸なものしかできなかっただろうなとも思えたりする。五輪映画に関していえば、適任者などいなかったと見るのが正しいのだろう。

そして、この映画の話。まず、韓国にも「赤ちゃんポスト」みたいなものがあるということに驚かされる。子供をまともに育てられないような国には未来はない。多分、監督が言いたかったことも、そんなところにあるのだろう。

そして、主役のソン・ガンホが、赤ちゃんポストから赤ちゃんを盗み、売るという商売をしていて、それを売るために釜山からソウルまで車で電車で移動する。そこに、赤ちゃんを捨てた、イ・ジウンが一緒に自分の子供を売る旅に付き合うという、ロードムービーだ。そこに、彼らの商売を現行犯で捕まえようとする刑事、ぺ・ドゥナが追いかけ、それなりに面白そうな仕掛けが作られている。

だが、その面白そうな仕掛けが、うまく使えていないというのが、私がこの映画をみながらの感想だった。ロードムービーという奴は移動と共に、舞台が変わるので、いろんな風景が見られ飽きないはずなのだが、私はこの映画を見る中で何回も眠気を覚えた。話に抑揚が足りないのだ。刑事が仕込んだ買い手の男が排卵誘発剤を使っていると言って、嘘がバレたりするようなギャグ的なシーンも仕込んであるのだが、それが映画の活力源になっていないのだ。自分の脚本だから、それは考えた通りのリズムにしか演出できないのだろうが、今ひとつ坦々としすぎる是枝演出は、どこの国で撮っても同じなのだろう。私なら追う刑事側の視点の割合をもう少し増やして、両者からみる、赤ちゃんに対する考え方をもっと明確にして、サスペンス的なシーンを増やすだろう。

最後は、刑事も含めて、関係者がみんなで親が刑務所にいる間に、赤ちゃんを育てるという美談みたいな話でまとめてあるのだが、それも綺麗にまとめ過ぎてる感じがする。そう、是枝監督って、社会問題を映画にするのだが、優し過ぎて、怒りみたいなものをうまく画にできない感じがするんですよね。そして、撮りたい素材が、結構地味なわけで、日本の資本が動きにくいのもわかる気はする。

確かに、こういう不幸な赤ちゃんは今も増えているだろうし、これからの未来、こういう面でも日本がどういう風に動いたらいいのかも見えない。私としては、もう少し監督の刺激的な意見みたいなものを映像に焼き付けてほしい気が多分にしますよね。今や、日本映画を代表する監督の位置にいるわけですしね…。それはそうと、韓国の役者陣、みなさん素晴らしかったです!



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