「あの頃、文芸坐で」【34】邦洋SF映画の魅力「ファイナルカウントダウン」「スペースサタン」「日本沈没」「復活の日」
このプログラムは二枚持っている。文芸坐で「スペース・サタン」と「ファイナル・カウント・ダウン」を観て、2日後には「日本沈没」と「復活の日」を観ている。その中日に、角川映画「スローなブギにしてくれ」の試写会に行っている。浅野温子、古尾谷雅人主演のこの映画、片岡義男の世界というよりも、藤田敏八監督の世界の映画だった。最近、思うのだが、当時の片岡義男の世界をちゃんとテイスト通りに映画化した人はいないのではないかということ。角川も、この後、森田芳光や大林宣彦という面々が挑戦、角川以外で東陽一の「湾岸道路」なんていうのもあった。ほぼ、撃沈だったと思う。角川アニメの「ボビーに首ったけ」はちょっと成功だった気もするが…。片岡義男の世界は、今読んでもクールな雰囲気を保ち続けている。今取り組む人はいないかな?やって損はないと思うのだが…。
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まずはコラム、年の初めの山登りの話。ここに出てくる「一ノ倉沢」という脚本、当時、キネ旬を読んでいたから、目を通したかもしれないが覚えていない。当時、城戸賞は今に続く脚本家の登竜門だった。今のようにシナリオ賞もそう多くなかったから、私もかなり注目していた。調べるとこの年の準入賞は「とりたての輝き」の浅尾政行氏、こちらはご自身で映画化している。私は縁あって、後日、浅尾氏とお知り合いになったが、今、どうしていらっしゃるのでしょうか?
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プログラム、文芸坐のラインナップにある「夜よさようなら」というミウ=ミウ主演のフランス映画、当時、観たくてそのままになっているそのままになっているのを今日気づく。そういう縁のない映画ってありますよね。まあ、今はビデオで遭遇できることはあるのだが、当時の映画は映画館で遭遇するのも醍醐味だったですね。続く「推理シリーズPARTⅠ」というのがあるが、ここで「ピンクパンサーシリーズ」の連続上映がありますが、ピーター・セラーズが亡くなって終わったシリーズ、復活しないのですかね?
文芸地下は、今村昌平フェアの後に、「幸福号出帆」「四季・奈津子」こちらも、観に行っているので詳細は後日。
オールナイト「日本監督大事典」は渋谷実の後に島耕二と清水宏を一緒にするという無謀なやり方。特に、清水宏に関して、戦後の2本だけの上映とはちょっともったいない。サイレントからの松竹の巨匠だが、この当時、かけられるポジフィルムがなかったのだろうか?そして、新藤兼人。「原爆の子」や「第五福竜丸」は日本の戦争を考える夏に何度上映しても良い映画である。最近ではあまり見る機会もない。テレビでかかる機会も減っていると思う。これももったいない話だ。
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まずは文芸坐で観た「スペース・サタン」から。今でいうAIのような「バイオノイド」というものが、宇宙で反乱を起こす話である。あまりよく覚えていないが、ファラ・フォーセットとカーク・ダグラス主演ということは覚えている。この日のメインは「ファイナル・カウント・ダウン」だった。原子力空母ニミッツが真珠湾攻撃直前のハワイにタイムスリップする話である。結果的には、その時になって元に戻ってしまうのだが、「もし、真珠湾攻撃がなかったら」というところはとても興味のあるところである。とは言え、日本はアジアに戦争を広げて、最後は駆逐されてしまう運命だったのだろうと思いますが…。自惚れた国家の陥る道は一つだと私は思います。だから、戦争で死んだ人々が今の国家を作った的な発想は全く理解し得ないところ。そういう議論ができる映画です。今に比べればタイムスリップする絵は上の写真のように、そんなに凝っていないものだったが、タイムスリップものが好きな私にとっては今でも結構好きな映画です。キャサリン・ロスが出ているのもポイントです。その彼女が出てくるラストが好き!
そして2日後見た「日本沈没」。映画のそれを映画館で観たのはこの日が初めてだった。多分、テレビでは観ていたし、村野武範主演のドラマ版も観ていたから、内容は知っていた。考えれば、原作を読んでいない私である。この原作の発表は1973年。1972年に、田中角栄首相が「日本列島改造論」を唱えていた頃の思い上がった日本に対する警告みたいなものなんでしょうな。そして、その後何度か観た映画なので、内容はよく覚えている。いしだあゆみの水着と小林桂樹のイライラした人間像、沈む日本、最後に他国に向かう列車の行方の先の見えなさみたいな印象である。そう、小松左京氏は、島国で育った日本人がその島を失った時からがドラマであり、どう生きていくかがテーマだと話していた記憶がある。コロナ禍の今を考えてもわかるが、日本人は弱い人種である。本当はゴジラなど出たら、破滅に陥る民族であると私は思う。だからこそ、もっと強く生きる力を蓄える準備をしなければいけないのに…。
そして、「復活の日」。この話はパンデミックから世界の核が暴発し、地球が滅ぶ話である。今の状況に近く当てはまり、今年になって観た方も多いだろう。原作のシミュレーションは決してない話ではない。人間の行き過ぎた欲望が世界を滅ぼすという警告というところ。私たちは今、反省しているか?まだ何も反省していない気がする。それを考えるためにも観ていただきたい一本だ。ラスト、草刈正雄が、キリスト然とした姿で南極まで歩いていくのは、非現実的だが、人間は生きる思いが大事だというところだろう。そして、まだまだ美しかったオリビア・ハッセーを観る映画でもある。多分、角川映画としても最も金をかけた映画だと思う。深作欣二監督もこれを撮り切れたのはなかなかと思います。
そう、書いていくと、この4本、現代にも通じる4本ですね。39年前にこういう予言書みたいな映画が作られてそれを続けて観ていることに少し驚きます!
次回は、今村昌平監督に関してです!