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「無観客試合」にプロスポーツ興行の意味を噛み締める。
大相撲春場所の「無観客興行」が始まった。今、ちょうど、その模様がテレビから流れている。この不思議な光景は、今後語り継がれることになるのだろうか?
観客がいない、そして歓声がない。その取り組みに迫力がないというよりも、これは大相撲興行としては、不完全そのものである。アナウンスは実際通りに流れるが、その意味合いもわからない。その分、力士が出す音はいつもより大きく聞こえる。そして行司の声も…。それはそれで興味深いが、やはり、これは興行ではない。
大相撲が始まる前に、野球と競馬の無観客興行をテレビで見た。
野球も、相撲と同じようなことが言える。ある意味、いつもはうるさすぎる応援が無い分、球がミットにおさまる音、バットにあたる音が明確に聞こえる。これは、野球の醍醐味みたいなもの、プロの凄みを感じるが、やはり観客のいない球場では、プラスアルファのものが無いのはよくわかる。プロの興行というのは、そのプラスアルファが重要なのだと思う。そこは、選手とファンが共有している感じの空気である。それがあるから、そこに金が落ちるということだろう。
競馬や公営競技も無観客で行われたが、こちらはネットで賭け金はやりとりできる時代で、まだよかったと思う。そして、テレビの前で叫んでるおじさんはいるだろうから、擬似的な競馬愛は成就できている気がする。ただ、走る騎手たちは、少しやりにくい部分はあるだろうが、全てのレースで賞金がかかっているわけで、そういう意味ではプロ根性は出せる世界ではある。
ネットで見てみると、プロレスでも無観客興行をやったところがあるらしい。ショースポーツという部分が大きいプロレスに関しては、無観客は痛すぎる。ネットで見られるとはいえ、客がいない前でやる演劇と似たような世界では、アドリブ的なものが出しにくいだろう。
そう、全てはネットでなんとかファンに届けられるということで成立しているわけだ。そして、野球などはシーズン開幕前ということで成立した無観客だった気はする。
これから開かれる選抜高校野球も無観客で開催と言っているが、こちらは私はそれ自体に反対である。彼らはプロでは無い。全国から移動してくる危険性や、高校自体が休校になっている現在の状況を考えれば、中止にすべきだろう。ましてや、夏の予選を勝ち抜いてきた猛者たちではなく、成績で選抜されたものたちなのだから、大きなリスクは回避すべきだ。
そんな中、プロ野球の開幕延期のニュースも入ってきた。日本人は、球春という言葉を使う。今年の桜は早く、来週にも咲いてしまいそうだが、今年の球春は遅そうである。(無観客の高校野球は球春には入らないだろう)
そして、今日の大相撲が終わった。白鵬連勝で鶴竜は負け。そんな中に大観衆が湧くことはない。そこにプラスアルファのエネルギーが湧くはずもない。やはり、大相撲は中止にした方がよかったのではないか?
全ての競技について言えるのだが、そこの場を支えて裏で働いたり、付随した飲食サービスの方々には、本当にきつい春だろう。他の場所でも、もはや予想だにしない、報われない縁の下の力持ちたちがいる。この問題が大きくなってからの政治家の意見を聴くと、「縁の下」はどうでもいいと言わんばかりの発言が多々見られる。
彼らも、国民の士気を盛り上げる競技の一員なのである。プロスポーツにとっては、裏方や支えるファンも含めてワンチームと言っていいと思う。プロスポーツにとっては史上初のことであり、様々に煮え切らない状況だとは思う。とにかく、早く普通の開催ができるように祈るだけである。とにかく、プロスポーツ興行がどういう状況でも続けられる国でなければ、先進国とは言えないし、平和な国とはいえない気がする。
今日の一つ救いのニュースは、宝塚劇場が今日から再開したということだ。大きな英断だったと思う。何事もなく、様々な興行が復帰できるきっかけになっていただきたいと心から願う、今日 2020年3月9日である!