素っ裸の年齢【令和に観ていく日活アクション!3】第三の男、トニー初主演作。そのクールさに子供達が憧れる世界。
裕次郎、旭ときて、日活第三の男といえば、赤木圭一郎。日活第4期ニューフェイスであり、21歳で撮影所内の事故で亡くなったことで、和製ジェームス・ディーンと揶揄されることもあるスターである。しかし、この21歳という年齢は裕次郎のデビューの時のそれより若い。当時の衝撃はよくわからないが、今もファンが根強くいることでは、赤木圭一郎(通称トニー)は永遠と言っていいだろう。とはいえ、今生きていれば86歳。その後の命があればどんな役者になっていったかはすごく興味あるところだ。
で、この作品が初主演作品。その初主演作品が鈴木清順監督によるものということで、結構、この映画は見る機会がある。内容的には、映画の中ではその名が出てこないが、カミナリ族が悪さの末に死んでいってしまう破滅型青春譜。
赤木は少しグレタというか自由を求める子供たちを集めて、別荘と呼ばれるとたんバリのかまぼこ型の別荘にいる。このメインステージが結構印象的というか、周りは野っ原というかゴルフ場みたいなロケーション。他に住んでいるのはホームレスと思われる左卜全だけなのだが、この左がなぜに必要なのかよくわからない。
話の本筋は赤木が新聞記者の新聞記者の高原駿雄に子供達の悪さを記事として売り込み、20歳前に金を儲けて漁師になろうとしている話。ちょっとヤンチャな子供たちを指示して金にして、自分が大きくなるという虚栄心の末に子供達とバイクで走行対決、そして朽ちていくのだ。
赤木の女役というかヒロイン役は堀恭子。長い髪のいい女で日活でのみ活躍した人であるが、日活での活躍はこれがいちばんの役だったようだ。
話的には、新聞が、子供たちの犯罪をローティンの反抗として描き、赤木の方をハイティーンと呼んで、その凶悪化を問題化している。つまり、戦後15年くらい経って、少年たちはオートバイのようなおもちゃをもらい、金持ちと貧乏人の貧富差はあるにしても、子供達はいろんな鬱屈の中にあるということだろう。だから、主人公のサブ(藤巻三郎)が同級生で金持ちのまあ坊(清水秀一)を誘って、彼もまた別荘にいつくのは、社会への反抗心は金持ちも貧乏人もあまり差がなかったということなのだと思う。この辺りの感覚は今の若者には理解できない世界だろうし、金銭の問題よりも心の在りどころの問題だ。
そして、鈴木清順演出だが、まだ清順美学と揶揄されるような時代ではないが、よーく見るとカット割の勢いみたいなものはずば抜けている。そういう意味でバイクに乗っているような爽快感を映画の中から感じ取れるのはすごい。そして、よく見れば、捨てカットみたいなものをうまく映像の流れの中に入れてオシャレ感があるのも彼の演出ということだろう。それが、会社的には、「ちゃんと撮れ」というふうに変化していったのでしょうな。
赤木が朽ちて、いろんな夢が途切れ、堀も赤城に捨てられ、皆は別荘から出てきてエンドマークなのだが、最後に皆で左卜全のところに笑顔で向かうのは意味がわからない。左がどういう人物か最後までよくわからないからだ。左のような生活が本当の自由だという考え方は考えられるが、それは、ズビズバーという感じですよね。
上映時間53分のSPであるが、赤木圭一郎の存在感がよくわかる。半分子供映画のようでもあり、こういう映画を当時のローティンが見てどう思ったのかは興味深いところ。そして、赤木はこの後裕次郎との共演を経て、本格的主演の「拳銃無頼帳シリーズ」にいたり、ダイヤモンドラインの中核として活躍するわけである。
「素っ裸の年齢」1959年9月20日封切 53分
鈴木清順監督 寺田信義、鈴木清順脚本
赤木圭一郎、堀恭子、左卜全、藤巻三郎