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「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」少女漫画によくあるキャラの原型を女性監督らしく描く作品!

グレタ・ガーウィグ監督作品。映画の骨格は女性監督が撮った「若草物語」という感じのテイストである。だから、全体に4姉妹がかしましい感じで暮らし、やたらセリフがかぶる感じで交わるのは、男から見たら、イラッと来る人も多いのではないか?

導入部で、主人公、ジョーが出版社に小説を売りに行き、それがうまく行って走り出すシーンがある。予告編でもこの部分が使われているが、すごく活気あるシーンだ。この感じで全体をまとめたら、私にもすごいいい印象になったかもしれない。

だが、実際は、やはり少女漫画を繰るような「若草物語」である。そういう意味では、原作の味を失わないようによく纏まっているという人も多いだろう。こういうものを求めている方も多いから、マーケット的には問題ないと思う。

そして、本年度アカデミー衣装デザイン賞に輝いたそれは、とても品格のある着せ替えドールを見ているようで、なかなか楽しかった。こういう古典のリメイクは、時代性のなかに、うまく新しいセンスが含まれていることが必要だと思う。そういう意味では文句なしである。

だが、全体的には凄くもどかしい部分が多かったのは事実である。導入部の活気のある感じの後、姉妹たちの紹介的なシーンに移る。この段階から、現在と過去の時間が行き来する作りにあるのが、見ている人にとても不親切。少し見続ければ、姉妹の顔も性格も理解できてくるのは、ある意味脚本の腕にも見えるのだが、先に書いた、姉妹の賑やかさもあり、なかなかついていくのがやっとなのである。(これは、人によって様々だろう)

そんな映画の感じを他所に、時代は南北戦争時代だから、今から考えると時間軸の速度は遅い。クリスマスが2度出てくるが、その間も時間はゆっくり過ぎているように感じる。そして、結婚式や葬儀などの冠婚葬祭も落ち着いたものが出てきて、彼女たちの正装のドレスが、いわゆるスカートが広がったものなので、今、言われているソーシャルディスタンスは程よくとれている時代だ。そう、この映画を見ていて、人の時間や空間感覚をこの時代に戻す必要はあるのが「ニューノーマル」のヒントかな?と思ったりもした。

そして、この時代は、この間観た「ハリエット」の時代に被ってくる。あちらが南部の黒人迫害社会なら、こちらは北部である。父親は南北戦争に従軍牧師として行っている。そう、映画を重ねて見ていくと、この話が白人が書いた白人のための話であることは明確であり、二つの映画を同じ時代の出来事として把握することで、世の中に続く差別を考えて、話し合って観るのも面白いかもしれない。

また、こちらの話は、女性の自立か結婚かという話が主眼にある。長女メグは美しい結婚願望を持つ人であり、この役をやっているエマ・ワトソンはイメージにぴったりである。そして、次女の主人公ジョーは家族を支えようとする独立志向。病弱な三女ベスは音楽が友達のどちらかと言えば孤独な性格、そして四女のエイミーは画の才能を持つ強気の末っ子と、現代に移し替えても、十分にエッセンスは使える話だ。日本においても、何度となく、少女漫画のエッセンスになってきたのはみなさんがご存知のこと。

そして、最も進歩的で男っぽくもある、主人公ジョーは今でも主人公として興味深い存在ではあるのだ。演じる、シアーシャ・ローランも全身でジョーを演じ切っている。だから、もっとジョーの主眼で話を進めた方がまとまりはよかったのではないかと私には思えた。

衣装、美術、そして四姉妹のキャラクターが出来上がっているので、映画の完成度は悪くないと思う。ただ、先に書いた構成の仕方がいけないのか、多分、観る人によっては、途中で前後関係がよくわからなくなる人もいるだろう。

女性が描いた女性のための映画であるという感じではありました。

なかなか毒舌な伯母さんはメルリ・ストリープだったのね。クレジット見て気がつきました!


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