見出し画像

「あの頃、文芸坐で」【45】鈴木清順オールナイト②初期のアクション映画に見る若さ

画像1

画像2

プレゼンテーション 63.002

鈴木清順オールナイト2週目。演目は、デビュー作「港の乾杯・勝利を我が手に」「素っ裸の年令」「その護送車を狙え」「けものの眠り」「密航0ライン」「すべてが狂ってる」の6本。デビュー作は歌謡映画。他の5本は添え物のアクション映画。もちろん、すべて白黒映画。36歳でデビューした当時の、若い?フィルムである。

*     *     *

コラムは、「文芸坐しねぶてぃっく」の話。私もここでは、いろいろと買い物をした。いわゆるプレイガイド的な機能もあったし、映画の本が多く置いてあるのは嬉しかった。そして、一時期、日活アクション時代のポスターやスチールを売っていたりして、その時買ったものは、今でも大事に持っている。文芸坐の横の通路をお店にしたような狭い空間だったが、記憶の中にはっきりある場所だ。ここでは、映画館の商売とこういう店の商売は全く違うという話。今では、映画興行をはじめ、どんな商売もインターネットをいかにつなぐかが勝負である。そういう意味で、どんな商売も180度違うなど言えない時代になってきてはいる。ここに書かれた世界は今の20歳くらいの若者には到底理解できないことなのだ。

*     *     *

プログラムを見ると、文芸坐は「フィルムフェスティバル」のあとは、「悲しみよこんにちは」と「テス」の2本立て。いい女の二本立てという感じ。ナスターシャキンスキー、最近、お名前を聞かないですけど、どうなさっているのでしょうね?そして、お次はジャン=マイケル・ヴィンセントとリチャード・ギアの男二本立て。ジャン=マイケル・ヴィンセントって、調べたら、昨年亡くなっていたんですね。「ビッグ・ウェンズデー」ですよね。

文芸地下は、前回書いた、「ぼくな好きな先生」と「フィルムフェスティバル 脇役編」と続く。

そして、オールナイト「日本映画監督大事典」は次々に上映される鈴木清順という感じです。

*     *     *

「港の乾杯 勝利を我が手に」

鈴木清順33歳でのデビュー作。脚本に浦山桐郎が絡んでいる。この題名、「港の乾杯」という青木光一の歌をフューチャーした映画ということになっている。ということで歌手の青木が流しで出ている。この辺りは覚えている。話は、競馬騎手の八百長の話だったようだ。ほとんど覚えていない。三島耕、牧真介、南寿美子というキャストの並びを観ても、添え物のSPである。ただ、至って普通の映画デビューだったのだなという印象があったことだけは記憶にある。

「素っ裸の年令」

この映画は、この後も何度も見る機会があった。赤木圭一郎の初主演作である。ダイアモンドラインの中核になるトニーのデビュー作を清順監督に撮らせたということは、会社としては、それほど彼に期待していなかったということなのだろう。だが、この後、裕次郎との共演があり、この映画が封切られてから半年しないうちに「拳銃無頼帖 抜き打ちの竜」を撮っているから一気に風向きが変わったののだろう。その後、監督が彼を撮ることはなかったから、これが最初で最後のトニー主演映画。そして、脚本にも絡んでいる。雷族の赤木が浮浪児を集めてかまぼこ型の不思議なハウスに住んでいる。情婦の堀恭子もいる。「太陽の季節」の流れにある、不良映画である。ただ、舞台となる印象的な家をはじめとして、他の日活アクションとは少し違った印象はある。監督が初めから日活の本流になかったことはよくわかる作品だ。最後は、赤木が無謀なレースで死んでいくよくある話だ。

「13号待避線より その護送車を狙え」

水島道太郎主演のアクションドラマ。いわゆる日活アクションが成立していくと、水島道太郎は主役を降りる形になるが、この当時はまだ添え物の主演が多い。そこで鈴木清順登場という感じなのである。話は護送車からの脱走騒ぎと女体ブローカーの話が絡んだもの。新東宝の映画によくある感じなものですね。あまりよく覚えていないので、清順監督だからというものは観られなかった感じ。

「けものの眠り」

長門裕之主演、ヒロインは吉行和子。当時の日活アクションによくある麻薬がらみのお話。長門は新聞記者として、事件に絡んでいく。あまり内容はよく覚えていないが、この作品と次の「密行0ライン」は初期の清順のアクション映画としては、センスのいい作品という印象がある

「密航0ライン」

この日観た6本の中では、最も面白い映画。「けものの眠り」と同様に麻薬密輸の話だが、主演が長門裕之、共演が、小高雄二、清水まゆみ、中原早苗と日活アクションらしい面子が揃っているために、映画にも派手さがあって面白い。清順監督の初期作品(和田浩治主演作を撮る前)の中での代表作と言っていいと思う。正攻法なアクション映画だ。

「すべてが狂ってる」

川地民夫主演のハイティーンものである。川地民夫主演の映画は、日活アクションの中でも独特の雰囲気がある。清順監督はこの作品と「ハイティーンやくざ」の二本を撮っている。これらは、同時期に作られた蔵原惟繕監督のの「狂熱の季節」や「黒い太陽」に通じるものがあるが、レベル的にはやはり劣った感じ。でも、オールナイトの最後に見た割に記憶のある映画だ。

正直、この当時の鈴木清順監督の映画は、添え物を自分なりに撮っている感じであまり面白くはない。それを夜中に映画館で6本観るという行為は今では絶対できないことだろう。今ではそれを体験したことに意義があるのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?