ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【8】女教師という言葉に性を妄想させ流ようにした犯人は映画である「女教師 汚れた噂」「女教師 童貞狩り」「女教師のめざめ」
1981年7月15日、牛込文化の三本立て。「女教師特集」だ。ここの映画館は、古い作品も含めプログラムが作られていたので、新規にロマンポルノを観て行くものには重要な拠点でもあった。当時はビデオがやっと出だした頃だが、ロマンポルノのそれは、1時間短縮版で 1本3万円以上はしたと記憶する。それでも、エロな映画を購入する人がいたということだ。ホテルなどでの購入が多かったとは思うが…。エロは日本の技術も先導しているのは、今も変わらない。
ロマンポルノやピンク映画は、高度成長期に敗れた映画興行界が、苦し紛れで制作していたコンテンツだが、その中から新しい性的な言葉やニュアンスが生まれて今に至るものは結構ある。「女教師」という言葉がエロな妄想を与えるようになったのも映画の影響だと思う。同じように「看護婦」という言葉も似たようなところがあったが、今や男も看護に参加するようになり「看護師」という言葉に変わってからは、エロにも使われなくなった。
だが、「女教師」という言葉は、実際の生活の中ではあまり使われない言葉であり、結果的に、映画や小説でエロの妄想を起こすために残っているような言葉なわけだ。まだ、その冠が着いたAVも少なくない。そして、生徒が、先生を犯したり、初めての人になったりと、シチュエーションもあまり変わらない。まあ、そんな妄想できる女教師が実際にはあまり存在しないことも、この言葉がエロに繋がっている理由のような気がする。
そんなことで「女教師特集」は多分、興行的にはうまく行っていたのではないかと思うわけです。
「女教師 汚れた噂」(加藤彰監督)
ロマンポルノの中で好きな作品の多い、いどあきお脚本作品。ということで、この日の三本の中では最も記憶に残っている作品。宮井えりな主演ということもあるが、淫蕩な血が流れているという教師役がよく似合っていた。自分の性衝動と闘うような話。再度見てみたい作品の一本。加藤彰監督の作品は、傑作は少ないが、それなりに好きな作品は多い。
「女教師 童貞狩り」(加藤彰監督)
鹿水晶子脚本、渡辺外久子主演、というちょっと渋い感じの作品だが、高校生が恋する教師を襲って、手名付けられる話である。舞台はスキー場というのも、当時の雰囲気を示している気がするが、映画の記憶はほとんどないに等しい。ということは、特に印象に残る画がなかったということだ。
「女教師のめざめ」(藤井克彦監督)
宝塚出身の女優、朝比奈順子のデビュー作。共演、山科ゆり、岸田麻里と、私の好きな女優が並んでいるから、この映画がメインで観に行ったことは確かだ。ラスト、上の写真にあるように、生徒が朝比奈を裸にしてビデオを撮るシーンはよく覚えている。そう、映画の中にビデオが出てくる時代になってくるのだ。日常が一瞬にしてシュールな現場になって終わるという流れは、ロマンポルノにはよく観られる。この作品、脚本はこの時期から一般映画にも多く名前が出てくる、那須真知子。監督はベテランの藤井克彦。女優さんを綺麗に撮れる監督の印象だった。
今、考えれば、こういう映画の三本立てが街のあちこちで上映され、それに伴い裸のポスターが貼られていた時代である。タイトルだけでも結構過激なのだが、そんな中で高校生たちの性犯罪が今に比べて多かったわけでもないと思うのだが、どうだろう?でも、「女教師」という言葉はこういう映画のおかげで勝手に猥褻な言葉になって今に至る気がする。
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