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「リコリス・ピザ」ダラダラな70th青春映画で、何を語りたいのか?

ラストシーンは、綺麗にキスで決まった青春映画である。舞台は70年代、ベトナム戦争とかオイルショックとか歴史的な背景も入れながら、高校生と少しお姉さんの彼女との恋愛話をとにかくも、ダラダラと、いろんな人物を交えながら、そして下ネタいっぱいに描き上げる70thムービーである。ファッションと音楽の雰囲気で、その空気感は作り上げられているが、1970年生まれのポール・トーマス・アンダーソン監督にとっては、その空気感はわかっても、当時、若者をやっていたわけではないから、実体験みたいなものはないのだろう。

まあ、映画全体が玩具箱だ。ショー・ペンとかトム・ウェイツとか贅沢に使ってるし、細かい演出も一度見ただけでは解析しきれない感じ。映画を見る前に情報を得ていたのだが、ディカプリオのお父さんがウォーターベッドを売る人で出てくる。なかなか印象的ないい男だ。この時代に女を泣かせたという感じなのだろうか?

まあ、主人公の二人、アラナ・ハイム、クーパーホフマンは、決して美男美女ではない。それだけに、なんか、二人が等身大で、観客はシンクロしやすかったりするところはある。そして、男の方は、お姉さんの体が欲しいのに、それを積極的にすることもできない。だから、ビジネスパートナーとして口説いていくという、まあ、まだるっこしい感じ。これ、ハリウッド映画というよりも日本映画的な感じがしました。

日本といえば、日本語のシーンがある。飲食店を切り盛りする日本人の女性が二人出てくるが、いかにもオリエンタルな化粧で出てくる。こういうのは、わざとだとは思いますが、監督が日本をどのように料理したいのかは、いまいちわかりませんでした。そして、この映画舞台はハリウッドの近くらしいが、黒人が出てきませんよね。最近、そういうのうるさいのに、わざとそうしているのでしょうか?

映画全体に、かなりのスラング的な用語が出てきていて、翻訳も大変そうな一編。観ている周囲にアメリカ人がいると、笑いのツボが全く違う映画のように感じる。そう、こういう映画はそういう点でもどかしい。ゲイの人物も何人か出てくるが、それ自体が意味があるのだろうが、そういう部分が全くわからないのがもどかしかった。

とはいえ、この題材で、134分はなかなか長いですよね。まあ、カットは多いし、明らかに最近のデジタル映画なのだが、70年的にまとめ上げてるのはなかなかお上手。そして、主人公の二人が走るシーンが多いが、この辺はベタな青春映画にしたいみたいな感じなのでしょうね。

話はそれほど面白くはないのですが、もう一度見直して、いろんな映画の構造を確認したいと思える映画でした。


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