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「ツユクサ」小林聡美、平岩紙、江口のりこの3人が同じシーンの中にいるというだけで主張してくる映画

前作「閉鎖病棟」も好きな作品だった、平山秀幸監督作品ということで、見たかったのだが、なかなか時間が合わず、今日になった。こういうあまりお金のかかっていない、スターも出ていない、オリジナル脚本をしっかり仕上げてしまう監督の力量は堪能できたし、最近は、こういう身近な題材のオリジナル作品って久しぶりに見るなという感慨深さもあった。小林聡美主演ということで「かもめ食堂」のような、荻上直子監督作品のようなものも想像したが、そんな、変化球的なものではなく、正攻法の熟年恋愛映画としてしっかりと成立していた。見終わった後のほんのり感がとても素敵な映画だった。

小林聡美の相手役が、松重豊。今、テレビドラマ「持続可能な恋ですか?」でも、婚活中である松重だが、ここでの役も、妻に先立たれた男。ただ、子供はいないようで、伊豆田舎町に逃げてきた歯医者という役。同じく、夫と別れ、子供に先立たれた女が小林聡美。そう、ここに出てくる人たちは、まともに揃った家族はいない。それが、現代だということで、成立してしまうのは、何か辛い気もするが、前向きな人のふれあいの中に、何か、ちょっぴりの元気をもらえるような映画だったりもする。

スターは出ていないが、小林聡美、平岩紙、江口のりこの3人が同じ会社で勤める同僚友達ということで、この個性が合わさると、5人分ぐらいの楽しさはある。3人とも、今では、日本の映画界ではなくてはならない曲者ですしね、その3人が同じフレームの中に入って喋ってるだけでなんか重厚だし、贅沢感がありますよね。

そんな、大人たちに混ざって、平岩の子供が、物語のキーとなって動き回る。始まりは彼の語る、隕石が落ちる話から。隕石に当たるのは1億分の1という話というが、日本の人口を考えれば、良い配偶者に恵まれるのもそれくらいの確率なのかもしれない。そんなことを掛けているかどうかは知らないが、宇宙的な恋愛映画であることは間違いない。

その、子供の彼が、好きな女の子と友人とキスをしているところを見てしまうシーンがある。ここ、かなりセクシーなんですよね。子供たちの親はこのシーン見てどう感じてるのでしょうかね。まあ、綺麗だからいいとは思うのですが、今、セクハラ問題ではないが、子役には、それなりの映画のガイドラインがあるのでしょうから、平山監督だから撮れたシーンにも見えました。

題名にある「ツユクサ」が草笛に向いているということは知りませんでした。子供の頃はよく見た花ですが、最近は、東京ではあまり見ませんね。なんか、結構、強さを感じさせる野草であり、そういう感じに生きるというような意味も含んでいるのでしょうか?

そんな、いろいろ考えながら90分、楽しめました。そして、もう、上映開始から1ヶ月になると思うのですが、平日の昼間、お客さん、結構入っていました。まあ、こういう映画も世の中には、求められているのですよ。もっともっと、それなりの監督さんが、こういう小品をいっぱい撮れるような映画界であって欲しいと思います。

なかなか、小洒落た佳作でした。

5/24追記
そうそう、書き忘れていた。主題歌は中山千夏「あなたの心に」。それが発表された時から、ずっと私の好きな歌の一曲だ。彼女の声が好きだったりもする。映画の中で、それを草笛で吹くシーンがあるが、主題歌はカバーかなと思ったら本人のものだった。でも、この歌がとても似合う映画だった。できるなら、中山さん自身にワンシーンでも出ていただきたかったなと思ったりした。そう、彼女がちょっと村のおばさんみたいに出てきても全然不自然でない映画でしたから。


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