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「かがみの孤城」5次元世界の寓話というところだが、生きることに前向きになれるラストに感服!

原恵一監督、そして原作が「ハケンアニメ!」の辻村深月、主役の声が當間あみということで、観たいと思って映画館に。多分、これらの要素がなくて、ポスターや予告編を見ただけなら劇場で見ることはなかっただろう。基本的にアニメは絵面で見たいというところもあるが、今ひとつターゲット年齢が低いようにも思えたからだ。

で、結果的には見て良かったと言える。ファンタジーであり、新海誠監督の映画のようにスピリチュアル的な要素もあったりするのだが、どちらかといえばその先にある5次元世界とはこういうものだろうという感じでリアル感のある話だった。

そして、そういう道具を使って、いじめや引きこもりに悩んでいる子らに「一人ではないんだよ」というような熱いメッセージが見えてくるのが良い。それは、原作の持つ愛の力なのだと思う。「ハケンアニメ!」とはかなり舞台や描きたいものが違うようだが、話の本質の熱さみたいなものには似たようなものを感じた。そして、その熱さに原恵一監督が冷静にしっかり映画を形作ったように見えた。新海作品のように、過度なアニメ的な画面を作らずにじっくり人間を描いているのには好感が持てた。そして、それは、「この映画実写でも良いのではないか?」という疑問さえもたせた最初の方でもあったりした。原監督自身、実写映画も撮られているわけで、アニメ部分をうまく取り込んだ実写という方法論もあったのではと私は考えた。狼が出てくるとこは、「バンパイヤ」みたいな感じにすればいいのものね。まあ、ファンタジーを映画にする場合、今はいろんな方法論があると考えさせるだけすごい。

で、あまり話の本質の部分を書いてしまうとネタバレになる。そして、この映画はそういうことを何も知らないで観るのがベストだとは思う。ということで、観る予定のある方は、この後読まないでください。

オオカミ様に集められた7人の中学生。彼らの共通点が次第にわかっていく感じがなかなかサスペンスだ。そして、観ている方も考える「パラレルワールド」という話が出てくる。ある意味、それはそうなのだが、この話は時間軸がなくなった世界ということが描かれているのが特殊なわけである。それは、現在よく言われる5次元世界の話にリンクする。過去も現在も未来も一緒に存在するという概念を最近私もなんとなくわかるようなわからないような感じになってきている。それと量子力学の話がリンクしてくると、なかなか興味深いし、「宇宙の法則」がそういうものだという概念もただのファンタジーで放って置けない世界になってきているのが2023年の今なのだ。

だから、「いじめ」という概念も、そういう世界観の中で考えれば救いもあるし出口もあると、この映画を見ると考えられてくる。そんなことを脳裏で色々巡らしながら映画を見ていたのだが、最後の時空を超えての友人たちとの再会みたいなものはまさしくそんな世界で、私的にはかなり感動を覚えた。タイムスリップした人が違う時代で再会するような話はよくあるが、ここにあるのはそれではない。時空を超えて人はまた縁を持つということである。ラストが綺麗なので余韻もなかなかのものがあった。ただ、友人の家にあった絵が謎解きのヒントになるのは少し唐突な気はしましたが・・。

また、オオカミ様の役の声をやっている芦田愛菜の存在感が映画を引っ張っていたりもする。声でここまで存在感があるのはすごいなと思った。新人、當間あみの声も悪くなかった。こういう経験は今後の女優の仕事で絶対にプラスになると思う。ここ何年かで、どう成長するのか楽しみな女優さんである。

ということで、かなりの満足した作品でした。最後に一気にファンタジー的な絵になっていくのも、作品のリズム的にはよくて、映画の構成の仕方としてはなかなかうまい。正直、新海誠監督作品よりも、数段纏まり方は上だと思ったりしています。

3月30日がキーの日になってますが、原作でこれは意味があるのでしょうか?この日は、実はこれを書いている私の誕生日で、それだけでかなり親近感を持った作品でした。



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