ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【2】その時代の女優列伝「宇能鴻一郎の修道院附属女子寮」「妻たちの性体験 夫の眼の前で今…」「見せたがる女」「未亡人下宿 髪濡らし」
1981年2月21日「江古田文化」で観た4本立てである。ロマンポルノというプログラムピクチャーは、1年から3年くらいで目まぐるしく主演女優が入れ替わった。裸になることが前提であり、旬というものがあるということだ。その点は今のAVと変わりはない(もちろん、一緒にしてはいけない)。この頃は、エースがいて、アイドルがいて、緊縛の女王がいて、エロ担当がいてというところか、そんなプログラムの合間にリリーフみたいな女優が来たり、新人のお試しが入ってきたり、そういうのも楽しみだったし、女優にファンがついてプログラムが回っていた。そういう世界をプログラムピクチャーと呼んでいた。先日亡くなった、渡哲也さんは、ロマンポルノ以前の日活アクション路線での最後のエースだった。この辺りは、今のシネコン中心の映画しか知らない人にはわかりにくいでしょうね…。
「宇能鴻一郎の修道院附属女子寮」(西村昭五郎監督)
ロマンポルノの聖子ちゃんと言われた、寺島まゆみの初主演作品である。寺島も、ロマンポルノをポップにして行った一人だと思う。聖子ちゃんよりは、近づきやすい顔であり、後には歌なども出して、劇中歌も歌ったりしている。年齢も若かったので、いわゆる思春期もの的な側面もあった。
そして、ロマンポルノに何本あるかわからない定番の宇能鴻一郎原作。まあ、原作の「私、〜しちゃったんです」みたいな宇能節は当時の男子ならほとんどが知っていた。この名前だけで興奮する人もいたのであろう。ほぼ、コメディポルノだから、頭を使わずに裸を楽しむ映画だった。という意味では、特に作品の質に拘らない作品群だ。
この作品は、女優人が賑やか、寺島の他に、三崎奈美、安西エリ、吉沢由起、宮井えりな、と綺麗どころが修道女に扮して神の前で悪いことをする話である。内容はともかく、観た絵面はよく覚えている。
「妻たちの性体験 夫の眼の前で今…」(小沼勝監督)
風祭ゆきのにっかつでの主演2作目で、これ以降、にっかつのエースとしてローテーション入り。この作品をはじめ、レイプされる役が多く、レイプクイーンの名前ももらっていた。ロマンポルノに出る以前に週刊プレイボーイなどでヌードも披露していた彼女。少し知的に見えるスレンダーな美女は80年代初頭のにっかつの顔である。そして、この作品が代表作として取り上げられることも多い。小沼監督は、綺麗な映像でいやらしく撮る演出のイメージ。風祭がレイプされたことで夫ととの仲がうまく行かなくなる単純な話だが、お洒落な雰囲気でまとめてある一本。後半、運動部の学生たちに輪姦される風祭の姿が妖艶だった。そして、風祭ゆきという人は身体が華奢な分、下着姿がすごく映えたイメージがある。声も好きでしたね。
「見せたがる女」(小沼勝監督)
風間舞子主演の猥褻度をデフォルメした映画である。風間舞子はとにかく猥褻な演技をする女優としてローテーションに入っていた。顔はきつめの今で言えば熟女に入る感じだろう。だが、SEXシーンにおいては、当時のロマンポルノの中では、極めていやらしかった。おもちゃなどを使ったシーンなども過激で印象的。この映画も、共演が志麻いずみ、北原理絵、高原リカと豊満な肉体を持った女優たちが中心。当時は、エロ本やビニール本が多くマーケットを持っていた時代、その如何わしいいやらしさみたいな世界を風間は確立して行ったのだと思う。
「未亡人下宿 初濡らし」(山本晋也監督)
現代映像企画製作の買取作品。山本晋也の代表シリーズの一本。未亡人が切り盛りする下宿で、下宿生たちが暴れるコメディ・ポルノ。もう、この時期、山本監督は、トゥナイトなどの深夜番組の風俗レポートをやっていたと思う。そんな中で作っていた割には、まだ作品の質の良い時期。この時期のママさんは橘雪子。放漫なお母さんタイプのママさんだ。そして、主演はまだまだ元気だった久保新二。レギュラーのたこ八郎のおまわりさんも出ている。そして、これ正月映画だったので、ゲストで所ジョージが出ていたりする。ママが学生を筆下ろしするシーンや、月に一度のすき焼きの食事シーンの汚さを今でも覚えている。半分、アドリブのような映画だが、活力はにっかつ本体の作品よりもすごいものがあった記憶。もう一度、映画館で観てみたいシリーズですね。
多分、この日の4本立ても結構満足して帰った気がする。異次元な世界に短時間で旅する感じは、他の映画を見る感じとは全く別の世界だったが、他では勉強できないことをいろいろ学んだ感じ、今の若い人にわかってもらえますかね?