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「Dr.コトー診療所」離島の医師がスーパーマンである必要があるのか・・・?

何故、ここで映画版を作るのか?という疑問はあった。そして、映画は最終章を迎えるのかとさえ思わせながら、最後は皆が幸せな暮らしに戻っているというストーリー。そのラストの今ひとつわかりにく提示の仕方をどう捉えるかは、観客の意思に任された感はあるが・・。この興行が当たれば、映画でシリーズ存続というのも考えているのだろうかとも思う。

映画自体は、いくつかのドラマを合わせながら、なかなか感動的にDr.コトーの無理なワンオペ診療を感動的に見せていく。それにより、命の大切さ、人を思うことにより起こされる奇跡、離島医療の厳しさ、寄り添うと言いながら、寄りかかってていいのか?そんなさまざまなことを考えさせる。そういう意味では映画的な高揚感はある作品だ。

多くがテレビドラマで馴染みのできている出演者であるわけで、その設定もわかっているから安心してみていられる感じはある。あくまでも、テレビドラマの延長線上でできている部分は致し方ないが・・・。

(この後、ネタバレあります。お気をつけください)

冒頭は、研修医として島にやってくる高橋海人と、看護師をしている生田絵梨花の乗っている船から始まる。この映画でドラマに加わる二人がドラマの中にやってくるという表現なのだろう。この辺りは、新しいドラマが始まる感を大きく感じさせるうまい導入部

そして、説明臭くなく、今の診療所の様子を見せていく。コトーと彩花が結婚したことも写真だけの説明。そして、彩花のお腹に新しい命がいることで、明るい未来に向かっている感じが画面から見えてくる。そこに、コトーにこの島を離れて離島の診療を充実させていくための仕事をしてくれないか?という誘い。しかし、島の人々はコトーがいることで平和に健康を保っている。それを見た高橋が、「これは自分にはできない」と思わせるレベル。

そんな中に、東京の医学部に進学したタケヒロ(富岡涼)が突然、島に帰ってくる。何か後ろめたい感じの彼の東京での苦悩が語られ、コトー自身には、骨髄性白血病というものが襲いかかる。ドラマとはいえ、多くの災いが一気に起こる感じはなかなか見ていて辛い感じだ。島全体が色々なことを心配する中で、台風が島を襲うというクライマックス。映画として、これでもかというくらいに、島と島の人々を苦しめることが、うまい脚本とは思えないが、なかなかこの台風のところで、いろんなものが壊れていく感じが映画的に作られているなとは思った。

とはいえ、白血病でまともな身体ではないコトーがすべての患者を救うと宣言するのは、もはや神がかっている。高橋海人がトリアージしましょうというのがまともな意見。昨今はいろんな救急ドラマを見せられる我々だが、誰が見ても、死にそうな患者がいる中で多くの命が救えるわけもない。そして、彩花も倒れ、コトー自身も倒れてしまうという、もはや地獄絵図。ここまでしても、コトーが作った「氣」なのかどうかはわからないが、死者が出ずに事が終わるのは、もはやここは天国の島である。

そんな様子を見て、高橋海人が、ひとつ大きくなり、富岡涼も、あきらめた医者の道に戻ることになるというストーリーだが、とにかく、コトーという主人公はスーパーマンすぎるわけだ。そして、離島の医療問題という提示をしながらも、こういうスーパーマン的な医者がいないとそれはできないぞという答えでは、映画としては問題が多い気がしたのが正直な鑑賞後の気持ちである。

この間までやっていたドラマ、同じ中島みゆきの曲が流れる「PICU」では、医者の無力がたびたび描かれていた。それが描かれるのも、医療ドラマには重要なことだ。もちろん、無力なことを逆手に取った「ドクターX」のような形もあっていいと思うが・・・。

とはいえ、映画の構成の仕方としてはなかなか面白く見せていただいた。もう一度観たくさせるような映画になっていた。もちろん、それは島の自然の美しさもあってのことだ。舞台は大事だということだ。

そして、新しく入った高橋海人も生田絵梨花も、なかなか良い演技で盛り上げていて良かったと思う。生田は「PICU」にも出ていたが、有望な女優に育ちそうな感じがする。声なども含め、佇まいの明るい感じが良いですね。

また、最近の柴咲コウは、さまざまな役を難なくこなす女優さんになって、本当に美しくもなったと思う。存在するだけで安心感を覚える私である。

ということで、ドラマのファンは満足できる作品だし、映画ファンという人たちにもそれなりの手応えを感じさせるものになっておりましたが、コトー先生の白血病の話を曖昧にしてしまったのは、解せないですよね。

そして、エンディング「銀の龍の背に乗って」の曲が流れるだけで、何か壮大なドラマを見せられた感じになるのは、ずるいですよね。


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