「モコミ」橋部敦子さんを向田邦子賞に導いたドラマとして、家族を考えるドラマとしてもっと語られるべきだと思う。
「モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜」の最終回をやっと視聴。観る前に、脚本の橋部敦子さんがこのドラマで向田邦子賞を受賞されたニュースが流れてきた。
橋部さん、今クールは翻訳ドラマでもある「知ってるワイフ」も担当。こちらも、最初は鬼嫁話でちょっと私は観ていて辛かったが、最後のまとめ方は、夫婦の在り方の提言のようになかなか綺麗なラストだった。こちらも、認知症の母がいたり、結果的には家族の在り方、そして一人一人の人間の生き方の提言だったのだと思う。
話を「モコミ」に戻す。最初はスピリチュアル能力を持つ小芝風花の少しライトノベル的な話なのかと思ったが、結果的には、少し壊れた家族の再生の話に帰結していて、ラストは綺麗なドラマだった。シンプルでいて、パンデミックの今に提示するにはとても良いドラマだったと思う。そういう意味で、橋部さんには心より「おめでとうございます」と言いたい感じです。
主演の小芝風花は、この少し前にやっていた「妖怪シェアハウス」もそうだが、このところ少し変わった女の子という役が多かったが、(今回も変な役か?)いわゆる美少女系のキャラを演じるのは久々にみた感じである。こういう清楚な感じの方があっているような気もするが、これだと印象が薄いのだろうなというところはあるけどね…。ただ、演技的には幅が出てきた感じであり、まだまだこれからの女優さんですよね。ドラマの中で、ぬいぐるみや花と話すシーンがなかなか良かったのだが、それよりもその力が亡くなって途方にくれる芝居がなかなか秀逸だった気はする。
周囲の家族としては、橋爪功のおじいちゃんがただ一人彼女を見守っているのがなかなかいい。そして、このおじいちゃんが、娘である富田靖子に嫌われているという設定がなかなかこのドラマの味になっていたのだろう。そう、家族内は主人公を護ろうと見守る中で、壊れている感じがうまくできているのだ。
ただ、いいお兄ちゃんを演じていた工藤阿須加がキレていくところは、いまいち描き方が、ドラマ全体のバランスからいってよくない感じはした。「うっせいわ」の曲を当てはめてくるのも、わかりやすいが、あまり心地よくなかった。ラストで俳優になるというのも唐突すぎる。花屋の水沢エレナとの恋物語ももう少し描き方はあっただろう。しかし、水沢さんは、相変わらず綺麗な方である。この人も、もっと使いようがあると思う。
最後に主人公が、木の管理の仕事をするのは、なかなか良い選択。そして、恋人として登場する加藤清史郎と、最後にめぐりあい「きっと会えると思っていた」というのは、引き寄せの力を信じるようなラスト。家族がみんな、平和な生活に帰結するのも、思いを形に変えるということなのだろう。そう、この世の中はスピリチュアルなことに満ちているというドラマだったのだ。
橋部さんの次の脚本にも期待です。