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「あの頃、文芸坐で」【41】中川梨絵、芹明香。70年代の徒花、原田芳雄や渡哲也の傍で…。

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このプログラムでは文芸地下の「あれから10年/前から後から 飛翔するロマンポルノの女たち」の中から、中川梨絵「㊙︎女郎責め地獄」「竜馬暗殺」、芹明香「㊙︎色情めす市場」「仁義の墓場」の4本を見ている。こう、並べると、濃い傑作4本だと思う。

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まずはコラム。クリント・イーストウッド主演「ダーティーファイター・燃えよ鉄拳」の中の音楽の話。私も、洋楽というものに疎いわけだが、映画を見続けているおかげで、普通の人よりはいろいろな知識はある。映画の中で未知の音楽と遭遇することは、今でも快感だったりはする。しかし、今年90歳になる、イーストウッドは、この頃、50歳になったばかり、激しいアクションを演じながらも、長生きし、いまだ現役の彼に驚嘆している今日この頃だが、それを感じられるのも映画を見続けている醍醐味か?

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文芸坐は、SF二本立ての後、ウディアレンの二本立て。「アニー・ホール」でアカデミー賞を獲った後、日本でもウディ・アレンの映画はこんな形でよくかかっていて、それなりの影響力はあったのだと思うのだが、こういう観点の小洒落た映画を撮れる人って、いまだ彼だけな感じがしますよね。今年観た新作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」も、なかなか素敵な恋愛映画でした。そのウディ・アレンも今年85歳。映画に歳を感じさせないのはすごいです。

文芸地下は「わるいやつら」「震える舌」という、野村芳太郎監督の2本立て。あれから、40年経っても、話題になることが多い野村作品。個人的にはそんなに評価していないのですが、原作の強さと、それなりの役者で作られているからでしょうね。

オールナイト「日本映画監督大事典」は鈴木則文監督の2回目では、「トラック野郎」の5本立て!この5本の中では、最終作の「故郷特急便」が好きかな?「男はつらいよ」の亜流であることは確かなのですが、私はこちらの方が好きです。こういう特集、今でもシネコンでたまにやればお客さんくると思うんですけどね?どうでしょうか?

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この当時、古いロマンポルノの傑作というものをまだあまり観ていなかった。ここで強烈な2本を観たのは衝撃だった。そして、この特集で一緒に観たメジャーの映画もいまだに目に焼き付けられている。

「㊙︎女郎責め地獄」(田中登監督)

中川梨絵という人は、雰囲気が、人間離れしていた記憶がある。ここでは、死神おせんと呼ばれる、相手をすると死ぬと言われる女郎の役である。そして、人形浄瑠璃の人形を演じるというシーンが印象的だった。女優人生は子役からということもあるが、スクリーンに強い存在感を残した人だ。

「竜馬暗殺」(黒木和雄監督)

前回、書いた「祭りの準備」と共に黒木和雄監督の代表作だと思います。16mmで撮られた荒い画面が、幕末感を出している。そんな中で竜馬を演じる原田芳雄が殺されるまでの話。中川梨絵は、質屋に囲われている女の役。竜馬に色目をつかう姿はとても印象的であった。こんなイメージで娼婦的な役をできる女優は今いない気がする。久々に観たい一本ですね

「㊙︎色情めす市場」(田中登監督)

私にロマンポルノベストワンは何か?と問われたらこの映画を推すると思う。それくらい、衝撃的だった。自堕落で身体を売ってしか生きられない芹明香の演技の有機性にただ飲まれた。それに対するような宮下順子の姿も印象的。とにかく、当時の西成近辺をモノクロで撮り、高度成長の中に取り残されたような人々が、蠢く世界観。ラスト、カラーになって、村田英雄の「王将」が流れる中、通天閣が印象的にスクリーンにそびえる。こんな映画、2度と撮れないと思わせる凄み。その主役としての芹明香もまた、日本を代表する娼婦をリアルに演じられる人だった。この映画、今のコロナ禍で観ると、様々なこと考えられる気がします。

「仁義の墓場」(深作欣二監督)

渡哲也が亡くなって、この映画について語るのもまた運命か?「無頼シリーズ」と同じ藤田五郎原作だが、こちらは、反社会の中でも手に負えぬワルを描いたもの。渡は、それをリアルに演じる。実録映画と言われるにふさわしい映画。愛人の多岐川裕美も旬の頃。彼女の骨をかじる哲也の気持ちが悲しい映画だ。そして、娼婦役の芹明香も深作映画にぴったりの女優だった。ラスト独房内に残る「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」。映画を観た男たちに様々なものを想起させる。

関係ない話だが、中学生の頃、エロ漫画雑誌に出ていた、芹明香のヌードグラビアに萌えたことがあった。彼女は性の目覚めの中の一人でもあったりする。だから、同じ頃に観た神代辰巳監督の「青春の蹉跌」の中で「10円頂戴」とショーケンに絡む芹明香をすごくよく覚えている。

中川梨絵、芹明香、日本映画女優志を語る上で、決して忘れてはいけない二人だと思います。



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