ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【24】風祭ゆき、寺島まゆみ、美保純、80年代初頭のエース3人
1982年2月27日、池袋北口にっかつで封切りを見にいく。「ズームアップ 聖子の太股」「闇に抱かれて」「ポルノ・ドキュメント トルコ特急便」の3本立て。ある意味、正統派が押す美女三人の主演作ということもあり、映画館に行ったのだと思う。
その2日前には、シネマスクエアとうきゅうで、開館第2弾となる「モスクワは涙を信じない」を見ている。この映画は、アカデミー賞で外国語映画賞を獲った作品で、主題歌が今もすごく耳についている。ぜひ、もう一度見たい作品の一つだ。そんな、アカデミックな雰囲気を感じた2日後にロマンポルノを楽しく見ていたのだから、まあ、混沌とした青春時代である。
「ズームアップ 聖子の太股」(小原宏裕監督)
この当時、アクションカメラブームというのがあった。いわゆる、盗撮を趣味にするカメラ小僧の出現だ。それを推奨するような本がベストセラーになっていたり、盗撮を載せた雑誌も多くあった。今では考えられない状況だった。まあ、会社でのパワハラ、セクハラは、そういう言葉も持たずに当たり前の行為として存在していたし、それで自殺する人もいたが、今ほど前に出てこなかった。大体、過労に関しても、知ったこっちゃ無かったものね。ただ、今ほど一年中水着のグラビアが氾濫している時代でも無かった。その辺りは、それなりに線がひかれてあったことは確かであると思う。
そんな中で、ロマンポルノの聖子ちゃんである、寺島まゆみで「聖子の太股」というキャッチの中、シリーズができた。その一作目である。まあ、時代の流れの中、それなりにエッチなものを期待をしながら見に行ったがあまりこの一作目は面白く無かった記憶がある。
話は、カメラ小僧が愛する女の子をカメラで狙い続け、最後には結ばれる話。脚本は金子修介。主人公の男は上野淳、そして、女優は、寺島の他に岸田麻里、山科ゆりという綺麗どころ。そういう意味では、今見返しても、懐かしいだろうなと思ったりもする。まあ、寺島まゆみの主演のものは、ほぼコメディなので、傑作というものは少ないのだが、寺島が女優としていたから成立した企画であり、そういう意味ではすごく時代を感じさせる作品だと思ったりもする。80年代の研究をする方は、この辺の作品は絶対に見るべきだと思います。
「闇に抱かれて」(武田一成監督)
武田一成監督のこの周辺の作品は結構好きである。音楽は、皆「おんなの細道濡れた海峡」と同じものが使ってあったと思う。その音楽を聴くと、刹那さが蘇る感じがいい。ここでは、風祭ゆきと夏麗子が友人で同居しているという設定。そして、男関係が活発な夏と、奥手の風祭という設定がなかなか印象的で、男関係のもつれから二人が三宅島に逃れて、人生をやり直すような話だったと思う。三宅島は1983年に大爆発を起こしており、その前年に撮られたということでも貴重なフィルムなのかもしれない。どちらにしても、風祭ゆきの作品の中でも好きな作品の一本だったりする。
「ドキュメント・ポルノ トルコ特急便」(中村幻児監督)
これは、ロマンポルノではなく、買取作品である。美保純は、デビュー作も買取だが、単独主演二作目のこの作品も買取ピンク作品だ。つまり、まだ当初はそれほど期待される女優では無かったということだ。というか、安っぽいイメージがあったのだろうか?その彼女がいまだに女優をやっているのは、本当に不思議な気がする。それも、雰囲気、ほとんど変わってないんですよね。すごい。この映画も内容はあまり覚えていないのだが、当時でいうトルコ風呂が舞台だったのだろう。そして、個人的にも作品には満足した記憶がある。まあ、美保純の愛らしさは、寺島まゆみなどと全く違うものがあった。そして、監督はこの年の秋には「ウィークエンドシャッフル」でメジャーデビューも果たす中村幻児監督。まあ、油が乗り切ったこの頃の彼の作品は、そんなにつまらぬものは無かったと記憶している。
結果、三人の女優の主演作を見て満足して帰った1日だったのではないか?そう、ロマンポルノって三本ちゃんと見ると3時間半弱あるんですよ。そういう無駄な?時間を多く費やしていた学生時代だったわけですね。それに比べ、授業の90分は長かったですよね。
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