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「不要不急の銀河」。エンタメを作りたい気持ちがいろいろ現れた2020年のドラマ

23日の夜、NHKで放送されたドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」は今、エンタメが直面している状況をドキュメントとして提示しながらも、出来上がったドラマは、結構、密で骨太のものに仕上がっていた。テーマソングに、中島みゆきの「ファイト」を使っていたのは、とてもわかるし、日本の底辺で、こんなことがいっぱい起きてるんだよ!という叫びがちゃんと入ったドラマとして時代性を帯びた作品だった。

又吉直樹の脚本は、世の中で起きている不安定な事実を結構満遍なく仕込みながらも、最後は、不死鳥のように、底辺の不要不急な世界が蘇る願望を明確にして、よく纏まっていたと思う。

ドラマ作りは不要不急なのか?エンタメは不要不急なのか?と関係者はいまだにモヤモヤしている状況である。そんな中で、舞台でクラスターが出たり、芸能人もまた感染者が増えていたりする。原因はそれなのかはわからないが、自殺者が出たことでも、この世の中の不穏さは作り手に大きなダメージを与えていることは確かである。コロナ前の状況には戻らないのだろうと思う。

そして、撮影現場で話されていたが、医療関係者にOKを仰ぐのではなく、作り手が、この作り方なら、無理がなく感染につながらないという方法を見つけてやっていくしかないと思うのだ。医療関係者が中で、「ディスタンス1mで15分以内で撮影を追える状態じゃないと危険度が増す」という話をしていた。ドラマ作りではなかなか難しい時間制約である。そして、マスクをしたままでのリハーサルは役者の表情が読み取れないというのは確かである。最近は街を歩いていても、人間が歩いている物体にしか見えないし、マスクをしている女性に恋することもない。外での人間のドラマが本当に減っているのだ。これも、世の中の経済が回らない理由だと思う。

あえて「夜の街」のスナックを舞台にするのは、NHKも攻撃的である。「コンビニより多いスナックが不要不急のはずはない」とリリー・フランキーが話していたが、その通りだと思う。酒の席、夜の街で歴史は作られている。だから、安倍晋三も会食をするのだ。それなのに、それを悪者にしてどうする!国を挙げて、夜の街の感染防止をして、夜の商売から活性化させるくらいのこと考えろとも、このドラマを見て思ったりもした。

そう、無駄な場所で、無駄な時間を使って、無駄な金が落ちる「夜の街」が動かなければ、世の中は動かないと思いますよ!最後に、休業中のスナックで大騒ぎする家族の気持ち、わかる人は多かっただろうな。又吉さんは、本当にダメな人間たちを描くのはうまいですよね。そして、そんなダメさを愛しているのがわかる。鈴木福がキスにこだわるのもわかるし、こんな高校生は今いっぱいいるでしょうね。「最後の夏が過ぎていく」と思っている高校生の気持ちは理解できる。国はGoToラブホテルもやらなきゃね。

ニューノーマルとか言って、世界が健全になるわけではないと思う。エロい産業はもっとエロを求めるし、ライブハウスには、もっと人が、多額の金を落としても通うようになるかもしれない。新しく生まれるエンタメはさらに激しく人の射幸心を煽るものなのかもしれない。コロナウィルスと戦いながら、私たちはどこにいくというのだろうか?

本当にカオスな中で、闘い、生き残ったとしたら、思いっきりスナックで暴れたいと思えた、このドラマでした。NHKさん、いい仕事ですよ、これ!


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