「あの頃、文芸坐で」【17】松田優作の鼓動が日本映画に走り出した頃
少し時が飛ぶ。1980年の夏休みである。そこで最初に観ているのが「処刑遊戯」と「蘇る金狼」である。時に映画界は、松田優作の時代になっていったと言ってもいい。東映と角川が彼をうまくスクリーンで使ったおかげで、彼は今に残る伝説になったと言っていいだろう。
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コラムは、鈴木善幸が首相になった話。大平正芳が急死して、棚ぼたのように総理になった地味な人だった。しかし、鈴木善幸で、鈴木貫太郎を思い出すという人が、社会の最前線にいた時代だったのだと思う次第であります。(古い話だということです)。毎年開催されていた「社会を告発する」という特集への想いは、今の政治家たちの比ではなかったことがよく分かったりします。本当に、世界が平和でありますように祈るだけです。
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文芸坐は「スーパーSF世界特撮映画大全PARTⅢ」ということで、夏休みらしいラインナップ。中に「ゾンビ」というのがありますな。1978年の公開の映画。この映画でゾンビというものを知って、今に至ります。この前もジム・ジャームッシュのゾンビ映画観ましたが、この存在は、リアリティがない怖さというか、面白さというか、すごい映画的なネタだと思います。
そして、その後が「ザッツ!!カーアクション!!」ということで、車映画特集。今年も「フォードVSフェラーリ」が公開されましたが、一時期に比べ、このジャンルはあまり盛り上がってないようですね。日本でも若者のクルマ離れとか言われておりますが、世界的にも産業としてイケイケではないからでしょうね?アクション映画でクルマを邪険に扱うシーンも少ないですものね。
文芸地下は優作二本立ての後に、「日本怪奇映画特集」。結構、今では観ることができない映画が並んでいる(というか、名前も知らない作品が結構ある)。中に、岸田森のドラキュラ映画がありますが、最近アマプラで観られるようになってるんですよね。時間ある方は観ていただいた方がいいかも?こういう日本映画もあるということです。
そして、終戦の日の周りは、恒例の「社会を告発するPARTⅢ」。本当にこういう企画ができる社会であり続けて欲しいと同時に、本当にそれが必要ない社会になるといいと思います。
そして、オールナイトは「真夏の夜のフィルムコンサート」。生のライブが観られることが極端に減る今年の夏。こういう企画、シネコンで爆音でやれば、結構入りそうですよね。みんなが歌わなきゃいいのだからね!というか、このプログラム、そのままやっても客入りますよね。ビデオなき時代には、結構、こういう映画作られていたんですよ。特に観たいのが、映画「キャロル」なんですよね。封印されたままの作品。矢沢永吉が、生きるためにライブ配信始めるという話がありましたが、是非、こちらも配信していただきたい。そうそう、キャロル出演の「番格ロック」なども、DVD発売でトラブって封印されたままですものね。なんとか…。
そして、ル・ピリエは映画ばかりですね。映画館で普通に上映できないものをここに持ってきてる感じは、ある意味、贅沢です。
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そして、この日見た、松田優作の二本。浪人とか長くしていたもので、出世した彼の主演の映画を劇場で観るのはこの時初めて。「処刑遊戯」は、B級感が心地よい映画ですよね。森下愛子も、この辺りが一番新鮮だった気がする。優作のアクションは、ある意味荒削りなのだが、それほど意外性はないという感じがした。ショーケンが、優作のことを「俺の真似ばかりする」と著書で記していましたが、確かに最初の頃は、大きな肉体そのものがウリで、もう一つオリジナリティはなかった気がします。
「蘇る金狼」は、角川映画ということもあり、それなりに金がかかっているが、村川透監督が金の使い方がイマイチ認識されていないような印象だった。でも、風吹ジュンとの絡みとか、すごいアクション映画でしたけど…。あまりクールに仕上がってなかったんですよね。ただ、前野燿子の枯れたテーマソングだけが耳に残っています。私的には、次の「野獣死すべき」で優作の俳優に対する取り込み方が変わった気がしています。つまり、この二本などは、その序章だったのでしょう。でも、大藪春彦の小説のファンからは、どちらも不満だったという話しか聴きませんでした。
とはいえ、この時代を振り返れば、松田優作のそんな不器用で無理やりなアクションが日本映画のアクションとして受け入れら始めたということです。同じ時代に本当にアクションを極めて行った千葉真一門下の真田広之などと対比して考えると、この時代、日本のアクション映画の土壌が、少し違くなっていくのを感じますよね。
当時の私の映画鑑賞リストみると、この1週間後に「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」を新宿プラザで観ているんですよ!そっちのアクションと比べると、やはり、松田優作は日本のアクション俳優だなと思いますね。
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