「BLUE GIANT」日本の映画史上、最高の音楽劇と言っても良い出来栄え
原作は石塚真一のコミック。その存在は知っていたが、読んだことはなかった。その映画化。原作はシリーズとして今29巻出ているらしいが、その10巻までの話をまとめた映画だということ。漫画本の10巻を2時間にまとめるということは、かなりの物語を削除する形になったとは思うが、映画の出来は、なかなか良かった。というか、ジャズをしっかり聴かせてくれたことがこの映画の最高の力になっているのだと思う。
私は、予告編を見て、これは音楽を楽しみにいく映画なのだろうと勝手に決めていたため、ドルビー・アトモスの上映回に観に行く。そして、それは大正解だった。今の技術でやると、映画館の音でこのくらいのライブ感覚のものが作れるのかと、少し感動さえ覚えた。
とにかく、話がシンプルなのがいいのだろう。仙台から東京の出てきたJAZZを愛し、自分の音に自信がある主人公が、同じ歳のピアノの名手にあい、「組まないか?」と誘い、そして、田舎の同級生の初心者を無理やりドラムに誘う、その3人が東京で10代のうちに一つの目標を果たす物語だ。
考えれば、昨今の10代は、このエンタメ業界で大きく目立つようなことは、昔に比べたら少なくなってきた気がする。そして、10代のうちにこれをやろう的な夢もあまり聴かないような気がする。そんな中で、こういう青春譜を見せられて「自分も」と思う人が多く出てくるなら、それはとても望ましいことだと思う。世界は若者たちが強い欲望を持つようなものでないと面白くないし、そこに辿り着くまでの若い努力はやはり、こう見せられると熱いものに繋がる。
また、男3人の話の中に、いらない恋愛話みたいなものが入って来ないのもまたいい。あくまでも、この映画の主役はJAZZであり、それを愛する人なわけで、それ以外の愛の物語は必要ないということなのだろう。
そして、上原ひろみが担当した、この映画の肝になる音楽は思った以上に良かった。主役のテナーサックスのイメージを上原氏なりに解釈して作られたものだとは思うが、なかなか力強く、、エグミのある感じが独特で、観終わってサントラを聴きたくなるものになっていた。そして、それを映画館でここまで表現できるのかという、今の映画環境は本当にすごいと思います。まさに、映画館がライブハウスになっておりました。
あと、アニメとしては、CGや、実写からの動きの転写みたいなものもあり、いろんな方法でジャズを体感させたいという思いは伝わったが、少しテイストや画のリズム感みたいなものがスムーズに感じないところがあり(わざとそうしたとも考えられるが)その辺りは、もう少しまとまりが欲しかった。でも、ジャズ奏者の動きとかすごく研究はされてますよね。
そう、これは題材的には実写でも撮れるものだが、だがそれだと、今の日本映画の構造の中では、この映画の感動が半分以下になるだろう。大体、昔から、日本映画は音楽劇が下手だ。ミュージカルなど見られたものではない。そんな中でアニメならここまで作れるということが分かっただけでも私は満足だし、ここまで見せられたら、やはり続編は作って欲しいですよね。
土曜の午前中の劇場はほぼ満員であった。これがヒットすることで、ジャズを聴く人が増えるのはそれは儲け物だろう。そして、思ったのだが、音楽を売るために映画を作る企画がもっと出てきてのいいのではないかとも思った。今の映画館の音響を使わないてはない気がするのですよ。