「その女、ジルバ(第10話)」X年後の馬鹿騒ぎに胸をときめかせながら…。
最終回は、2020年10月から始まる。コロナ禍になり、「オールド ジャック&ローズ」も見事な閑古鳥。店を閉めることになるが、そんな話をしているところに、江口のりこの出産が始まる。一つの店が終わろうとしているところに、新しい命が生まれるという、ある意味ベタだが、それなりの希望を伝えるファーストシーン。
こういう感じで、コロナ禍の現在を描くのは、このドラマにとっては必然だったのだろう。戦争でさまざまなものを失ったジルバというママが育てたこの店は、まさに苦難の中から生まれた生きる場所だったのだから。それに比べたら、今のコロナ禍など苦難でもないかもしれない。生活するところはそれなりにあるし、物はそれほど失っていない。失ったものは、金と、仕事の量と思いやりのある心か?そう、上部に施した現代の見栄みたいな化粧が全てはげ落ちた感じはする。
そんな時代だから、このドラマで描かれた心のふれあいは尊かったのだ。過去に後悔しながら、ただ、毎日を過ごしていた池脇千鶴が、この店に出会ったことで、生まれ変わる話である。会社で愚痴ばかり言っていた同僚や上司ともいい友達になったりする。「気」はその人の周囲の環境を変えていくという話なのだと思う。そこに、人生を達観しながら楽しむお姉さんたちの心がかぶさり、「世の中捨てたものではないな」と思わせる土曜日の深夜のドラマだった。そう、この時間帯にやることも大きかっただろう。
ラストは、ブラジルからのジルバの親族の話が送られてきて、それに鼓舞されて、東京に戻る池脇の姿が、簡略的に描かれる。そう、ここはそんなにドラマチックでなくていいのだ。「呼ばれる」という感じで、一度閉めた店は復活するという感じで…。
そしてX年後、という表記は、現在、まだまだパンデミックを抜け出せずにいる我々に希望を与える。政府の無能さで、なかなか出口が見えない日本ではあるが、「X年後」には、こんな馬鹿騒ぎをしていたいねという希望を与えながらドラマは終わった。
最後に、草笛光子が人生300年生きるというようなことを言い出す。そう、無限に希望を持ちながら、ステキに老いて言って、楽しむ時間は今より多くならなくては、未来ではないのだ。人生の楽しみ、喜びは右肩上がりであっていい。アフターコロナは、確かに物欲の時代ではないかもしれない。昔のような飲み会をするような時代でもないかもしれない。でも、心から多くの人と付き合い、楽しみつづけられる時代であって欲しいと思う。心から強いパワーを感じて、華やかな共同体が作れる時代を望んだりするのだ…。
2021年初頭にあって、ステキなファンタジーを見せていただいた気がする。スタッフ、キャストのみなさま、良いドラマをありがとうございました。
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