ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【11】山本晋也監督の反社会性「セミドキュメント 覗かれて濡れる」「女子大生 痴漢のすすめ」「好色透明人間 女湯覗き」
1981年8月31日。多分、残暑厳しい日だったのだろう。そんな日に、牛込文化に山本晋也監督の3本立てを観にいく。監督は最近は風俗レポもやっていないが、この間、NHKのドラマ「太陽の子」に出演していましたね。これを観た当時はもうテレビのトゥナイトのレギュラーで、深夜テレビでは有名な存在だったが、まだまだ監督として映画も撮っていた頃。これから2、3年後には、映画の現場よりテレビを優先しているなどの悪口も聞こえてきたが、この頃はまだそれなりに反社会性を含んだ映画を撮っていたと思う。後にも先にも山本晋也特集というのを観に行ったのはこの時だけだと思う。
「セミドキュメント 覗かれて濡れる」
3本とも、ピンクの買取作品である。ということで、今になると資料が少ない。正直いって、3本とも記憶がほぼない。ただ、当時の私の評価では、この映画が最も面白かったようだ。主演は、にっかつ作品にも出演していた夏麗子。上の写真の女優さんだ。トランジスタグラマーというに相応しい人だった。そしてチャーミングでお芝居もできた人なので、私的には結構好きだった。あと、水月円が助演で、野上正義と久保新二の両名が揃い踏みだったようだ。山本晋也監督の時の久保新二は特にめちゃくちゃな芝居をしていて、ある意味、体裁なんてどうでもいい、これぞピンクという芝居を見せてくれたのが印象的。とにかく、そのパワーはこの時代のものだと思う。今の芸人もそうだが、何かに気を使って寸止めする限界点があまりにも甘いと思う。その点、山本晋也監督も久保新二も、映画の中ではここまでやっていいという限界を突破すべく、映像を作っていた気がする。これからのYouTubeも、そういう点に進むべきだと私は思っている(エロではなくてね)
「女子大生 痴漢のすすめ」
こちらは、今も経済株式評論などをしている、木村佳子氏主演の映画である。まだ、オールナイトフジは始まっていないが、世は女子大生ブームといってよかった。木村氏はトゥナイトなどにも出ていたと思うから、そういう縁でこの映画が作られたのだろう。助演は竹村祐香、野上正義、たこ八郎。たこ八郎の仕事を観たかったら山本晋也監督作品を見ることがとても有効である。まだ、この頃、テレビで知られる顔ではなかった気がする。まあ、変な役者だが、印象深い人だった。赤塚不二夫の漫画の中の「レレレのおじさん」みたいな存在だったよね。作品としては当時の私の評価ではつまらなかった映画だったようだ。
「好色透明人間 女湯覗き」
女湯覗きはピンク映画のイベントのようなものだった。まだ、当時は少なくなっていたとはいえ、銭湯は多かった。まだ、風呂なしアパートが存在した時代だ。そして、透明人間ものには、絶対に必要なシークエンスだった。考えれば、馬鹿な話であるが…。この映画は前回書いた、朝霧友香主演、野上正義とたこ八郎も出ている。まあ、内容はくだらない話だろうからどうでもいいが、アマプラでレンタルできることを見つけてしまった。見るひとはそれなりにいるんでしょうね。
山本晋也監督作品は「未亡人下宿」以外あまり内容を覚えていない。ただ、ロマンポルノが求めていたコメディとは全く違ったアナーキーな感じが気持ちよかった。だから、後ににっかつで作った山本作品は全く面白くない。まあ、テレビの仕事が忙しく、ちゃんと撮っていなかったとは思うが…。そして監督がテレビで活躍していた頃は、まだテレビは画質が悪かった。今だったら、風俗レポを映画館で公開することも考えたでしょうね。今、AV以外でそういう方面に突っ込んでいく映像作家いないものな。そう考えると山本晋也監督は貴重な存在だったのだと思う。
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