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「一度死んでみた」オールスターのレクリエーションとして成立するフジテレビ映画。

この映画、クリスマスの出来事の映画である。そういう意味で、年末から正月に公開しないといけない映画だろうと思う。最初はそう考えていたのが、そうできなかったという言い訳も聞こえてきそうだが、そのあたり、最近の映画界は季節感がなさすぎる。映画館で映画を観る者としてはやはり寂しい気がする。

まあ色々な人に声かけて出演してもらっている。役者さんの顔ぶれ見てるだけでも楽しいが、もちろんのことアナウンサーからプロレスラー、宇宙飛行士まで出してしまう力は、弱くなったフジサンケイグループでも、これだけまだ余力はあるぞと誇るような感じさえした。

そして、主役陣は、広瀬すずのメタルロッカー、吉沢亮の存在感のない男という実際とはかけ離れた役柄がうまく生かされ、こういう軽いノリは結構好きなのだろうと思われる堤真一を軸に、「もうれつア太郎」のような死者とリアルが共存する世界で、悪ふざけてんこ盛り。もう、時空が壊れた中で様々な硬い話題も人情も利権問題も詰め込んで結構面白かった。

監督、脚本がCMクリエイターということで、パートパートのシークエンスの力は、昔の「ゲバゲバ90分」的な羅列でやりたいことはわかるのだが、最初の方は、どうもリズム感がイマイチ。加速がなかなかついていかない感じがした。ラスト30分くらいの葬式以降は、前振りしておいた伏線の回収が次々に行われるのもあり、すごく面白く、オチの松田翔平には笑ってしまった。

そう、くだらない話なのだが、リズムよく持っていけば大傑作になった感じがするのがもったいない。CMクリエイターの性(さが)か?長尺のリズムの割り振りや、導入部の作り方が下手すぎる。最初15分くらい、もっとバカやってる感をだし、スピード感持たせていけばいいのにと本当に思う。こういう題材、上田慎一郎監督に撮らせたらうまそうだと思った。

スイヘーリーべに始まる歌や、原子番号クイズはなかなか渋いところをついている。原子番号覚え直したくなった。(絶対に必要ないだろうが)薬の名前が「ロミオとジュリエット」というのも洒落ているが、これはロミオはどうでもよくて、死んで生き返るジュリエットが使いたかったのよね。

音楽も、最初の方でもっとテンポを上げるために考えた方が良かった感じもする。メタルは好きなので、映画館の音響で聴くには最高なのだが、その余韻が消えないように間を作らずにいろいろ鳴らして欲しいのだよね。そう、物足りないのだ!ただ、三途の川を渡るボートのバックに「モルダウ」が流れるのはすごく良かった。私があそこを渡る時にも、是非、流して欲しいものである。

なんだかんだ言っても、フジテレビ制作のスター慰安会みたいな作品で、妻夫木聡なども楽しんでるのがよくわかるのがいい。木村多江が「ここよー!」と叫ぶ3Dホログラム、こういうの売ったら売れますよね。さすがCMクリエイターだけあって、こういう小道具や、ネットの使い方などなかなか参考になることも多かった。

主演の広瀬すず、決してデスメタルの格好が似合ってはいないし、少しボーカルの姿も無理があったが、蹴りの綺麗さなどをみると、彼女で女子プロレスものを一本作って欲しいと思った。もちろん、ヒールの役で。なんか、面白いもの作れそうなんだけどね…。

吉沢亮は、綺麗な顔もまともに見せずに存在感のない役という、来年の大河ドラマ主人公に失礼な役どころ。その、存在のなさは十分演じられていたが、もう生涯彼にこういう役は回ってこないであろう。そういう意味でレアな演技として残る作品になるかもしれん…。

その彼が酒で荒れて、連れてくる加藤諒、率いるオタク軍団みたいな無駄なものを映画に埋め込む感じはフジテレビらしくもあり好きである。しかし、加藤諒には他のテイストの役は回ってこないのかね?

ということで、最初にも書いたが。これは「正月映画」のおめでたいノリなのである。そこを楽しめれば、映画館でみる価値ありというか、映画館で見なければいけない映画なのだろう。

ある意味、見えないものに何か陰鬱になっている皆さん、みると心晴れますし、生きる力も湧いてきますよ!気晴らしに映画館に行ったらいかがでしょうか?というか、もう少しタイトル考えろよ!



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