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「ドロステのはてで僕ら」良いショートショートを読んだ後の心地よさを感じる、意欲作。ただ、「面白いよ」と勧めたい一作
ヨーロッパ企画の映画では「サマータイムマシンブルース」が好きである。伏線のかけかたも、連れて行かれる時空もとにかく楽しい映画である。そして舞台が学校なのが良かった。そのヨーロッパ企画製作のタイムマシンもの?と知れば観ないわけにはいかなかった。
とにかく、発想が面白い。2分未来を見ることのできるテレビにより、興奮する人々の物語である。多くの人に観て頂きたい映画なので、それ以上のネタバレはあまりできないが、映画「1917」に挑戦するようにこれワンカット映画なんですよ。最初にメインタイトルが入るから2カット映画ですかね?
そして70分間、もはやあなたはこの変な世界に巻き込まれていく感じ。流石の上田誠脚本なのだが、監督・撮影・脚本の山口淳太という人がまたなかなかのイカれた人のようだ。メイキングを見ると、撮影のほとんどはスマフォで行われている。小回りが利くという点ではワンシーンワンカットムービーにはなかなか機動力を発揮する代物である。だが、製作期間10日と言っているから、実際はワンカットのわけもなく、編集の妙は素晴らしい。ほとんど切れ目がわからないレベルである。
役者陣はヨーロッパ企画の一筋縄では行かない面々がチームワークよく移動の連続劇をうまく仕切っている。そしてマドンナ役?の朝倉あきもうまく馴染んでいる感じで、観ていて楽しい感じは本当に70分を観客に飽きさせない。
舞台は5階建?のマンションのみ。そこを登ったり降ったりするので、舞台劇を立体化させた感じではある。上田脚本はやはり映画を意識して、舞台で表現できない舞台みたいなものを構築して行ったのであろう。だが、問題は時間軸である。2分ずつで話が繰り返すみたいな初めから、どんどん時間軸が観ているものにもよくわからなくなっていく。観ていて「これであっているのか?」さえもよく理解できない自分に苛立っていたりもした。
そう、結構、突っ込みどころは満載なのだ。「これって未来がわかったって偶然が絡んでるよね?」みたいなこともある。だからこの世界に入ったものは、無理やり、タイムパラドックスが起きないように嘘をついたりもする。そうすると、歴史って何?みたいな部分もある。そういう、混乱をエンタメにするうまさは凄い。そしてよくまとまっている。
本当に、とてもキレの良いショートショートを読んだような鑑賞の後の余韻があった。映像の世界にはまだまだ試していないことがある。デジタルでの撮影編集は、なかったものをアリにしていく。時間軸もそうだが、あらゆる時空をいかにでも操作できるのが映像世界と言える感じになってきているのだ。まだまだ、新しい才能がやってくるような予感がするが、今日はこの映画がにあった幸せがあった。
最後に出てくるタイムパトロールを本多力が演じていたが、彼は「サマータイムマシンブルース」でも未来人の役をやっていましたよね。上田誠はあくまでも未来は野暮ったく見せたいのでしょうか?
そうそう、本多力で思い出したが、彼の出ている、やはり上田誠脚本のドラマ「浦安鉄筋家族」はいつから再開になるのでしょうか?待ち遠しい限りです。
しかし、この時間軸の使い方、上田誠の天才的な仕事に本当に刺激を受けた今日でしたが、本当に多くの人と観たかった。今日は開場したばかりのTOHOシネマズ池袋で200キャパのスクリーンの中で数人のお客様で見させていただきました。贅沢!いや、もったいない!これは映画館で多くの人と観ることで盛り上がる映画ですよ!