これは俺が昔体験した少し奇妙なお話
9月上旬
時計の針はちょうど夜10時をさしていた
俺は1人、バーでグラスを傾けていた
するとそこへ
1つ空けた隣の席に綺麗な女性が座った
真っ赤なマフラーをしているのが特徴的だった
少し肌寒くなったとはいえ
まだまだマフラーは早い
不思議だった
声をかけずにはいられなかった
「すみません、よく来るんですか?」
「…えぇ、...たまに」
「冷え性なんですか?ここ、そんなに寒いかな」
「あぁ、マフラーですか?よく聞かれるんです。そうですね、まぁ、はい」
彼女は理由を教えてくれなかった
ますます興味がわく
「まさか先月もマフラーしていたわけじゃないよね?」
「してましたよ。1年中してるの」
「そんなバカな!ハハハ、君、面白いね」
「ウフフフフ」
彼女の笑顔はとてもチャーミング
品もあるし、俺はどんどん彼女に惹かれていった
「隣、いいですか?」
「どうぞ」
俺は彼女に数々の質問をした
ほとんど何も教えてくれなかったが、それでも楽しかった
なんだろう
何かこう、フィーリングが合うというか
初めて会った気がしなかった
「俺たち、昔から知り合いみたいな気がする」
「私も。楽しいです」
「良かったら、俺の家近いんだけど飲み直さない?」
「あら、お邪魔しようかしら」
俺の誘いを快く引き受けた彼女
部屋に入ってもマフラーを取らなかった
「まだマフラー脱がないの?」
「えぇ、駄目なの?」
「まぁ、いいか」
さすがに気になったが
嫌われたくなかったので、それ以上は何も言わなかった
お酒もすすみ、2人ともほろ酔い気分
そして
ベッドへ
「君は、すごく綺麗だ」
「まぁ、ありがとう」
「….キス、してもいいかな?」
「….あまり、私には深く関わらない方がいいわ」
「なんで?」
「世の中には知らない方がいいこともあるの」
「なんだよそれ。俺はもう君に惚れたんだ。俺のこと、嫌いかい?」
「いいえ、好きよ。私もこんな気分初めて」
「じゃあいいじゃないか。何がいけないんだ?」
俺は彼女のマフラーをやさしく脱がそうとした
「やめて!!!!」
「…….え?」
彼女は突然叫んだ
「ご、ごめん….このマフラー、何かあるのかい?」
「あなただけには言うわ。このマフラーの秘密。でも1つ約束してほしいの」
「な、なんだい?」
「私の秘密を知っても、嫌いにならないでくれる?どうやら私、あなたのこと、好きなの」
「もちろん。絶対に嫌いにならない。約束するよ」
「わかったわ。あなた……ろくろ首って知ってる?」
「ろくろ首…あの、首が伸びる妖怪…...?」
「そう。知っているなら話が早いわ。私がその、ろくろ首なの」
「…..ハハハ。そんな…...嘘だろ?」
「嘘じゃないわ。私、このマフラーがないと首が伸びてしまうの。キツく巻いて伸びるのを止めているのよ」
「そんな、信じられない」
「そうよね、実際に見たらわかるわ。あなた言ったわよね、私の秘密を知っても嫌いにならないって」
彼女はそう言いながら
マフラーを脱ぎ始めた
「もし嫌いになったら、
ゆ る さ な い」
言い終わると同時に
マフラーを脱ぎ捨てた
「う、うわぁぁあぁ!!!!!…....…..え?」
確かに
彼女の首は伸びた
だが伸びたと言っても
首長族くらいの
5センチくらいだったので
結局
いけた
いやぁ
今では少し首の長い子供が3人います
伸代に出会えて、本当に良かったです