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【海外ボランティア】活動報告/マサイ族の村でメディカルアウトリーチ【3カ月のケニア医療インターンシップを終えて⑥】
またまたお久しぶりになってしまいました。
4月から復学して、病院実習の毎日。
ひとつ学年が下がったことで、一気に100人と初めまして!
毎日たくさんの出会いに溢れています笑
そんなこんなで、毎日コミ力と学力と走力を向上させるべく奮闘していたら、あっという間に6月になってしまいました…。時間の流れは恐ろしい…。
しかし!早く書かないと忘れてしまう💦
ということで、焦って書き出しました笑
今回は、やっと海外インターン最終回!3度目の正直です笑
(こんなに長編になる予定ではなかったのですが、内容が溢れて長くなってしまいました笑)
前回はケニアでの病院実習の経験をお伝えしたので、今回は
「メディカルアウトリーチ編 @マサイ族の村」
について書こうと思います。
活動内容
私が参加していたプロジェクトでは、月に2回、現地スタッフとインターン生全員でマサイ族の村にメディカルアウトリーチに出かけていました。
(私が滞在していたナニユキでは、私のように病院でインターンをしているメンバーだけでなく、現地の小学校でインターンをしているメンバーもいたのですが、この日はみんなで一緒に出かけます!)
活動場所は日によって異なりますが、街の中心部から約30分〜1時間半車で離れた場所が多かったです。街の中心部から少し離れると、道路は土のでこぼこ道。車の中でバウンドしながら村へと向かいます。乾季は車内が土埃まみれになるだけで済むのですが、問題は雨季。雨が降ると道路の土がぬかるんでしまい、タイヤがスリップして進まなくなることも。溝にはまってはなんとか脱出することを繰り返すので、目的地へ到着するまでかなり時間がかかることもありました。
一方、道中でたくさんの動物と会うことができるという魅力も。街から少し離れるとマサイ族の居住地域となるため、道中では遊牧されている牛や羊、ヤギはもちろん、ラクダにも会うことができます。(私は動物園以外でラクダを見るのは初めての機会だったので、最初はかなり興奮しました笑)
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メディカルアウトリーチの活動は、現地の自治体にも支援されており、村の診療所に勤務している看護師・栄養士などと合同で実施。マサイ族の村にある教会や集会を借り、そこに自分たちで持参した薬や医療機器(血圧計、血糖測定器など)を広げて仮設診療所を作り、そこに村の周囲に住む人々が訪れて来るのを待ちます。正確な人数は分かりませんが、子供と大人合わせて1日で50人前後の患者さんを診察していました。
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実施内容としては、血圧や血糖値のチェック、子供の身長・体重測定、看護師による問診、薬処方、傷などに対する簡単な処置など。カンボジアで実施したメディカルアウトリーチでは大人の高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療がメインだったのに対して、ケニアでは感染症がターゲット。風邪症状や目や耳、肌の痒み・痛みなどに対する抗菌薬、寄生虫駆除薬、場合に応じて抗アレルギー薬や解熱鎮痛薬を処方していました。家族で来る場合も多いため、大人と子供の数は半分ずつくらい。医療スタッフが持参している薬は多くが抗菌薬で、高血圧や糖尿病に対する薬は持参していないため、高血圧や糖尿病が疑われる場合には、病院への受診を促していました。
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日本では、耐性菌防止の観点から、ウイルス性が多い風邪には抗菌薬を出さないことはもはや常識であり、抗菌薬を処方する際には、詳細な診察や検査値から細菌性が疑われることを確認する必要があります。しかし、ここでは風邪症状に対して惜しみなく抗菌薬が処方されていました。私たちスタッフが持参している薬の種類も限られており、検査できる設備もないため仕方ないことかもしれませんが、自分たちが耐性菌を生み出しているかもしれないという事実に、複雑な気持ちになりました。
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上記の実施内容に加えて、メディカルアウトリーチの重要な活動がもう一つあります。「family plan」の教育と実施です。人口が増加し続けているケニアでは、出生率をコントロールしようとする取り組み「family plan」が国家レベルで実施されています。
※2021年の合計特殊出生率は3.34〈日本は1.20 (2024年)です〉
特に、マサイ族の人々は「子供の数が多いほど裕福である」という考えを持っているため、周囲の人々に自分の権力を示すために家庭の経済事情を考えずに子供を作りすぎてしまうケースが多く、結果的に貧困となってしまいます。しかし、未だに男尊女卑な価値観が残存しているため女性が男性に抵抗することは難しく、望まぬ妊娠をしてしまうことも多いのが現状です。
そのため、男性の目に付かない場所へ女性を集めて、医療スタッフから「family plan=避妊」についての教育を行い、女性の希望に応じて、避妊器具の挿入を実施するのです。避妊器具も数種類ありますが、皮下インプラントは注射針を用いて簡単に皮下に挿入することができ、実際に看護師が挿入、抜去しているところを見学させてもらいました。
※皮下インプラントは、長さ4cmのスティック状のインプラントで、肩付近に挿入します。挿入後3~5年間避妊効果があり、抜去後は正常通り妊娠することができます。
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日本では避妊法としてピルが主流ですが、ケニアではピルを買い続けることも、飲み続けることも困難であるため、この皮下インプラントが最も主流な避妊法だそうです。
現地で見たマサイ族
ケニアと聞くと「マサイ族」が一番に思う浮かぶ人も多いと思います。「人並外れた視力、高いジャンプ力、狩りしながら生活!」と、皆さんそんなイメージを持っていると思います。
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しかし、実際にマサイ族と交流した私は少し違った印象を受けたので、私の視点から見たマサイ族について簡単にお話しようと思います。
(あくまで、ほんの一部のマサイ族で出会って感じた私的な印象です…)
結論から言うと、「現代社会とのギャップから、貧困に直面している」印象でした。
日本で有名なマサイ族は、実はケニアに存在する42部族の中では少数派。ケニアの人口は約5400万人であるのに対し、マサイ族は20万~30万人しかいません。
ケニアの部族については、以下の投稿を見てみてください!
一方、現地の人によると、遊牧民であるマサイ族の居住面積はかなり広く、街から少し離れるとマサイ族の居住地域になります。というのも、乾燥しているケニアでは街ができるエリアが限られているため、街を作ることができないエリアは、遊牧民であるマサイ族だからこそ住むことができるエリアになります。
そのため、同じマサイ族であっても、街から近いのか離れているのか、国立公園に近いのか遠いのかなど、住んでいる場所によっても彼らの生活スタイルは大きく異なります。
例えば、街から近い村に住んでいる人々は、街に買い物に出かけたり、街で働いている人もいます。携帯電話も普通に使用しています。一方、国立公園に近い村に住んでいる人々は、観光業を生業としており、伝統的な恰好をして村ツアーを実施したり、お土産を売って収入を得ています。
私がメディカルアウトリーチで出かけていた村は、おそらく「街に近い村に住むマサイ族」に該当すると思います。
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そして、活動中に私がずっと感じていたのは、
「彼らの生活に介入するのが本当に良いことなのか」
ということ。
私は、奥地の方に住むマサイ族に会うことはできなかったので詳しいことは分かりませんが、マサイ族の伝統的な暮らしの中では、植物などを用いたいわゆる伝統療法で病気を治してきたそうです。
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その暮らしの中で、
いきなり抗菌薬を処方する。
➡抗菌薬で効果を感じたら、またその薬が欲しくなる。
➡しかし、自給自足で生活してきたマサイ族の人々はお金を生む方法がない。
➡結果的に薬を買うことはできず、私たちが来るのを待つしかない。
病院でも同じことが起きており、私がインターンをしていた病院では、治療費を支払うことができず、長らく支払い待ち入院をしてるマサイ族の人々が多くいました。
ケニアの医療体制については、以下の投稿を見てみてください!
問題なのは、「マサイ族の人々はお金を生む方法がない」ということ。
家畜を育てて、家畜のミルクや肉を食べて生活してきたマサイ族の人々は、かつてはお金は必要なかったのだと思います。
しかし、現代社会で生きていくためにはお金は必須。教育を受けるために、医療を受けるために、情報を得るために、あらゆる場面でお金は必要となります。そして、この傾向は街に近い村に住む人々ほど強いと思います。
一方、「家畜の数=権力の強さ」という考え方も残っており、どんなに多くの牛を飼っていても、売るのを嫌がります。(マサイ族の貧困を解消すべく、金銭管理についての教育も一部で実施されているそうです)
さらに、教育に対する意識も低く、特に女子への教育は軽視されているそうです。一夫多妻制で、嫁ぎ先は幼少期の頃に親によって決定されてしまうため、女子は教育を受ける必要がない、反対に教育を受けたら村から出て行ってしまうのではないか、という懸念から学校に行かせてもらえない子もいます。
結果的に、お金を生み出す方法がなく、教育がないため働きに行くこともできずに貧困に陥り、支援の対象となり、ケニア財政の負担になっている面もあると感じました。(マサイ族によってケニアの観光業が潤っていることもまた事実ですが…)
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生活は厳しいと言っていました。
トイレもシャワーもなく、部屋の中で行うそうです。
床が土なので、そのまま吸収されるらしい…
もちろん、マサイ族の文化は貴重であり、伝統は継承されていくべきだと思います。多様性が失われていくのは、世界にとって大きな損失でもあると思います。しかし、変容していく社会の中で、現代と伝統のバランスをどのように保持していくのか、今後世界のあらゆる場所で直面する課題であると感じました。
今回も、私見満載の文章を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!半年間にわたる海外インターンの活動報告はこれにて終了!!
(想定の倍くらい書いてしまった…笑)
現地に行ったら、将来のビジョンがはっきりするはず!と思って決めたインターンでしたが、知れば知るほど悩みが増えるばかり。
「知らぬが仏」とはその通りですね…笑
しかし、もちろんこの半年間は自分にとって本当に貴重な経験で、インターンに行ったことに対して全く後悔はありません。
ということで、まだまだ絶賛悩み中の私ですが、半年間の海外インターンを終えて現在考えていることを、次回お伝えしようと思います。