ショートショート【strange disguise】
カーテンの隙間から朝日がこぼれている
ただそれが爽やかなものではないのは分かっているし、シーツはもう冷めきっていた
この部屋にひとり残された俺は昨晩のことを少し思い出す。
清楚でお淑やかな彼女とは昼間に出会って、カフェに入ったあとそのままここへ来たんだ。道中は彼女のことで頭がいっぱいで、と言うよりこの後のことで頭がいっぱいで、周りの街並みなんて目に入っていない。笑顔でなんでも話してくれて楽しかった。素敵な人だった。
彼女を思うと無意識に引っ込められていた腹が、もう会うこともないのかと考えると一気にたるむ。
と同時に机の上に雑に置かれた財布が視界に入る。
あんな所に出しっぱなしにしていたのか
いや違う
そこでなにか今までには無いことが起こっている気がした
まさか、、、
それは目が覚めて隣に誰もいないことより遥かに虚しく、恐ろしかった。
いつもよりゴミの多い渋谷の道をみて思い出した。
今日は11月1日、昨日はハロウィンだったんだ
夜は仮装した輩で溢れかえっていたんだ
そういうことか
何だか納得して入り交じった感情がスっと溶けた
彼女も輩の中の1人だったんだ
あの女、仮装するならトリックオアトリートくらい言えよな
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