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ショートショート【中央通りの先の街】


11時間の旅。
中央通りで止まると、さっきまでゴソゴソしていた目覚めたての人々が降りていく。
あまり調べなかったけど、多分ここが中心地。
目的地から離れていくバスに揺られる。なにをしに行くんだ、と降りていった人に言われそうな、そんな街がカーテンの隙間から見える。
少し先で、登校中の高校生が橋を渡る。
朝を取り込み、たった1人でバスを見送ると、先生たちの注意喚起の声が聞こえた。
おはようございます、注意の3割弱の声量でいちにちのはじまりの共有を求められたので、少しあげた口角と会釈をお返しした。朝を認識してまだ10分も経っていないのだから、大目に見て欲しい。
遠くに横断歩道のある小さな十字路を直進するようマップに促された。車もほとんど通っていない。そのまま渡ろうと思えば余裕で渡れそうな道だが、少し迷って離れた横断歩道を渡った。この街初心者な私はこの街のルールが分からなかったので、保守的になってしまった。ふと、就職活動のおかげで正規タイプになった髪色が童顔に拍車をかけていることを思い出し、少し大きいトートバッグひとつとあたりを見渡す視線により、家出少女と思われたのではないかといらぬ心配が飛んだ先は川沿いの桜並木だった。思わず足を止め、カメラを構える。この色が大阪に届くのは何日後なのだろうと都道府県の位置関係に不満を抱きながら、邪な気持ちが写らないよう慎重にシャッターを切る。
左で足音が止まった。前を通らないように気をつかってくれた女の人に向けて先程と種類違いの会釈をして歩き出す。3月中旬に桜が満開になるに相応しい、あたたかい街だと思った。止まってくれたが急いではいたのか、小走りで私を追い抜いていった彼女は、そのまま横断歩道のない十字路を渡った。
それはアリな街だった。

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