次から次に面白い展開が訪れる、ハイスピードファンタジー。「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます」 1巻感想

忙しい人向けのコーナー

「小説家になろう」発の人気作品コミカライズ!
老若男女美男美女、異形に悪魔にアクションデフォルメなんでもござれの 石沢庸介コクザワヨウスケ 先生による素晴らしい作画!
次から次に押し寄せる、密度ミチミチのストーリー!
漫画という媒体だからこそのスピード感!
1巻ごとの満足度が高く、きっちり楽しめておすすめです!

じっくり語るコーナー

 こんにちは。今回の感想は、石沢庸介先生作画、謙虚なサークル先生原作の「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます」の感想です!

 この作品は元々「小説家になろう」という投稿サイトで人気を集めていた作品が小説化され、それをさらにコミカライズ(漫画化)した作品です。コミカライズはその在り方が作品によって本当に多種多様で、原作の1パートのみを漫画化するスタイルのもの、補完的な内容のもの、漫画のクオリティが高く原作に並び立つレベルで有名になるものなど色々なものがあります。
 この作品は漫画版単体で見た場合でもストーリーに違和感がなく、かつ漫画特有の視線誘導や空間を利用したにぎやかな表現を利用して、飽きがこない作品となっています。

 タイトルからわかるように、この作品はいわゆる「転生もの」ですが、現実世界からファンタジー世界への転生ではなく、ファンタジー世界からファンタジー世界への転生です。
 主人公は魔術の研究に異常な執着をもつ庶民でしたが、血筋で魔術の力が左右される世界では努力しても大した力を得られず、漫画開始冒頭で貴族の炎魔法により燃やされてしまいます。
 その結果転生し、記憶を持ったまま第七王子のロイドに生まれ変わるところから、物語が始まります。

 読んでみると分かりますが、作画担当の 石沢庸介コクザワヨウスケ先生は老若男女、美男美女の魅力的な表情はもちろん、モンスターや悪魔、背景やダイナミックな戦闘アクションに至るまで、何でも描ける方です。
 ページをめくるたびにあまりにも次々に魅力的な登場人物(人ではないモノも)が出てくるので過去作品を少し見てみたところ、「忍のBAN」「超人学園」「星と旅する」といった作品を執筆されているということでした。過去の作品でもところどころで人間の枠に収まらないキャラクターが登場しており、現在の豊かなバリエーションの片鱗を感じることができました。
 キャラクターのバリエーションの他にも、コロコロと変わる主人公ロイドの表情も、この作品の魅力です。転生前から、主人公は魔術ジャンキーなところがあり、普段の無害そうな表情から一転、魔術に関わることになると満面の笑顔、いたずらっぽい笑み、子供が虫で遊ぶ時に見せるちょっとした怖さなど、色々な表情を見せてくれます。

 「小説家になろう」発の転生系作品は、昨今アニメ化された人気作品に共通する点から「俺つえー」描写とよばれる名物のような描写があります。これは「前世で恵まれない境遇であった主人公が転生を機に特殊能力を手に入れ、転生先の世界で活躍をして周りから高い評価を得る」描写です。「(転生した)がつよい(=つえー)」ことから、俺つえー描写と言われます。転生なしでも、神様や高次の存在から力を与えられ、俺つえー描写となる場合もあります。
 この作品も、いわゆる俺つえー描写がある作品の一つです。ただ、転生後に得た力の描写に迫力があり、主人公を取り巻く人々による評価や、周りが感じる怖れに説得力があります。詳しくは原作を手に取っていただければと思いますが、空に穴があいたりします。

 このコミカライズのもう一つ面白いところは、展開の速さと読後の満足感です。これまで私が読んできたコミカライズとして一般的な水準の作品ですと、「原作小説」という絶対的なストーリーラインが存在することから、どうしてもこれに肉付けするように漫画版が展開され、どこか薄味になってしまうような作品もあります。
 しかしこの作品は、漫画版の1巻ごとに2, 3個の起承転結が含まれているようなミチミチの構成となっており、ページ数に対しての満足感が高いです。普段コミックを読む調子で読んでいると、残りページ数を見て「え、まだよめるの?」となることが多い作品です。
 この1巻も、普通であれば章を締めくくるボスとなりそうなレベルの敵が2人も登場します。

最後に、これは漫画特有のおまけ要素的な側面が強い要素ですが、デフォルメが秀逸です。主人公、モンスター、周囲の人々がそこそこの塩梅でデフォルメ化され、ハイスピードな作品の中で軽快な調子のギャグ的な要素として働いています。私は主人公の丸い生意気なモードが割と好きです笑

イチオシページ紹介

最後に、(ネタバレは避けつつ)イチオシのページをまとめてこの記事は終了とします。全てKindle換算のページ番号です。

  • P47 魔術探求モードの主人公の表情。美少年の誘うような表情をとても魅力的に描かれるので、目をグッと惹かれますね

  • P51 悪魔の「二重詠唱」のシーン。単純に呪文を二つ同時に発するだけでなく、口が増えて左右で詠唱する描写はとても悪魔らしい雰囲気が出ており、この先の描き方に期待するきっかけの描写でした。

  • P81 魔術の詠唱を複数並列で行う手法「呪文束」の表現です。複数の詠唱を同時に行う表現はいろいろなところで見ることができますが、「中身が読めないほど高密度な呪文」をこの表現で行っている描写は初めて見ました。

  • P95 「俺つえー」描写のシーン。原作での表現が大規模なおれつえー描写はいろいろとありますが、このコマは大変なことが起きた描写にとても説得力があります。

  • P109 1巻で2種類目のモンスター、オークです。この世界でオークは、たくましい足にムキムキの体、の上に豚の顔と角を持っています。

  • P134 モンスター3体目、リッチです。尾をもった人間の体にフード付きのロングコート、光る眼というデザインは新しさがあり、個人的にかなり好きなデザインです。

  • P152 - 165 高速な戦闘アクションの描写です。静止画である漫画という媒体でありながら、驚くほどのスピード感を感じられるシーンです。

アニメ化も進んでいる

2023年8月現在、アニメ化も進んでいるようです。この高品質な作品をアニメではどう表現し、アニメらしい要素を追加するのか、今からとても楽しみですね!
TVアニメ『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』ティザーPV - YouTube


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