見出し画像

【ショートショート】「人が消える道」

僕の住んでいる街には怪談話がある。

どこの地域でも一つや二つくらいあるだろう。

僕が知っているのは『人が消える道』。

その道を通るとみんな消えてしまうらしい……。 

休日は特にやることもなく、暇つぶしに近所を散歩することにした。

その時、この怪談話を思い出したのだ。

何となく場所は把握していたが、行ったことはない。

というのも、僕はビビリだからだ。

おひさまの出ているうちならそれほど怖くないだろうと思い、何となく記憶しているその道へ行ってみることにした。


まっすぐの一本道。

両側は住宅街で塀がある。

まっすぐの向こうには山が見えて景色がいい。

そんな美しい一本道を通った先で人が消えてしまうという。

道の向こうには何があるのだろう?

とりあえず、まっすぐ歩いてみる。

片手にはスマホを持って。

いつでも助けを呼ぶことができるように(ビビリだから!)

…2分くらい歩いただろうか。

突然、道がなくなった。

つまり行き止まりである。

行き止まりなら元の道を戻るしかない。

ここで人が消えるというのはどういうことだろう?

ちなみに、行き止まりになっているというのは草が生い茂っていたからだ。

左右にも道はない。

草をかき分ければ道があるのかもしれないと思い、かき分けてみたが蚊に刺されただけだった。

獣道のようになっているのではないかと思ったが違った。

では、なぜ人が消えたのか?

天候が怪しくなってきた。

いつまでもこうしているわけにはいかない。

雨が降り出しそうだ。

元の道に戻ろうと方向転換した時、足の踵がズルっと滑った。


「うわっ!」


咄嗟に再度方向転換し、つまり僕は顔から生い茂っている草の中に倒れ込むこととなった。

が……。


…僕の体は草むらに受け止められず、一回転して地面に叩きつけられた。

とは言っても、そこは反射神経の良さによって、どうにか足から着地できたのだが……。


「えっ!?」


足から着地したもののバランスを多少は崩し、尻もちをついた僕はポカンと見上げる。

僕…今…落ちた!?

そう、あの草むらは草むらではなく、草に隠された小さな階段になっていたのだ。

生い茂っていたため、僕には階段が見えていなかった。

人が消えたわけではない。

階段を降りたため、消えたように見えていただけなのだ。


痛むお尻をさすりながら僕は小さな階段を上り、元の道へと戻っていった。

帰り道、持っていたスマホの画面が割れていることに気づいた。

教訓:草むしりは定期的にしましょう!

いいなと思ったら応援しよう!

るみ♪
よろしければチップをお願いいたします! いただいたチップは通院代や書籍代に使わせていただきます♪(゚ω゚)/