おばあちゃんの思い出
「動作」で思い出したのが、30年以上前に亡くなった大好きだった祖母のクセ。
椅子に座ってニコニコしながら、片方の足の裏でもう片方の足の甲を叩く。結構大きな音が出てまるで足で拍手をしているよう。
子供心に「面白いなぁ」と思って見ていた。
そしたら、祖母の娘である母も時々やるし、気がついたら私もパチパチやっている。母子三代にわたる妙なクセ。
その度に温かくて優しかった祖母を思い出す。
子供の頃、母の実家に帰省するたびに、祖母は私たち孫の大好きなものを用意して待ってくれていた。
近所のお魚屋さんに頼んだ新鮮なお刺身や、高級で美味しいお肉、季節の果物など。
日頃はなかなか口にできないご馳走を、集まった親戚みんなで囲んでいただく楽しいひととき。
その中心に祖母の優しい笑顔があった。
中でも祖母のお手製の甘酒が大好きだった。
当時は保温器など無いから、お米と麹を適温に保って発酵させる作業は大変だったらしい。
作る工程を見たことは無いが、容器を毛布に包んでこたつに入れて発酵させていたとのこと。
きっと、孫たちの喜ぶ顔を思い浮かべながら、時間をかけて丁寧に丁寧に作ってくれた甘酒。
それはそれは美味しかった。
大人になって、発酵器を買って、麹から甘酒を作ってみたが、祖母の味には遠く及ばなかった。
もう一つ大好きだったもの。それは祖母の作るお味噌汁。
前日からいりこを水につけて丁寧に取った出汁と、麦麹のお味噌の香りがとても美味しく、お泊まりした翌日の朝食が楽しみで仕方がなかった。
料理上手な母にねだって同じように作ってもらったが、残念ながら祖母の味とは別物だった。
今や私も3人の孫の「おばあちゃん」。
お盆に久しぶりに会ったが、「バァバと手を繋ぐ」「バァバと寝る」すぐに懐いて慕ってくれる。
おばあちゃんの魅力は摩訶不思議。
私は、どんなおばあちゃんとして孫たちの記憶に残るのだろう。
今日も足でパチパチしながら、思いを馳せる。
以上
「ふみサロ」提出、リブリオエッセイ。
今月のお題は「絶滅危惧種動作図鑑」藪本晶子著でした。
動作と聞いて思い出したのが、母子三代にわたる面白いクセ。
最初、「どこから大きな音がするんだろう」と不思議に思ってたら、祖母が足でパチパチ拍手をする音でして。
祖母=足でパチパチ=優しい笑顔
そのぐらい印象に残っていまして。
そこから、祖母にまつわる思い出を呼び起こしてエッセイに書いてみました。