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【無料記事】京大ロー生が実演「要件事実的に民法を解く」とは〈続編〉

 こんにちは🌙先日出した、『京大ロー生が実演「要件事実的に民法を解く」とは』(https://note.com/runalaw___/n/n9563df6099fc)が好評でしたので、続編を出します。
 今回も、末尾に、【参考事例】と【参考答案】(今回は問題も自作したので不備があるかもしれません、その場合はご連絡ください)を付けています。前回は、〈即時取得の基本編〉といえるので、今回は〈即時取得の応用編〉にしています。有料化も検討しましたが、私が受験生の頃に存在して欲しかった物の提供という私の情報発信の根幹から、今回も投げ銭方式にとどめます(前回の記事、無料で全文字読めるにもかかわらず多くの方に投げ銭をいただきました。励みになります。あざざます❗️)。

 前回同様、問題・解答例の前に何点か述べます。
・細部にこだわりすぎない
 あくまでも要件事実「的」に「考える」ことで、民法の事例問題をうまく処理しよう!というのが趣旨です。そのため、個々の抗弁の細かい要件事実にこだわる必要はありません。
 他方で、条文の立て付け上、明確に主張立証責任が分配されている場合には、どちらの当事者が主張すべき事実か書くのが望ましいと思います(例えば推定規定のある即時取得・取得時効、本文・但書構造の債務不履行損害賠償・催告解除など)。

・「ぼかし」をうまく使う
 細部にこだわらないのと同様の趣旨です。否認と抗弁の区別は民訴・民事実務基礎科目の難関ポイントです。ただし民法では別にどっちでも「反論」であることには相違ありません。そこで、抗弁か否認か明示せずとも、「反論」と「ぼかし」て書けば足りると思います。
 他方で、今回の【参考事例】に取り入れている事項でもありますが、再反論ではなく予備的主張になる場合に、「再反論」と書いてしまうのは「誤り」を書いていることになってしまいます。そのため、ある程度の要件事実の基本知識はあったほうがよいと思います。これが顕在化するのが、94条2項の主張の位置付けです(承継取得説・原始取得説の対立)。有名どころは押さえておきましょう。
 他に応用的なものとしては、「せり上がり」には注意すべきです(よくわからないという人は、要件事実の本や民法の教科書で同時履行の抗弁らへんを学習してみましょう)。

・R6予備論文民法における『要件事実「的」思考』について
 前回の記事を出した後、多くの関連する質問をいただきました。質問箱で既に大半を回答済みですが、回答した中でも興味深かった質問と私の回答を取り上げます。

 おそらく、「失踪」や相続関連、不当利得など、普段の要件事実の勉強で馴染みの薄い分野だったために要件事実的に考えるのが困難(それらの「論点」に飛びついて書くしかない)、と思ったのだと思います(なお京大ロー生にとっては2年次後期の授業で扱う内容なので普通に要件事実的に学びます)。
 しかし本当に要件事実的に考えることができないのでしょうか。
 設問1(1)で問われているのは物権的返還請求権です。もと所有・現占有が請求原因として必要です。このうちのもと所有を失踪→相続→特定財産承継遺言として基礎付ける作業はまさに要件事実「的」思考が求められます。さらに、被告側の抗弁として、899条の2第1項に基づく(法定相続分を超える部分についての)対抗要件具備による所有権喪失の抗弁が考えられます。その効果は、原告の法定相続分を超える部分については自分も所有権があるということ、その結果、目的物が原告と被告の共有状態になることです(原告の法定相続分範囲については無権利者からの譲渡を受けただけであり、外観法理の適用も認められなさそうなので被告は全部の取得はできないでしょう)。共有状態にあるということは、被告は目的物について、占有する権原があります(249条1項)。すると、原告からの返還請求は、共有者間の(持分権に基づく)明渡請求というお馴染み論点の状況になります。判例のいう「明渡しを求める理由」の具体的内容が252条1項で明文化されているのでその点を言及することになります。
 設問1(2)でも32条によってどう物権的請求を拒むのか、これは要件事実的思考です。
 設問2も、類型論からは誤振込をどう処理するか、種々の問題はありますが、どちらの当事者が主張立証責任を負うどの要件について問題があるのかを探求していくことで説得力のある構造的な答案が書けるのではないかと思います。

 それではお待たせいたしました。即時取得応用編の【参考事例】と【参考答案】です。前回同様、脚注に色々と書いていますし、ナンバリングや三段論法の階層構造にもこだわっています。熟読してみてください。当初は即時取得応用編と債権基本編をセットにして続編として出そうと考えていましたがそこまでのやる気を出すことはできませんでした、すみません。
 これを読んでくださる皆様の民法の実力向上に寄与できれば幸いです。

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