世間を騒がせたSTAP細胞。今思うとあれはなんだったのでしょうか?
IPS細胞とSTAP細胞💡
「STAP細胞はあります」涙ながらに小保方氏が訴えたSTAP細胞。もう数年前の出来事ですが、ふとあれはなんだったのかと思い、勉強しながら記事にすることにしました。
STAP細胞とiPS細胞は、再生医療や幹細胞研究において非常に重要な役割を果たす細胞ですが、その性質や生成方法には大きな違いがあります。この記事では、これらの細胞の基本的な特徴、発見の経緯、そしてそれぞれの利点と欠点について詳しく解説します。
まず初めに幹細胞とについて説明します。
幹細胞とは,必要に応じて分裂を繰り返すことができる自己複製能(self-renewal potency)と機能的に分化した細胞を供給できる分化能(differentiation potency)を合わせ持つ細胞です.例えば,骨髄には造血幹細胞と呼ばれる体性幹細胞が存在し,自己増殖しながらも白血球や赤血球,血小板などさまざまな血球系細胞を絶え間なく供給しています.造血幹細胞は,骨髄移植によって他人の体に注入されても,状況が整うと増えて血球系細胞を供給します。
IPS細胞(人工多能性幹細胞)とは??
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、2006年に京都大学の山中伸弥教授によって発見されました。iPS細胞は、体細胞(例えば皮膚や血液の細胞)に特定の遺伝子を導入することで、多能性を持つ幹細胞に初期化(リプログラミング)されます。このプロセスは比較的複雑ですが、iPS細胞は倫理的な問題が少なく、さまざまな分野で応用が期待されています。iPS細胞は、ES細胞と同様に多くの異なる種類の細胞に分化する能力を持ちます。これにより、再生医療や疾患モデル研究など、多岐にわたる応用が可能です。
英語では「induced pluripotent stem cell」と表記しますので頭文字をとって「iPS細胞」と呼ばれています。
ここで多能性幹細胞も説明しておきます。
未熟な発生段階に留まっている幹細胞の性質を「未分化性」といいます。未分化な幹細胞は、その分化能に応じて幾つかのクラスに分けられています。1個の細胞だけで個体を作りだせる幹細胞の能力は全能性(totipotency)と呼ばれ、高等動物では受精卵だけが持っています。一方、体を構成する全ての組織細胞や生殖細胞に分化できる未分化な幹細胞を、多能性幹細胞(pluripotent stem cells)と呼びます。
体性幹細胞の多くは生殖細胞以外の組織細胞に分化できる限定的な多能性をもちます。multipotent stem cellsに分類されています。iPS細胞(induced pluripotent stem cells)は、人工的に体細胞から誘導(induced)して作製した多能性幹細胞という意味を持ちます。
STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)とは??
STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)は、2014年に発表された新しいタイプの多能性幹細胞です。STAP細胞は、成熟した体細胞を特定の刺激(例えば、弱酸性の環境)にさらすことで、多能性を持つ状態に戻すことができるとされていました。この発見は、再生医療における新たな可能性を示唆するものであり、多くの研究者やメディアから注目を集めました。しかし、その後の検証でSTAP細胞の存在が疑問視され、論文が撤回される事態となりました。最終的には、STAP細胞が実際に存在するかどうかは不明のままとなり、科学界における信頼性や倫理的な問題が浮き彫りになりました。
STAP細胞とiPS細胞の違い
STAP細胞とiPS細胞にはいくつかの重要な違いがあります。
1. 作製方法👩🔬
STAP細胞:成熟した体細胞を弱酸性環境に置くことで作製されるとされていました。手間が少なく簡単であるという利点がありました。
iPS細胞:体細胞に特定の遺伝子(通常4つ)を導入し、多能性を持つ状態に戻します。このプロセスは複雑で時間がかかりますが、高い信頼性があります。
2. 存在証明📖
STAP細胞:論文発表後、多くの研究者によって再現実験が行われましたが、その結果は一致せず、最終的には論文が撤回されました。現在ではSTAP細胞の存在は否定されています。
iPS細胞:山中教授らによる発見以降、多くの研究機関で確認されており、その存在は広く認められています。また、多数の臨床試験も行われています。
3. 倫理的側面🧑👧
STAP細胞:その作製過程には倫理的な問題が少ないとされていましたが、その存在自体が疑問視されたため、この点についてはあまり議論されませんでした。
iPS細胞:ES細胞とは異なり、胚を使用しないため倫理的問題が少なく、安全性も高いとされています。このため、再生医療への応用が進んでいます。
PS細胞の応用例
iPS細胞はその多能性からさまざまな分野で応用されています。以下はいくつかの具体例です
再生医療:👨🔬🏥
患者自身のiPS細胞から作製した神経や心筋などを移植することによって、病気や怪我による損傷を修復する試みがあります。
疾患モデル研究:🐁
iPS細胞を用いて特定の疾患モデルを作成し、新薬開発や病態メカニズム解明に役立てています。
薬剤スクリーニング:👩⚕️
患者由来のiPS細胞を使って、新薬候補物質の効果や副作用を評価する研究も進められています。
創薬研究:💊
iPS細胞から分化させた特定の組織や器官モデルを使用して、新しい治療法や薬剤候補物質を探索しています。
再生医療の提供と看護師の役割
再生医療は、難治性疾患や損傷した組織の修復を可能にし、患者の生活の質を向上させることが期待されています。看護師は、患者が新しい治療法を受ける際に、その心理的・身体的なサポートを提供する役割があると考えます。
再生医療は個別化医療を推進する要素があります。患者ごとに異なる治療法やアプローチが必要なため、看護師はそれぞれの患者のニーズに応じたケアを提供する必要があります。
再生医療には新しい技術や治療法が多数導入されます。これに伴い、看護師も新たな技術や知識を習得する必要があります。例えば、幹細胞治療や遺伝子治療など、新しい治療法に関する理解を深めることで、患者への説明や教育がより効果的になります。
再生医療は多職種によるチーム医療が不可欠です。看護師は医師や理学療法士、薬剤師などと連携しながら患者ケアを行います。このため、コミュニケーション能力や協働能力が重要となります。看護師はチーム内での情報共有や調整役としても機能し、患者中心のケアを実現するために貢献します。
再生医療には倫理的な問題も伴います。特に幹細胞研究や遺伝子操作に関しては、多くの議論があります。看護師としては、これらの倫理的課題について理解し、自身の価値観と照らし合わせながら患者と向き合うことが重要です。また、患者が情報をもとに自らの意思で選択できるよう支援することも重要な役割になります。
まとめ
STAP細胞は一時期注目されたものの、その存在は否定されました。一方で、iPS細胞は確立された技術として広く認知されています。
STAP細胞は簡単な刺激で作製できるとされていましたが、その信頼性には疑問があります。
iPS細胞は遺伝子操作によって生成され、安全性も高く、多様な応用が期待されています。再生医療や創薬研究などでその可能性が広がっています。
今後もiPS細胞技術は進化し続け、新たな治療法や医療技術への道を切り開くことが期待されています。
再生医療は看護実践にも多くの変化と挑戦をもたらす可能性がある
専門的な用語の解説
ES細胞(胚性幹細胞、英ho: Embryonic Stem Cells)は、動物の発生初期段階である胚盤胞から得られる多能性幹細胞です。これらの細胞は、理論上、体内のすべての細胞タイプに分化する能力を持っています。