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進行性の難病ALSの治療薬に注目!


1.ALSの治療薬メコバラミンについて💊

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経が徐々に障害され、最終的には全身の筋力が低下し、呼吸筋の麻痺によって死に至る難治性の神経変性疾患です。ALSの治療法は限られており、現在利用可能な治療薬は、症状の進行を遅らせるものや、患者の生活の質を向上させるものが中心でリルゾールとエダラボンを除き、いずれも承認には至っていません。

その中で、近年注目を集めているのがメコバラミンという薬剤です。この記事では、ALSに対するメコバラミンの効果やその背景について詳しく解説します。

2.メコバラミンとは

メコバラミンは、活性型のビタミンB12であり、日本では神経細胞の健康を維持するために重要な役割を果たしており、末梢神経障害や神経痛の治療に用いられています。

3.メコバラミンの作用機序

メコバラミンは、神経細胞の再生や修復を促進する作用があるとされています。具体的には、以下のようなメカニズムで神経機能を改善します:

  • 神経保護作用: メコバラミンは酸化ストレスから神経細胞を保護し、細胞死を防ぐ効果があります。

  • 神経成長因子の促進: メコバラミンは、神経成長因子(NGF)の合成を促進し、神経細胞の成長や再生を助けます。

  • ホモシステイン代謝: メコバラミンはホモシステインという有害物質の代謝に関与し、高レベルが神経障害を引き起こすリスクを低下させます。

4.ALSにおけるメコバラミンの治療効果✨

ALS患者に対するメコバラミンの有効性については、多くの研究が行われてきました。特に注目されたのが、日本で行われた医師主導治験「JETALS」です。この治験では、発症から1年以内のALS患者を対象に、高用量メコバラミン(1回25mg)とプラセボを比較しました。

【JETALS治験の結果】

この治験では以下のような結果が得られました

結高用量メチルコバラミンはプラセボと比較し、治療16週時点でALSFRS-R合計点数の低下を約43%抑制する効果を示しました

https://als-mecobalamin.org/jetals-press-release20220510/
ALSFRS-R合計点数の推移

これまでの治療薬として、症状の進行に対する抑制効果は明確でないものの生存期間を約90日延長するリルゾール(経口薬)と、経過中の機能評価スケールを改善するものの生存期間への影響は確定していないエダラボン(点滴注射薬)がありました。高用量メチルコバラミンは、これまでに実施された臨床試験の結果から発症早期のALS患者においてリルゾールよりも長い生存期間の延長が期待され、エダラボンよりも大きな症状の進行抑制効果が示されました。
また、本研究の被験者の約90%はリルゾールを併用しており、リルゾール単独治療とリルゾールと高用量メチルコバラミンの併用療法の比較では、併用治療で有意に症状進行が抑制されていることがわかりました。

ここで気になる安全性です。有害事象および副作用の発生率はメチルコバラミン群で約62%、約8%、プラセボ群で約66%、約2%であり、両群に差はなく、高用量メチルコバラミンの高い安全性が確認されました。
これらの結果から、高用量メコバラミンはALS患者に対して有効な治療選択肢となる可能性が示唆されました。

5.承認までの道のり📖

2022年5月、JETALS治験の結果を受けてエーザイ株式会社がメコバラミン高用量製剤についてALS治療薬として承認申請しました。そして2024年1月26日には独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって承認されました。この承認により、ALS患者への新たな治療選択肢が提供されることになりました。

6.メコバラミン使用時の注意点⚠

メコバラミンは一般的には安全性が高いとされていますが、使用する際には以下の点に注意が必要です:

  • アレルギー反応: 過去にビタミンB12製剤にアレルギー歴がある患者は注意が必要です。

  • 副作用: 一部では軽度な副作用(吐き気や頭痛など)が報告されていますので、使用中は体調に注意しましょう。

  • 他薬との相互作用: 他の薬剤との相互作用についても確認しておくことが重要です。特に抗凝固剤や抗生物質との併用時には医師と相談してください。

専門用語の解説

  • ALSFRS-R:ALS機能評価スケール改訂版(ALS functional rating scale-revised)の略号で国際的に用いられている。ALS患者の日常生活を評価する尺度であり、スコアは48点満点で、重症であるほど点数が低い

  • JETALS試験:日本で行われた高用量メコバラミンによるALS治療効果を検証する医師主導治験。

  • PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構):日本国内で医薬品や医療機器等の承認審査を行う機関。

  • 有害事象:薬を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない徴候、症状、または病気。

  • 副作用:薬によって患者に生じた好ましくない徴候、症状、または病気。

まとめ

  • メコバラミンはALS患者への新たな治療選択肢として期待されている。

  • JETALS試験では高用量メコバラミンが生存期間や呼吸補助装置装着までの期間を延長する効果が示された。

  • 安全性も高く、副作用も軽度であることから、多くの患者にとって有益な選択肢となる可能性があります。

ALSは進行性の難病であり、不可逆性です。
今後もさらなる研究と臨床データ収集が進むことで、より多くのALS患者に対して効果的な治療法として確立されることが期待されています。再生医療や新しい薬剤開発への期待も高まっています!
メコバラミンはALS患者の新たな希望となることを願っております。

参考文献

#ALS #メコバラミン #神経変性疾患 #再生医療 #治療薬

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