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「目立ってしまう自分」を受け入れて逆に誰かのためにその才能を使おうと心に決めた話
私はクラリネット講師や音楽ライフメンターとして働く一方で、趣味として市民吹奏楽団に参加している。つまり、仕事も趣味も音楽だ。
湘南エリアで活動するこの楽団には20年来の仲間もいるし、たくさんの新しい友だちとの出会いもあった。まさに、私の心のホームグラウンドなのだ。
楽団はコロナ禍の影響で約2年半のあいだ休止せざるをえなくなったが、2022年の1月に正式に活動を再開した。このとき、役員の人事も一新することになり、私は思い切って手を挙げた。
私が目立つ存在であることを活かして仲間の役に立てると考えたからだ。この才能を大切な仲間たちのために活かそう、いや、そうしなかったら女がすたると決意したのだ。
正直なところ目立つのは怖い。風当たりも強くなるし、何かと批判される。それでも腹を決めて自分の特徴に向き合うことができたのは、オランダでそれが才能だと認めてもらったからだ。
音楽を学ぶために35歳でオランダに留学してから4年後、卒業を間近に控えた2018年の春に、私のコンサートを聴いた恩師がこんなことを言ってくれた。
「ルミ子が舞台に出てくるだけで、なぜかみんながルミ子を好きになっちゃう。それは天が与えてくれた才能だよ。音楽家として誰もがもてるものじゃない。大切にしなさい」
つまり、私は目立ってOKってこと? しかも才能なの?
私は恩師の言葉に面食らってしまった。子どものころ、目立つことは悪いことだと心にグリグリとねじ込まれるような体験をしたからだ。
中学生のとき、隣町に住む親戚に「お前の名前がこっちにまで知れ渡っている。女なんだからこあまり目立つな」と言われたのだ。
やたらとが注目されることが理由で、母が他の親たちから陰口を叩かれていたこともあとになってから知った。
どうやら私は、意識しなくても自然と目立ってしまう性質を持って生まれてきたようだ。地声が大きく、身長も子どもの頃から同級生より頭ひとつ飛び出ていた。大勢のなかにいてもひと目で私だとわかってしまうのだ。
勉強が好きで成績もよく、水に入るとカナヅチになるのをのぞけばスポーツも得意だった。おまけに人前で話すことを苦にせず、生徒会の役員として夢中で活動していた。
注目されるためにがんばったこともなければ、目立ちたいと思ったこともない。ただ、表に出さずにはいられない気持ちと情熱に促されるまま行動していた子ども時代だったが、私の個性は誰もが喜んで受け入れるものではなかった。
オランダの恩師にそれを才能だと断言されて戸惑ったけれど、心から信頼する先生がそう言うなら信じてみようと考えた。目立つことが必ずしも悪いことではないと知り、音楽家としてもひとりの人間としても浅原ルミ子という存在に正直になってよいとOKを出せるきっかけになった。
すると、際立って人目につきやすい性分が天からの贈り物なら、人のために使いたいと考えるようになった。私が人前に立つ役回りを引き受けることで、誰かが楽になってその人の特技をおもいっきり使うチャンスを守れたなら、なんと嬉しいことかと考えた。
ならば、目立って生きようと腹を決めたのだ。
吹奏楽団の運営を引き受けてしばらくの間は「やっぱり目立っちゃってるなぁ」とセルフダメ出しをすることもあった。そのたびに私は先生の言葉を思い出して勇気を取り戻した。
情熱だけで行動していた若いころとは違って、人の助けになる目立ち方を目指して、ことば使いや立ち振る舞いも工夫するようになった。
そんなある日、とても信頼する友人に向かって「私って目立つのが才能なんだって気づいた!」と公言してみた。すると彼女は「うん!そうだね!」と認めてくれた。嬉しかった。そしてこんなことを話してくれた。
「ひとが他人を妬んで攻撃したり陰口を叩くときって、自分の才能を知らなかったり見て見ないフリしてるときだなって感じるよ。まずは自分のいいところを認めればこそ、自分とは違う他人を受け入れられると思うんだ。そしてその人が自分とは全くちがう特技をもっていることを素敵だなって考えられる。自分の才能を知れば、ひとに優しくなれるんだと思うよ」
世の中がぐるぐる動いているのは、それぞれのタレントと能力を使っているからこそだよね、と彼女との会話が続いた。
言われてみると、全く性格の違う彼女と私が親友としてもう20年以上つきあっているのも、お互いの才能を認め、尊敬の気持ちを出し惜しみなく相手に向けているからだな、とふと気づいた。
目立つなんて望んでもち合わせた才能じゃないけれど、ケチらずに使っていこうと思う。
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![Rumiko Asahara 浅原ルミ子](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13833626/profile_b8707063e16e5a8cc28a85e0e3c4dffe.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)