【上山晃Q&A】金本位制から米ドル体制への移行:歴史的視点
【質問】
金本位制から米ドル体制への移行はどういうプロセスを辿ったのか。
【回答】
金本位制から米ドル体制への移行は、幾つかの重要な歴史的瞬間を通じて進行しました。
まず、スターリング・ポンドの衰退は1930年代の大不況が大きな要因です。この大不況により、当時の覇権国家であったイギリスは自国の経済を保護するため、英連邦経済圏に絞ったブロック経済を採用、他国を排除しました。この結果、覇権国家としてのイギリスの地位は揺らぎ始めました。
次に、第二次世界大戦期に欧州から多くのユダヤ人などがアメリカに資産を移したことで、世界のゴールドの約70%がアメリカに集まり、ドルの体制への移行の礎が築かれました。
しかし、すぐにドルが基軸通貨になったわけではありません。事実、ボロボロになったイギリス経済のスターリング・ポンドが1956年頃まで決済通貨としては優位でした。しかし、第二次中東戦争でスエズ運河を守れなかったイギリスの経済的威信が地に落ち、決済通貨がスターリング・ポンドからドルへとシフトし始めました。
現在では、アメリカはドルを武器に使用し、経済制裁に多用しています。これにより、アメリカ以外の国々はドルに依存しない決済システムの必要性を感じ始めています。例えば、中国の一帯一路政策はドル以外の通貨で構築を目指しています。また、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)も同様にドル以外の通貨での決済システムを構築しているのです。
これらの動きは、通貨がその国の覇権としての重要な部分を担っていることを示しています。ドルがどこで決済シェアを激減するかがポイントとなり、それがゲームチェンジャーになり得るのです。つまり、覇権通貨が変わるということは、新たな勢力の台頭を示す重要な兆候となるのです。