現在、辻政信氏の理想形成と東亜連盟への参加の経緯を、
『亜細亜の共感』から追っています。
私は、辻氏の文章を読み、
若い彼が世界の実像を見るにつれ、
故国を構成する人々への不信感と、
宣伝を鵜呑みにして悪印象を抱いていた敵国(中国)人への見直しとが、
その心中で積み重なっていったらしい
ことを感じとりました。
その後、辻氏は昭和8年の
「新疆省方面のソ連の進出状況を視察する計画」
というものに自ら志願して、
中国大陸視察の旅に出、現地人との交流を経て、
協力を得た中国人の「真心」に感激するという経験をされたようです。
眼を開く
辻氏はその旅行を終え、
二・二六事件によって国内の一部軍人の腐敗を再確認した後、
東亜連盟を指導した石原莞爾将軍と対面する機会を得ます。
本書の中では、
石原将軍の提唱する満州國建設に対して、
教えを乞う学生のように、辻氏が質問を持参した様子が見て取れました。
辻氏はこの、噛んで含めるような説諭に心を動かされたようです。
辻氏はそれまで、
火急の用と焚き付け煽り
多くの人を巻き込んでおきながら
発信者の利益のためでしかなかった喧伝の数々を、
苦々しく思いながら見てきていたのではないでしょうか。
石原将軍から説かれた内容は、
辻氏が今までに耳にしてきた喧伝とは打って変わった
高い次元で世界を見たものだったのだと思います。
林連隊長、空閑少佐、石原将軍との交流が、
辻氏を「東亜連盟」の理想に導いて行ったようです。