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「五月待つ」この頃の洗顔フォーム

古今和歌集の巻第三の「夏 歌」の139番に、この歌があります。

さつきまつ花たちばなの香をかげば 昔の人の袖の香ぞする
(よみ人しらず)

『古今和歌集』岩波文庫
139番に花橘の歌
『古今和歌集』岩波文庫 黄12-1

この頃すでに、「よみ人しらず」となっていますので、今から1100年以上前に、誰かが口ずさんだ歌が、繰り返し人々の中に思い起こされて来たのでしょう。

今も女子に人気のある歌ですので、千年の時を超えて「この感覚」を共有できるなんて、本当に幸せ。

ちなみに岩波文庫の『古今和歌集』の解説を読んで見ると、この勅撰和歌集の第1号の勅命が発せられたのが延喜5年4月18日(西暦なら905年5月21日)のことでした。偶然にも「さつきまつ(五月待つ)」頃だったのですね。確かにこの時期は、心機一転、思い切って何か新しいことを始めたくなる時節かもしれません。
勅命を拝して、「さあ、はじめよう」としたときの五月晴れの空と、紀貫之ら四人の男たちの心沸き立つ様子が目に浮かびます。

どうしてこの歌を思い出したかというと、今朝、顔を洗うとき、ふと家人の洗顔フォームを使って見たくなったからでした。

泡立てて顔につけた時「この香り!」とハッとして、一瞬記憶がループして、「ああ、やさしい柑橘系だったんだ、このブランドは。」と、ちょっぴり「やられた感」に包まれました。

「橘」はなぜか「いい男」のシソーラスなんです。橘は右近だし(左近は桜)、朧月夜と出会った頃の光源氏は右大将、在原業平も蔵人頭で右近衛権中将。右近というのは「右の近衛府」の略です。

それから「橘」は常世にある非時香菓(ときじくのかくのみ)とも呼ばれていたこととか、それを探し求めた田道間守の神話の話も切なくて。

もしかしたら、「花橘の香」に惹かれるのは、見たことのない世界へつながる香りだからかもしれません。見たことのない世界を知っている男。

この歌を詠んだ女も、時空を超えて思い出に浸っていたのでしょう。



それで、ついでにもう一人の家人の洗顔フォームを使って見たら、こちらは超クールミントで、五月を通り越して「夏」でした。こっちの人工的な香りも好き。


SHISEIDO MEN Face Cleanser / UNO WHIP WASH BLACK

人工的といえば、miumiuのサイボーグ女子みたいなパルフェム。こちらは攻めた柑橘系です。一人で行動したいときのお守り。

ミュウミュウ オードパルファム


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