連載小説 ディア- デイジー ⑦

ジョセフィーヌ、2人の元に戻ってくる。
「ただいまっ!  」そのままフレデリックの前にしゃがみこみ、傷口を見つめる。
「痛かったでしょ?お怪我したとこ・・・ちゃあんときれいにしとかないとね。バイキンが入ってちゃうんだよ。」
「うるさいなぁ。」フレデリック、そっぽを向く。
ジョセフィーヌ、濡らしたハンカチでそっと傷口の汚れを取り除こうとすると、その瞬間にふわっと血が溢れ出す。フレデリック目を大きく見開き、ジョセフィーヌを鋭い目つきで見つめる。
「いったいだろぉっ!」ジョセフィーヌ、フレデリックを見つめる。
「お兄ちゃんでしょ? 少しくらい我慢してっ!  」
フレデリック口を尖らせ、傷口を見ると、ジョセフィーヌが丁寧にそっと、汚れをふきとっている。
「よしっと」汚れが落ちる。
「今はこれしかないから。」「・・・え?」
ジョセフィーヌ、自分の髪を結いていた綺麗なリボンをすっとほどく。その瞬間、髪が揺れる。
「また血がでちゃうといけないから、
ゆわっておくね。」
そのリボンでそっと傷の所を結び、その手当てした所にそっと手を当てる。
フレデリック眉をひそめ、それを見つめる。
「なっ、何する・・・!  」
「痛いの痛いの-っ!  」
その手を高く遠くへと持って行く。
「遠-いお空に飛んでけっ!   」
「子供扱いすんなっ!  」
フレデリック、口を少し尖らせ顔をそむける。
ジョセフィーヌとエドガー、その様子を見て笑い出す。仔犬も嬉しそうに一回吠え、尻尾を振る。
フレデリック、少し照れくさそうに呟く。
「でも・・・ありがと。」
「どういたしまして。だって、お友達でしょう?」
フレデリック、ジョセフィーヌを見つめる。
「・・・友達?」
「うん!  だって・・・お兄ちゃんのワンちゃんが、
ここに連れて来てくれたんだよ?
もうお友達でしょ?  あっ!」
そう言うとカゴを見て、小さなデイジーの花束を1つ取り出し、フレデリックに、差し出す。
「これ、あげる!  」「えっ?」「お友達のしるし!  」
フレデリック、少し驚いた様子でその花束を見つめる
「ここはね。春になるとね。この丘いっぱーいにデイジーの花が咲くのよ・・・ねっ?素敵でしょ?」そう言いながら、両手を大きく広げる。
「あっ、ありがと。」「うん!  」
フレデリック、その花束をぼぉっと見つめ、
それを受け取り、ジョセフィーヌを見つめ
はっとする。
森を映し出す澄んだ瞳を持つ少女
ジョセフィーヌが、デイジーの花冠をかぶり、
木々の隙間からさし込んでくる早春の柔らかい光をその背に浴びて、フレデリックに優しく微笑みかけている。
その瞳は、まるでこの森に現れた春の精霊が、そこに迷い込んで途方に暮れる一人の少年に、アリアの春を教える為に現れたかのような錯覚を覚えさせる。そして、その精霊とみまごう少女に魅せらたかのように、思わずその瞳を見つめ続ける。
フレデリックの今まで誰も寄せ付けず、固く閉ざしたその孤独な心が、ふいに目の前に精霊が現れて、そこにそっとキスをし、その呪縛をといていくかのように感じると、胸の鼓動の高鳴りが抑えきれず、顔をサッと赤らめ、目を逸らす。
ジョセフィーヌ、少し首をかしげる。
「どうしたの?」
「あっ!  いっ、いやっ・・・べっ、別に。」
そんな風景に、春風がそよいでいる。
つづく

 登場人物
ジョセフィーヌ   ドーソン家 娘    8歳
エドガー               ドーソン家 召使い 13歳
フレデリック       アーサー家  息子    12歳
ロック(仔犬)

タイトルの・は、はじめに間違えたままで、気になっていて、ずっとどうしようと思ってたので、
主人公達が大人になる前に、ここで直しておこうと思います。
私の頭の中に浮かんできた物語です。
未熟な所、多々あると思います。また誤字脱字もご容赦くださいませ。
暇つぶしにどうぞ。


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